SSSまとめ1
【セウトですか?いいえアウフです】(サガとカノン)元ネタ
「なるほど、良いことを聞いた。では明日から早速」 
「それをやらかしたら、俺はお前を全力で止めるからな。千日戦争もやむを得まい」
「愚かな…お前が目を瞑れば丸く収まるというのに」
「愚かなのは貴様だこのマッパ狂信者!」


【あのコピペ】(カノサガ)
何となく新婚さんごっこがしたくなって、遅く帰ってきた兄弟に「ご飯にする?お風呂にする?それとも私?」と尋ねたら、ものすごく怯えた表情で「ごめんなさい三日間ほっつき歩いて連絡しないですみませんでした岬送りは嫌です」と土下座されたのが今日のハイライト


【一声・二姿・三に顔】(カノサガ)
「お前と全く変わらないではないか」
「いいや? 全然違うさ」
人々を導く慈愛に満ちた声、戦場の最中技を叫ぶ声、幼い頃から俺の名を呼ぶ声は、俺とは違う。
声だけじゃない、紺碧の海色の髪だって、整えられた指先だって、柔らかく笑む表情だって全然違う。
黄金聖衣を纏って激高し、俺をボコボコにした姿は憎みこそしたが、神々しくも美しいと心底思った。
「同じだと思ってるのは周りだけさ」
ぐ、と鏡に映し合わせたような顔を引き寄せてキスを一つ。
困惑したような表情をしつつも、俺を受け入れる姿も、俺とは違い、俺だけが知っているそれ。
「同じだから好きになったんじゃない」
唇を離し、同じ体躯を抱き寄せる。元は一つだった存在を分け与えて生まれ落ちた身体は、しっくりと馴染む。
「お前だから、だ」
「…馬鹿者」
腕の中の兄の体温が上がったのが判る。それも、これも、どれもが同じでありながらこんなにも愛おしい。


【一声・二顔・三姿】(カノサガ)※別バージョン
「いったい私のどこがいいというのだ?」
同じ姿で同じ顔、声も同じなのにとそっぽを向くサガを、カノンは後ろから抱き留める。
「愚問だな兄さん、全部に決まっている」
海の蒼を髣髴とさせる髪、滑らかな指先、この腕の中の体温、同じなようですべて違う。
「でもそうだな…」
甘えるように顔を埋めていたカノンの指先が、不意にサガの顎を捉えて少々強引に後ろを向かせる。
「何を…んっ」
前触れなく口づけられて、思わずギュッと目を閉じたサガの顔をキスをしながらカノンは見つめる。
深く味わう一瞬前で離れていくと、名残惜しそうにこちらを見るサガの顔がある。
「…そんな顔、俺には出来ないし、俺の前でしか見せてくれないだろう?」
「ばっ…!それは」
「サガ…」
「っ」
指摘されてそんなことはないと否定しにかかるサガの耳元に顔を寄せてカノンが甘く囁きかける。
「兄さん、愛している」
「カノ、ン…」
十数年前、己が耳元で悪を囁き続けた声。同じ声であることを、忌まわしいとさえ思ったそれ。
だけど今は、全く違う響きを持ってサガを陥落しにかかって来る。
認めるしかない。自分だってカノンの声が、堪らなく好きだということを。
「…もっと、求めろ。カノン、その声で、私を」
意趣返しと言わんばかりに白群の長い髪を退かして耳元でそう吹き込めば、驚いたように身体を震わせて顔を上げた。
春を媒介した己の色とは違う、海の緑を宿した瞳。幽閉されていて、青白ささえ思わせた身体は今はすっかり逞しくなり、蠍の針の断罪の跡と三又の鉾の痕が残っている。

違う、同じだけれども全然違う。
だけれども、同じ遺伝子と血を分けた、唯一無二の大切な半身。

「…すまない、私もお前が、いい」

先ほどの発言は取り消してほしいと暗に訴える兄に、カノンは唇の端を吊り上げてにっと笑う。
「いい加減で、素直になることはようやく覚えたようだな」
惜しむらくはもっと早くにそうして欲しいと憎まれ口を叩く弟をサガは軽く小突きながら、声も姿も顔も同じだが、自分とは異なり堪らなく愛おしく思うその存在をかき抱いた。


【鳥は鳥に】(サガとカノン)
「もういい」
胸の中で疲れ切ってぐったりと沈むカノンに伝えきれなかった言葉。
お前はカノンでサガじゃない。私の影じゃない。少なくとも私の前で光であろうとする影にならなくていい。
「カノンはカノンだ」
どうか自分で自分の存在を貶めないでという意味で、白群の髪を撫ぜながらそう言った。
だけど、その言葉は正確にお前には届かなかった。
立ち位置が違う私が言ったところで、それはただお前を追い詰める凶器にしかなり得なかったんだ。
ごめんねカノン。一緒に産まれて来てごめんなさい。


【おあつらえむきのスイートルーム】(カノサガR15)元ネタ
「ここは、俺たちにとってこれ以上ないほどの場所だな」
「っ、」
今は小康状態だが満潮状態になれば海水は天井を覆い尽くす岩牢でサガはカノンに貫かれていた。
湿った岩壁に背中を押しつけられ、密着するカノンの表情は恍惚としている。
だがサガは、そんな双子の弟の顔を見ることは出来ず、ただひたすらに眉根を寄せて与えられる快楽と悔恨に耐えている。
十数年前のあの日、弟を捨てて去って行った道。そしてそれに繋がる空。どんな思いでカノンはそれを眺めていたかを知るのが怖くて、ただなすがままに揺さぶられるだけだった。
「そう、やって耐え忍ぶお前も良いけどな…っ!」
「ぅあぁっ」
一度腰を引いて内部に埋め込まれた欲を浅いところまで移動させ、そのまま一気に突きこめば、大きく目を見開いて快楽を示す声を上げるサガの顎先を捉えて視線を合わせる。
「なあ、見ろよちゃんと」
目を閉じて逃れることは赦さないと顕著に訴える澄んだ海の緑を介する瞳は、今はこの岩牢を満たしつつあるそれよりも暗かった。
「俺が、ここで、お前をどんなに求めていたか…っ、思い知れよ兄さん!」
ざばんと、スニオン牢の外壁に波が強く叩きつけられたのと同時、カノンに最奥を抉られたサガの嬌声もまた響いていく。

ああ――…、
確かにカノンの言うとおりだ。

このスニオン牢で弟と道を自ら違えた13年。それを埋めるためにこの場所でカノンに抱かれ、はしたなく身悶えて、自分の赦されない罪を一時でも水に流そうとする己に何と相応しい場所だろうか。
「っぁ、カノ、ン…、そうだ、もっと私に、っ、思い知らせて、くれ」
両脚を抱え上げられ、更に深く侵入してくるカノンを感じながら、サガは両手で弟の背をかき抱く。

もっと、もっと、もっと。
もっと、お前が欲しい。
私があの時に棄てた、お前の全てを、今の私に与えてほしい。

「~~~っ!」
ゆるゆると水位が上昇していくのに合わせたかのようにまずサガが、そして引き絞るように求められたカノンが兄の胎内に絶頂の証を吐き散らしていく。
「はぁ、は、ぁ…」
荒く息を吐き続ける兄の内部が絶頂の余韻を逃さぬようにひくひくと蠢き、自らの欲を包み込むのを感じて、海の煌きを称えた碧が若干しかめられる。
「…まだ、満たされないのか?」
頬に宛がわれた弟の掌は熱い。その手に自らの手を重ね合わせながら、はくはくと息を吐きながら小さく頷く兄を見て、好き者め、とカノンは甘く罵った。
「良いぜ、満潮までにはまだ時間があるし、閉じ込める檻もないんだ」
「んあっ」
にやりと笑うカノンの埋め込まれた欲が己の胎内でまた育っていくのを感じながら、サガは、海水の部屋に二人閉じ込められるまでの間、情欲に濡れた瞳に弟の姿を13年分を焼き付けることに専念し、次なる快楽に身を震わせた。


【私の双子の兄弟は生まれてきてはいけなかった】(黒サガとサガ)
『こんなこと思ってはいけないんだ』
そう言ってボロボロと涙を零す春の緑の瞳は、禍々しい血の赤へと変わっていく。
光あるところに影は生まれる。自分が生まれたばかりに弟を影に貶めたことがずっと心に圧し掛かっている哀れな光。
「あきらめろ」
――…いや、いやだ
脳の奥で諦め悪く頭を振って己を認めようとしない愚かで眩い私達の光。
「思うのも感じるのも自由なのに、お前は何故それを否定する」
一度でも思わないのか?弟を隠匿する聖域が憎いと。
カノンが双子の弟として生まれてこなければ良かったのにと。
――そんなこと、思ってない…っ!それなら私が…
「だまれ」
言葉を遮るように、唇の端を思いきり噛み締めて黙らせる。
「…偽善者が」
お前がお前を否定することは、誰でもない、この私が許さない。
もっと早くにお前が自らの感情を認めていれば、私は生まれ出でることもなかっただろう。
「そうやってお前は私も殺すのか? スニオン牢に棄てた弟のように」
――…っ!
声無き声で泣き叫ぶのが聞こえる。ああ、なんて心地よい。

「脆弱で愚かな最愛の母君よ」
私はあなたを守るために生まれたのだ。

封じ込めてきた心の澱みを子宮に、カノンの囁きを子種に私は生まれてきた。
決してお前が認めようとしない感情を母乳に、私は育っていくのだ。
あれを認めようとしなかった、揺りかごにもならぬ聖域などいらない。
父と母と私が寄り添って生きていける、新たな褥を作るために。
「全てを私に任せ、お前は眠るがいい」
生まれてきたことに感謝する、その時までゆっくりと。


【どうしようもない俺にどうか天使の祝福を】(カノサガR15)
「堕としてしまいたくてどうしようもなかった」
「っ」
うつぶせにさせられた背中に小さく口づけられてサガの身体がピクリと跳ねる。
「だんだんと手が届かない場所に行くお前を、どうしても繋ぎ止めて置きたかったのだ」
するり、とシーツに触れている肌に手が宛がわれ、ゆっくりと起こし上げられていく。それに比例して、サガの中に在るカノンがずぐり、と楔のように深く埋め込まれていく。
「ぅあ…っ」
たまらず声を上げたサガの項に唇が落とされ、首筋、肩を滑っていき、再び背中へと辿りつく。
「だけど今は、ここにお前が、いる」
答えてやりたくても息が上がってしまって声にならない。少し手加減しろと背後を振り向けば、そこにあったのはとても愛しげに笑いかける弟の顔で。
「っ…」
とくん、と胸が鳴る。たまらなく甘い気持ちに支配される。
「ば、おまえ、急に…!」
締めるなと、切羽詰まったように悪態を吐くカノンの髪を引っ掴み、そのまま顔を近づけさせる。
「ん、っ」
有無を言わさない勢いでキスをすれば、虚をつかれたようだったがすぐさま主導権を取り戻したカノンが、サガの情欲を煽ろうと舌先が唇をなぞり始めた。
「ふ、ぁ」
つ、と唇が離れれば、儚い煌銀糸が二人の間を繋いで消えていく。
「サガ…」
ゆっくりと体勢を変えられて背中からシーツに縫いとめられた。
「…二度と離さない、からな」
真剣な弟の表情と声。それに答えるようにサガは両腕を伸ばす。
「ああ、わたしもだ、カノン」
どこにもいかない。お前を置いて、迎えに来るからと口約束を交わして、もう二度と、高みに上ろうとして、独りになどさせない。
何物をも引き換えにしても惜しくないその温もりを与えてくれる半身を、サガはきつく抱き止めた。


【本当はあなたと二人なら】(カノサガ)
「本当に欲しかったのは世界じゃない」
疲れ切って眠るサガの隣に腰を下ろし、カノンはその蒼い髪に指先を絡めながら夜のしじまにそっと呟く。
「ただ、お前と並んで歩きたかっただけだ」
10と5を数えたあの頃。それを素直に伝えたところで、兄は悲しそうに顔をしかめ、謝るしか出来なかったであろう。
「…ゴメンな、サガ」
今、言ってみたところで詮無きことなのは判っている。だがそれでも、道を踏み外すことはなかったかもしれないと、思わずにはいられない。
「今生は、ちゃんと言うから」
言葉にできることを惜しみ、気持ちをお互い拗らせる、そんな過ちを二度と繰り返さないために。

「…誰よりも、何よりも、お前を愛している」

ゆっくりとその蒼の髪を持ち上げて口づけながら、万感の想いを口にすれば、緩やかに笑みを浮かべて寝息を立てる、サガの顔がそこにあった。


【二人のハッピーブランチ】(カノサガ)※元ネタ:診断メーカーの同棲している二人より"今日のカノンとサガ:「作ってやったんだから感謝して食べろ」と言うと「不味い」と返されたがその割に美味しそうに食べるのでデコピンで勘弁してやる"より

「作ってやったのだから感謝して食べるがよい」
テーブルの上には、形の崩れたオムレツと少し焦げた厚切りベーコン、香ばしいオリーブオイルがかけられた瑞々しいトマトの薄切りが乗せられている白い皿、そしてコーンスープが注がれたマグカップとこんがりと焼けたクロワッサンとミニトーストが入った籠が置かれている。
寝間着であるアイボリーの長丈服の上に纏っているのは真っ白なシンプルな作りのエプロン、料理をする際に邪魔になるからとふわりとした長い蒼い髪は後ろで括られているため、襟元ががっつり開いている服を着ているせいもあり、首筋や鎖骨に植え付けた小さな朱の花が咲いているのが見える。加えて表は良い天気であり、本日は休日のため二人揃って少しだけ寝坊した。
シチュエーション的にもこれだけで愛情満タン!眼福ごちそうサマと手を合わせたい気持ちに駆られるのだが、生憎と俺の身体はこちらにも愛情という名の栄養を回せとしきりに空腹を訴えている。
尊大な言葉とは裏腹に、不安そうな眼差しを向ける兄がたまらなく可愛く見えるのは気のせいではない。馬鹿だな、俺が、リクエストに答えるために一生懸命料理を振る舞ってくれたお前にケチをつけるわけがないのに。
だけど普段は自信に満ち満ちているサガのそんな顔をもっと見たいという悪戯心に駆られて、俺はオムレツを口にして、ほんの一言だけ嘘を吐いた。
「まずい」
だけどそれは口から出まかせであることは、この双子の片割れには判るだろう。俺の顔はサガが入れてくれた愛情という名のスパイスがあまりにも美味しすぎて、緩みきった顔を隠せていないのだから。
「この愚弟め」
そんな俺のとろけ切った表情を見て、サガもまたふわりとした笑みを浮かべながら、心にもない嘘を吐いたお仕置きと言わんばかりに、すらりとした指先で俺の額にデコピンを見舞った。

(2017/10/24)

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