【俺の中の辞書】(カノサガ) 「天使と書いてサガと読む。これはもはや常識」 【あれが最後と知っていたなら、決して放しはしませんでした。】(サガ) 最後だなんて思っていなかった。私が倒れても後を任せられる唯一無二の存在、肉親の情に賭けていた。女神を信じ、弟を信じ、そしてあの岩牢へと向かった。 だけど結局最後になってしまったのは私が私を手放したからに他ならない。 【ストレス軽減のすゝめ】(カノサガ)※元ネタ 「カノン…ここしばらく毎日デザートがバナナばかりなんだが」 「ん、だからレパートリーを変えているだろう?昨日はホワイトチョコでコーティングしたバナナで、今日はライトピンクチョコバナナだ」 「…私が色々とため込みやすいのは自覚しているし、お前がそのことに心を砕いてくれていることも知っている…だが、その、ヨーグルトなどに混ぜて食べても支障はないのでは」 「判ったサガ、では明日はヨーグルト味のチョコでコーティングしたバナナを…」 「そういうことを言っているのではないのだが」 それでも自分を思ってのことだと信じ込み懸命にコーティングされたバナナを頬張る姿を、真正面からゲンドウポーズで見守るカノンの身も心も癒しつつ昂ぶらせていることなど、サガは知る由もなかった。 【可愛いだけじゃダメなんだ】(カノサガ) 「そうむくれるな」 そう言いながらあやすように額に唇を落とされたカノンの眉間にますます皺が刻まれる。 「ガキ扱いするな」 ぷい、とそっぽを向いた自分の顔はこの聡明な双子の兄からは、さぞかし子どものように見えているだろう。 現にカノンのすぐそばで、仕方がないなという想いをこらえながら苦く笑うサガの顔が横目に入ってくる。 「…子ども扱いなどしていないだろう? ただ、可愛らしいなと思っただけだ」 そう言いながらぎゅ、と抱きしめられ後頭部に手を回されてぽむぽむと撫で回していく兄の手から感じられるのは、慈しみだけではなく、自分にだけ向けられる深い愛情が込められている。 だからこそカノンは切に思うのだ。この愛しい生き物から心底頼られる存在になりたい。ほんのちょっとの差でサガの方が兄に生まれてきてしまった以上、彼が自分を”可愛い”と思うのはある程度は仕方がないことなのは判っている。 「サガ」 「ん?」 ソファの上に座り直し、自分を抱きしめてくる兄の腰部分に手を回して肩口に顎を乗せ、ちゅ、と耳たぶに触れるか触れないかの口付けを送る。 「っ…」 途端に腕の中の体温が上がったのを認めたカノンの機嫌がほんの少しだけ回復する。 「お前の方がよっぽど可愛らしいんだからな?」 そっとソファにその身を横たわらせながら耳元で囁きかければ、小さく体が跳ね上がる。出来るだけ余裕の表情を持って見下ろせば、きゅ、と口を噤んだ後、前言撤回だと小さく聞こえてきたその言葉にいよいよカノンはおかしそうに笑う。 「それでいい、少しずつでいいから認識を改めてくれ」 「…愚弟である認識は改めんぞ」 顔を赤くしながら可愛げのない言葉を紡ぐ、唯一愛しさから可愛いと想える兄に、弟はまた一つ可愛らしさを撤回させる口付けを贈った。 【カワコン】(アーサーとカノン)※APH(アサフラ)クロスオーバー注意 カノン(以下カ)「大体において不公平なことこの上ない! ほんの僅差で兄に生まれてきたと言うだけで、”いくつになってもお前は可愛い弟だ”などとどの口がほざく! お前の方がよっぽど可愛らしいのだと言っても伝わりはしないのだあの愚兄には!」 アーサー(以下ア)「それを言うならこっちだって同じだ! 俺の方が身体もちっこいガキだった頃なんてもう何世紀前のことなのに、”いつまでも坊ちゃんは可愛いんだから”なんて言われてるんだぞ! 言っとくけどなぁ、あの頃のあいつはきらきらのふわふわで妖精かと思うくらい可愛らしかったんだからな!」 カ「ふっ、妖精か…。俺のサガは生まれたころから天使のようだった。今でも十分天使だが…。愛くるしい笑み、誰にでも慈愛を持って接する清らかな心…。だが俺にだけ感情をむき出しにして涙目になった顔もまた可愛らしくてな…。故意に泣かせてしまうことも多々あった」 ア「なっ! い、言っておくけどなぁ! 俺の髭だってあの頃に比べればムッチムチになったけどその肉感的な部分がそそるんだよ! 料理も美味いしおしゃれだし、何よりさりげなさを装って周りに気を配る反面、時々息切れ起こしてへばってるんだぞ! あっちが年上だなんて関係ねえ! そんなに俺は頼りねえのかよばかぁ!!」 カ「…俺の兄も、俺に双子座に着かせるため、教皇になろうと自分の望みを押し殺して必死に頑張っていた。その完璧な振る舞いから俺はあいつがどんなに苦しい道を歩いていたのか気づかずに…っ」 ア「…それに、気づけたんなら良かったんじゃねえのか? 俺だってあいつを幾度となくボコボコにして息の根を止めようとしたかしれねぇ。 挙句の果てにあいつの、一番大切な物を壊しちまって、何百年繰り返しその日が来るたびどうにかなりそうになる…。でもあいつは俺を責めない。そんな俺を見て悲しそうな顔で笑うから…。そんな顔、させたくないのに…」 カ「…貴公らはもう何百年も隣り合って存在しているのだったな…。時間が経過しても消えない痛みを抱えながらも、それでも傍らに居たいと願える相手がいるというのは何と尊いことか」 ア「それはそっちだって同じだろう。生まれてからずっと血の繋がりがあるからこそ、突き付けられる褪せない傷があるにも関わらず、一生側にいたいと思えるんだろ? 少しだけ羨ましく思う」 カ「……」 ア「……」 カ「…可愛くても、何でもいいか」 ア「…そうだな、あいつが隣にいて笑ってんなら俺はそれで…」 一度はそう結論付けて幕を引いたが、愛する者から可愛いと言われたり思われたりする一日を過ごし、”やっぱり可愛いのはお前の方だということをいっぺん身体で判らせた方が良いな”という、不穏な方向へと考えをまとめた年下攻め共であった。 【お前のものは俺のもの】(カノン→サガ) 俺がお前の影(もの)だと言うならば、お前が背負う宿命も贖罪も俺のものだ。 そうでなければ割に合わない、何故お前一人が背負わなければならないのだ。 「だから俺に半分預けろ」 今生は絶対諦めない。お前が抱えて離さないそれらを俺に預けるまで。 イメージイラストはこちら 【俺がっ、間に合ってさえいればっ!】(カノン→サガ)※元ネタ お前の内に孕む忌子が育ち、生まれ落ちる前に、想いを正しく伝える方法を知っていれば。 だけどもう遅すぎる。かくなる上は、俺もお前も俺らの子も、咎められない箱庭を創るまでだ。 【もっと早く生まれたかったなぁ】(サガとカノン)※元ネタ 「お前は私の影に甘んじることなどなかったのに」 「お前に圧し掛かる全ての物を背負ってやれたのに」 ――…お前を、 苦しめたくなどなかったのに――…。 ――…でも 「共に生まれてもお前を守れることに気づいたから」 「お前が、私の意思を継いでくれたことを知ったから」 そんなこと、もう思わない――… 「サガ」 「カノン」 共に 生まれてきてくれて ありがとう
(2018/02/07)
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