Tasty all yourself-type A-

もぞもぞと動くベッドの中でサガが起きた気配を感じる。あれほど抱いた後だというのに、意外に早い目覚めだなと思いながら、俺はポップコーンを摘まんで口の中に放り込む。意識を失ったサガをざっと清めて、ついでに汗を流したものの手持無沙汰になり、ベッドの隣に設置されている、スプリングが馬鹿になりかけているソファに腰を下ろして旧式型のテレビをザッピングしている内に見つけたのは、奇しくもこうなったきっかけの映画館で流れていたのと同じものだった。それを目にした途端、先ほど館内に忘れてきたポップコーンが無性に食べたくなって仕方がなくなり、量と味の割には高値であるそれをルームサービスで頼み、ひたすらをそれを消化していた。
カノンと、かけられたその声は、散々に啼かせた張本人が言うのも何だが非道く掠れていて、先ほどの行為で満たしきれなかった飢えを再び呼び覚まさせるには十分だった。
兄のかすれた声を揶揄しながら、半分以下になったポップコーンをもう一度摘まもうとする。だがサガの焼かれるような視線を指先に感じて、俺はわざとらしく自分の指を舐めた。
「さっき食い損ねたからさ」
そう言って、ことさら見せつけるように唇を舌で舐め上げれば、春の緑を介する兄の目が欲に潤むのが分かった。食べるか?という俺の問いに、食べたい…カノン、とかすれた声で返してきた兄はとてつもない色気を纏っていた。

「食わせてやるからこっちに来いよ」
もはや内容が頭に入ってこないテレビの電源を落とし、指を舐めたときと同じくらいわざとらしく、ポップコーンを摘まんだ指先を差し出せば、まだ上手く体に力が入らないのか、セミダブルのベッドの上で四つん這いになったサガは、その体勢のまま近づいてくる。ベッドの端ギリギリまでやってきて、ノロノロと足を下ろし、半歩も無い距離を拙い動きで詰めてくる、乱れてしまった髪のみで体を覆う兄を見て俺は、還る羽根を捥がれて堕とされた、地上のどこにも寄る辺がない天使のようであると、辛うじてハマっていたネジがまた飛んでしまった頭でそんなことを思った。
「ほしい、カノン、欲しい、ちょうだい…」
きし、と柔らかすぎる座面に手を突き、こちらへと上体を乗り出したサガが形が良く滑らかな五指が俺の手首を掴み、ポップコーンごと指を銜え込む。
「は、ん、ぅ、ん、む」
粒もさほど大きくない名ばかりのポップコーンは、その舌先に乗ることも口の中に入ることなく、唇の端を伝ってカーペットの上に落ちたが、俺もサガも当然気にも止めなかった。
待ちわびた味を堪能するにしては切羽詰まった表情を浮かべながら、サガはオレの指に舌を這わせていく。
「っ・・・」
熱い位の口腔内に、奥深くまで指を飲み込んでは軽く歯を立て、丁寧に舌先でなぞられる。ぴちゃ、くちゃ、くちゅ、ぴちゅ、と奏でられる微かな水音と、下手をすれば俺の分身に施すそれよりも丁寧な技巧に、じわじわと快感がくすぶり出す。やりやすいようにと自然に俺の膝の上に跨る形になったサガの尻に、バスローブ越しに昂ぶっていく俺の熱隗が触れていく。
「んっ、ふ、んん、」
気づいていないわけはない。先ほどまでお前の内部を徹底的に蹂躙した俺の分身がこれほどまでにまたお前を求めていることに。だが、目の前の半身は、そんな俺の雄に素知らぬふりを決め込むように、指だけでは飽き足らず、その谷間まで舌先を這わせて念入りにしゃぶっている。苦しげながらも恍惚さを滲ませてただひたすらに指を味わう様子のサガに思い知らせるように、散々にサガの後孔を貫いた雄を、ぐ、と押し付けた。
「んんっ」
途端、くぐもりながらも高い声を上げたサガの身体が震える。ひく、と身体を震わせると同時、先ほど身体を清めた際にかきだし切れなかった白濁の滴り落ちる感触がバスローブ越しに伝わってきた。
「まだ足りねえのか?」
「んあっ」
サガの口内から半ば強引に指を引き抜く。俺の言葉に身を竦ませたサガの身体を改めて抱え直した俺は、未だ余韻でひくつく後ろに躊躇いなくトロトロに濡れた指を侵入させた。
「あっ…!」
今すぐにでも欲しい、だけど傷つけたいわけではない。そんな俺の葛藤を嘲笑うかのように煽って煽って煽りまくって、結果理性を手放して欲望のまま貫ざるを得なかった兄の孔は柔らかく熱く熟れていて、難なく俺の指を飲み込んでいく。
「やぁっ、カノ、ン、アァっ、そ、こはぁ…!」
「ここが、何だよ?ん?」
「ひぁ、あっアァッ」
容易くサガの内部は俺の指を最も感じる箇所へと誘っていた。入口より少し深い、俺の指が届く場所にあって、サガが快楽でおかしくなるスポットの一つ。身体をより密着させて、先ほどは存分に愛でられなかったそのしこりを念入りに嬲り続ければ、ぽたぽたと雫を零しながら勃ち上がった兄自身が俺の分身に触れた。
「本当に今日の兄さんは欲張りだな。俺の指をしゃぶってるだけでこんなにして…前も後ろも涎垂らす位に飢えてんじゃねえか」
「ッ、や、い、うなぁ、あ、アアッ!」
指の腹で撫でては転がし強く押すのを繰り返せば繰り返すほど、掠れたはずの声に甘さが加味されていく。身悶えて俺から離れようとするサガの身体を後孔に入っているのとは逆の腕で抱き留めながら、俺は更に昂ぶり続ける雄を兄自身へとすり合わせた。
「さっきは余裕がなかったから今度は堪能する番だよな? 欲張りでいやらしい兄さんをたっぷりと、な」
「や、あっ、カ、ノンっ、ああっ」
肩口で嫌々をするように被りを振るサガに思い知らせるように内部を強く抉った。一際高い声を上げて大きく身体をのけ反らせて一人で達してしまったつれない兄の力の抜けた手を、背中から外した腕からなる手で捉える。
「あ、ァ、な、に…っ」
今しがた放った白濁を受けて汚れたバスローブの裾を割り、先ほどまで俺の手首を捉えていた綺麗な指先に似つかわしくない二本の欲望を握らせた上に俺の手を重ね、ゆるゆると扱き上げていく。
「や、あ、アアッ、あっ」
間違いなく先ほど達したばかりだというのに、まだ物足りないと言わんばかりに勃ったままの兄さんの先端が俺の先端に触れる。濡れたそれらを擦り合わせれば合わせるほどまるでキスを交わしているような錯覚から、例えようもない快感が生まれていく。
「は、っ…、いいわこれ…」
「あ、あっん、や、あ、んぁっ」
スプリングが煩いほど軋む古いベッドよりも、頼りない安定感しか与えないソファの上での行為は普段ならば興ざめしていたことだろう。だけどもそんなことを気にしている時間があるなら、もっとサガを味わえと本能に支配された脳みそが命令を下す。中に突き入れたままの指に加勢するように新たに本数を増やし、今度は出し入れを加えてサガが悦に啼くその部分を引っ掻きこねくり回し掻き混ぜていけばいくほど、その喘ぎ声に切ない悲鳴が混じっていく。
「ひっぃ、い、あ、アァ」
平素は聖人然として老若男女を虜にする面影は今はどこにもない。頭の中全部を快楽漬けにされたかなような表情を俺の前に晒し、閉じ切れない唇の端からはトロリと蜜のような唾液が伝っているし、虚ろな瞳は焦点すら合わさっていない。だけど例えようもなく綺麗だと思う。双子の片割れの、この兄のどんな姿をも綺麗だと思うのはずっと昔からだった。過去のサガが躍起になって捨てようとしたそういった部分も俺は愛しくて仕方がなかったし、それを認めようとしないサガを憎らしくも思った。手に入らないのならばいっそという浅慮から思い詰めさせ、最終的には自分の手で壊してしまった過去の分もひっくるめて俺はサガを心底欲しいのだと、改めて自分の気持ちに気づかされる。
「兄さん、好きだ。もう離れたくないし離そうとも思わない。ずっと好きだった。愛している、愛しているよ兄さん」
ずるりと内部から指を引き抜き、お互い硬くなった雄から手を外し、サガの腰を抱えてその身体を持ち上げると、そのまま再びベッドに押し倒す。その際にローテーブルに軽く足が当たり、飲みかけていた缶ビールが倒れ、微かに残っていた香ばしい匂いも残っていたポップコーンも塗りつぶしていく。
「ん、カノン、私も…ぁっ」
だがそんなことに構う余裕ももうなかった。首に回していたサガの手が俺の頬に宛がわれる。俺と同じように二つの雄が零した体液に塗れた指先は淫靡なぬめりを帯びているが、それさえも甘美な蜜に思えてしまう。もう色んな意味で末期状態だなとは思うが引き返すつもりも治すつもりもない俺は、その指先を取り舌を這わせて一舐めした後、己の指を絡ませてシーツに縫いとめながら、サガの後孔に先端を擦りつけた。
「ん、あっ、ああ、あ、カノ、カノン…っ!」
散々に弄り倒したサガのソコは待ちわびたかのように俺自身を迎え入れてくれた。一度目よりもスムーズに、歓迎するように肉壁が雄に絡みついてくるのが判る。
「ん、気持ちいい? 兄さん」
ずちゅ、ぐちゅ、という水音を立てながら侵入を進め、兄が最も感じる最奥の部分を先端で突いてやる。
「ああぁっ…!」
そう、ここが一番兄が悦い反応を示す箇所。俺だけが辿り着ける場所。俺だけに許された特権。
「あ、あ、あん、っカノ、やあ、あっ!」
突き上げれば突き上げるほどにしなっていく身体。そこに散らばるのは俺が付けた痕、赤く固く色づく突起。俺の下に全てを曝け出して乱れるサガに堪らなくなった俺は、固く勃ちあがった乳首にむしゃぶりついていた。
「ひぁ、あっああっ…!」
軽く歯を立てては吸い上げ、舌先で転がしてはまた甘噛む。
「や、ぁ、ああ、カノ、それやめ…っ、あああ…っ」
上と下を同時に責めることで与えられる快感にサガは切なく啼くが、内部はもっともっとと言うようにきゅうきゅうと俺の雄を締めつけてくる。
「嘘吐けよ兄さん、ここをこんなにしているくせに」
「やぁああ…っ!」
腹にくっつくほど反り返っている兄の雄を扱きながら、奥の奥までサガを蹂躙しにかかる。
「あっああっ、あ、カノ、んっ、カノン、カノ、ンっ」
相反する心。気持ちがいいのにイヤだと啼く兄。愛しているのにもっといやらしく苛ませたく思う俺。
悪の心一つしか持たぬと吠えていた頃の俺は、色んな意味で青かったと思わざるを得ない。誰も、そんな訳がなかったのに。
元々不可侵領域にいたこの生き物を欲望一色のままに抱いてしまっていれば、きっと本当の意味で満たされることは永遠になかっただろう。飢えても飢えても手に入らないもどかしさがあるからこそ愛おしい。そんな矛盾めいた想いがあるからこそ、俺はサガの身も心も求めて止まないのだ。
「あ、ん、アァッあ、っ、あ、あああっ!」
一際深く奥を穿てば何度目かの白濁をまき散らしながら絶頂に達した兄の姿と締め付けに促され、俺もその内部に熱を吐きだす。
ハアハアと荒く息を吐くサガの姿を見下ろしながら、べとべとに唾液で濡れている唇が美味しそうでそのまま唇を重ね合わせた。
「ん、ぁっふ、ぁ、カノ、ま…て、ぁっ…!」
サガの中で、また俺のモノが硬くなっていく。その変化に気づいてもがくサガを、文字通り抱き潰すようにして抵抗を奪う。
「待たない。言っただろ? 今度は俺が兄さんを堪能する番だって」
「っだってあんなに…、んんっ!」
若干顔を青ざめさせたサガの言葉を飲み込むようにキスをしながら、再び腰を動かしにかかれば、甘いくぐもった声が聞こえてくる。
そうだ、サガ。もっと見せてくれ。もっと俺を求めてくれ。
もっともっと、今までにないくらい、頭が飛ぶくらいに、よがり狂ってしまえ。
「んん、ふ、ぅん、ンンン、ん…っ!」
舌先で唇を舐めとった後、ぐっと奥まで舌を差し込み口内を蹂躙しにかかる。映画館やここで食べたチープなポップコーンの塩よりもずっと濃厚で甘美な味にクラクラしながら、俺はまだまだ尽きそうもない愛しき欲望でもってサガを貪りにかかったのだった。


BGM:Strawberry Night(NoGoD)
OAMT(俺の兄貴マジ天使)協会会長・壱様の「ポップコーンと塩味の指」のお話に萌えに萌え、続きを書かせて頂きました~!
この話を書くに辺り、私の脳内では

愚弟A「俺はもっとサガをトロトロに甘やかして愛したいんだ!」
愚弟B「何を! ここはサガが俺の指と〇〇〇を愛する一択だろ!」
愚弟C「判っとらんなお前たちは! あの天使が俺と密着してアンアン啼くのが良いのだろうが!このシーンを入れることを渇望する!!」

というまるでテロのような愚弟サミットが繰り広げられていました\(^0^)/ 放っておいたらポップコーンを下の口で以下略と言い出す愚弟も出かねないため、素敵な話の続きを下品にするわけには絶対にいかなかったのでその辺は頑張って自重いたしました(*゜∀゜)
ちなみに少しだけパターンを変えたtipe-B-もあります。

こんなところでなんですが、壱様、今回はほんとうにありがとうございました!

(2018/03/18)

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