雨降り双子短編二つ

分厚いダークグレイの緞帳のような天から大地に無数に降り注ぐ冷たい針の如くの雨を眺めながら、サガは密やかにため息を吐いた。
身に纏っている上等な生地で出来ている白の法衣の裾はびしゃびしゃにぬかるんだ泥で縫い取られており、早足で移動したとは言え、全くの予想外の雨で濡れた身体は土砂降りの雨とひやりとした空気とが相まってすっかりと冷え切ってしまっている。

今日は近隣の村へ慰問する日だった。美しき佇まいに柔らかな優しい笑みを浮かべた双子座の聖闘士(今は教皇補佐ではあるが)の久しぶりの来訪を村人たちはこぞって歓迎した。しかし段々とペトリコールが立ち込めていくのと比例して空の色合いが怪しくなり、ぽつ、ぽつと微粒な雫を落とし始めた際に、住民達にぜひ雨が上がるまで休んで行って欲しいと言われたのをサガは小さく首を振って辞退した。この程度なら歩いて帰れるし予定も差し迫っている、だからその気持ちだけで充分だという意思を示してそこを後にした。
近隣とは言っても聖域から村までの距離は一般人の脚ではそれなりの時間がかかる。聖闘士の存在に寛容な村人たちの前で流石に光速で移動するのは気が引ける。若干速足で移動し続けること数十分、聖域までの距離は人里から離れて聖域まであともう一里ばかりの廃村の一角に打ち捨てられた廃屋にまでどうにか辿り着いたサガは、止むどころかますますひどくなる雨に少しはその言葉と好意に甘えるべきだったかとらしくもなく思い始めた。いっそのこともうここから異次元を通って宮へ戻ろうかと思ったが、万全の備えをしていなかった自分が悪いのであって、そんなことのために女神から賜った力を使うのは良くないと、雑念を振り払うように小さく頭を振る。
村から出てここまでの道筋は、比較的人通りの少ない場所を選んだが誰が見ているか判らないのもあって、少し早いとはいえ通常の速度で歩いてきたのだ。しかしさすがにここから聖域までの道のりは一般人が立ち入る可能性は限りなく低い。ましてやこの天候ならば尚更だと、これより先は光速で移動すれば良いかと考えた瞬間、前方から馴染みのある小宇宙が光速でやって来るのが判った。
「サガ!」
その小宇宙の持ち主はサガの姿を認めて目の前に立ち止った。片手に大きめの深い蒼みがかった傘をさし、もう片方の手には無造作に丸めた外套を持つその人物は、今日は次世代候補生の訓練に当たっていたはずの双子の弟のカノンだった。
何故ここに、そう問おうとしたサガをやや乱暴な手つきで抱き寄せて、持ってきた外套の中に入れてきた吸水性のあるタオルで水滴を拭いながらカノンはそれはこちらの台詞だと言い捨てる。
「てっきり村人たちに引き留められているかと思ったが…、いい加減その自嘲癖を止めろ」
風邪でも引いたらどうするのだこの愚兄めと呆れと怒りが混じった声とは反して、その手つきはとても優しい。そんな半身にすまない思いを隠せずにいるサガにカノンはやれやれとため息を吐きながら外套を羽織らせ、持ってきた傘を差し出す。だが弟が自分の分しか持ってこなかったことに気づいたサガが、案の定これではお前が濡れてしまうと言わんばかりに傘から出ようとするが、勿論カノンはそれを許さずに外套で包み込んでもまだ寒さを覚えているであろう兄の身体を、否が応にも開かれたその中に引きずり込んだ。
「無駄な抵抗は止せ。俺とてこれ一本しか持ってきていないし、こっちまでずぶ濡れになるのは嫌だからな」
比較的大きめな傘を持ってきたとはいえ、双子達の体格からしてやはりお互いの肩は少しはみ出てしまっている。にも拘らず、濡れるのは嫌だと言っていたはずのカノンは、己の肩が雨に浸されていくのも構わずに持ち直した手の中の傘をサガの方へと当然のように傾けた。
「…っ」
こんな風に思いやられて嬉しく思わないわけはない。サガはせめて礼を述べようと口を開いたが出てきたのは言葉どころか声とも言えない音だった。
「サガ」
不意に響くカノンの声に鼓膜が震わされる。相変わらず上空からは無数の針雨が降り注ぎ、傘を叩き続ける音は段々と強まっていく。そんな中で弟によって紡がれた自分の名前は、何という綺麗な響きを持ってこの耳に届くのだろうか。
「兄さん」
もう一度、今度はもう一つの呼び名で呼ばれてサガは再び口を開きかける。

──何だい、カノン?
──聞こえているよ、カノン
──カノン、カノン

「…っ、ぁ゛、ぉ、ん」

だがやはり口を突いて出てきたのは声と呼ぶにはあまりにも程遠いもので、それを耳にしたサガは自己嫌悪に顔を歪ませた。
「そんな顔をするな」
ざあざあと再び雨脚が強くなる雨の中で、不意に歩みを止めてこちらに向き直ったカノンの声が再び美しい響きを持って耳に届く。そっとこちらに伸ばされ頬に触れた熱い掌に軽く上向かされたサガは、凍えそうなほど冷たくなった自分の手を重ねて声なき声でカノンの名を呼ぼうとする。

聖戦を終えて生き返ったサガは、声を失っていた。

恐らくそれは自責的な部分が作用しているのではないかというのは女神とシャカの言である。聖戦の折りに同じように天舞宝輪を受けてもシュラとカミュは何ら後遺症はなく復活している上に、失ったのは声だけで小宇宙はそのままであったことからその見解はかなり的を得ていると言えるだろう。
いかな神でも完璧ではない。サガが自分自身を許せない限りその声は戻らないと悲しそうに女神に告げられたこと、過去に捉われるなと詮無きこと、私の信じたあなたはそんなに弱くないだろうと閉じた目を伏せたシャカにそう言われたことは双子の記憶に新しい。
そしてカノンはそれ以外にもサガが頑なに声を出さない理由を、双子としての勘から漠然と理解していた。
サガは恐れているのだ。自分と言葉を交わし合うことを。
13年前の出来事を繰り返したくない。そのためには言葉はいらない。時に刃になり人を殺す、弟である自分を突き放してしまったそれ等必要ないのだと思っているのだろう。
声を出さずとも生活に支障はない。物言わぬことでやり過ごせることの方が多い。それは今日の慰問に限らず様々な任務がつつがなく済んでいる事が証明している。13年前は負の心を必死に押し込めていた兄は神の化身と慕われており、今現在は先の聖戦で声を失ったことにより、以前にも増して民たちから神聖視されている。故に尚更、声を出すことのデメリットに比重を置き余計に言葉など必要ないとこの兄はずっと思っていたに違いない。

「俺は待ってるから」
だけど先ほど自らの意思で声を出そうとした。頑なにそうしようとしなかったサガのその行動が意味する物を汲み取ったカノンは、決意の言葉をそっと紡ぐ。
「俺がその分、サガに唱え続けるから」
かけ間違えてしまった13年分、サガに言葉を振らせ続ける。人間の声が最も綺麗に響くこの空間の中は勿論の事、これから戻る双児宮内でも、朝も昼も夜も、サガがもう一度自分に言葉を紡いでくれる日まで、惜しむことなく。
「だから、ゆっくりでいい」

俺はいくらでも待つから。
お前が、お前を赦せる時が来るのを。
その代わり、その時はいくらでも聞かせて欲しい。俺とは違うお前の声が、俺の名前をハッキリと呼ぶ様を。

そう言って笑うカノンの綺麗な声に報いようと、サガはす…っと距離を詰め、冷え切ってしまった自分のそれをカノンの唇に軽く触れ合わせる。
一瞬の口付けを終えて離れて行こうとするサガの身体を、とっさにカノンは抱きしめて、そして今度はこちらから口付る。
「っ…」
温もりと一緒に、自らの声を、想いを、そして安らぎを注ぎ込むかのような口付けの最中、少しずつ雨音は小さくなっていき、やがて雨が完全に上がりジオスミンが立ち込めるまで、カノンはサガを離そうとはしなかった。

(2018/05/04)

ペトリコールと鈍色の空の二重奏がコロッセウムに届き、土砂降りの雨が降り出した頃に修練生の訓練が終わったカノンは、兄と暮らす双児宮へと引き上げてきた。 室内は昼間だというのに薄暗く、平素に比べて陰鬱な気持ちにさせられるのは拭えない。しかしそんな気持ちにかかずらっている暇などない。今から近隣の村に慰安へと出向いた兄をさっさと迎えに行かなければならないからだ。 聖戦後、罪の意識から声を失ったままのサガ。平素でのここでの生活ならば慣れ親しんできた住処であるのと同時、聖闘士同士ならば小宇宙でのやり取りが出来るため、そういう意味ではカノンは困ったことはない。 しかし慰問や一般人との触れ合いとなればまた話は違ってくる。慰問をする際には信頼のおける従者を二~三つけていくのが常例だが、この日、土砂降りになるという空読み師の言を聞いたサガは、村に着く中腹の当たりで従者を送り返してしまったのだ。一般人の負担にならない程度の距離を空間転移をさせられた本人達が、足取り重く戻ってきて、非常に申し訳なさそうな顔で告げられた報告に、カノンはその端正な顔を歪めずにはいられなかった。何故兄を置いて帰って来たかと問い詰めたい気持ちに駆られたが、13年前とは異なった透き通った笑みで、さらさらとその旨を容姿同様に整った美しい文字で羊皮紙に書かれてしまえば、一般人に毛の生えた程度の彼らには抗う術など無いだろうなというのも理解していた。ちなみにそのメモ代わりの羊皮紙は確かに兄の物だと確認するという建前の理由できっちりとカノンの懐の中に納められ、幾十枚目かのコレクションとして丁寧に保管されることになるがそれはさておいて。 心地よい高揚感に水を差されたかのようなその連絡に気が気じゃないままカノンは残りの訓練時間に身を投じることとなるが、どうにか私情を抑え込みやり過ごすことには成功する。だがせめて兄が帰って来るまで持つようにと、柄にもなく今は壺中に在住する上司に祈った結果は、残念ながら実を結ぶことはなく冒頭へと至ってしまう。 そんなわけでカノンは光速の動きでもってずぶぬれになっているであろうサガのために吸水性のいいタオルを持ち、更に防寒対策のための外套を丸め、大きめの藍色の傘を差して双児宮を後にした。 ばしゃばしゃと光速で移動する最中、サガの小宇宙を拾いながらカノンは思う。本当に早く兄を迎えに行きたければ異次元を通していけば良いと、過去の自分ならば躊躇わずにその力を使ったことだろう。だけど今のカノンはそんな気はさらさら起きなかった。その理由は今生ではこの力は自分達のためには使わないと誓ったからだ。 真にそれを使うのは地上の愛と平和、生きとし生ける者達を護る女神を守るためである。13年前に幾度となく命を救われ、そして蘇った自分達の犯した罪を赦して下さった女神に心の底から今度こそ報いるためだ。そしてそれはサガも同じだった。今現在、不具を抱きながら慰問や執務をこなす愁眉な双子の兄の意図は昔からそこに通じていたからこそ、カノンもまたそれに倣いたいと心の底から思っている。 小宇宙を辿れる限りは入れ違う心配はまずないだろう。この雨がまだ村にいるサガが経つ前に降っていたならば、信心深い村人たちによって強く引き留められているに違いない。予定があろうが何だろうがこんな雨の中を帰せるかという無言の圧力で持って止められていれば、聖人と謳われる兄と言えども無碍にするのは難しい。だけどももし、いざ村を経つ直前までこの雨が降らなかったらと考えるとあまりのんびりもしていられないと、冥界を駆けた時以上に足を急がせていく。感じ取れるとは言っても声を失くしたサガの小宇宙は時折ノイズが入るように途切れがちになってしまっているというのも、カノンを駆けさせていく理由の一つになっていた。 村へ行く山道を下りながらカノンは声を失ったサガは、前にもまして神聖さがにじみ出てると感じている。十三年前は負の感情を抑えつけることで神の化身と親しまれていたが、今は先の闘いで勝利した引換に声を失ったと誰とはなしに広まり、身を呈して人々を救った聖母か天使であるかのように村人たちから羨望されている。 その羨望が再びサガの身をすり減らすこと、焼き焦がすことなどあってはならないとカノンは知らず奥歯を噛み締める。そしてもう二度と自分もサガを落とし込むことはしまいと固く決意したところで、打ち捨てられた廃村の半壊した廃屋にて、辛うじて雨がしのげる空間でぼんやりと鈍色の緞帳のような空を眺めて行こうか行くまいかと逡巡している兄の姿を遠目で確認したカノンは、更に速く駆け抜けて行った。 迎えに来た自分を見て驚いた表情を見せる兄の冷え切った身体をこちらに抱き寄せて、カノンはタオルで水滴を拭っていく。小言を漏らす自分にすまなそうにするサガを見て、昔とは逆だなと知らず苦い笑いが漏れ落ちた。出来ることならこういうことで昔を懐かしむことはしたくなかったという胸を微かに刺す気持ちを頭の片隅に追いやって、カノンは持ってきた傘を静かに開いていく。兄の分の傘は無いわけではなく、あえて持ってこなかった。この空の下、この天気でなければ成し得ないことを思い浮かんだから。願わくば、少しでも兄の頑なな心の癒しになるように、そして自分の願いが叶うようにと。 一本の傘しかないと気づいたサガは案の定傘に入ることを拒否しようと暴れる。持ってきてくれた外套で充分だからと視線と小宇宙で訴えかけてくるが勿論そんな言い分を許すカノンではなかった。 無理やりにその傘の中にサガを引きずり込み、お前が暴れるとこちらまで濡れてしまう、そんなのはゴメンだと告げればたちまち抵抗を止める兄。こちらの想いを無碍にするのかという少しだけ小狡い言い方をした自覚のあるカノンは、それが本心ではないと示すために、開いた傘を鋭い雨から少しでも守るようにとサガの方へと傾けていく。 その想いを受け止めたサガはたまらず小さく口を開くが出てきた音に今の自分を自覚させられ、哀しげな表情を浮かべるその直前がカノンが待った時だった。 「サガ」 出てきた声は自分で聴いても、どこからこんな優しい響きの持つ声が出せたのかと思う程、美しく傘の中で反響していく。そしてそれは目の前にいるサガにも同様、否、それ以上の存在を持って耳に届いたであろうことは、容易に窺い知れた。 「兄さん」 再びカノンはサガを呼ぶ。今度は長い間呼ばずに久しかったもう一つの呼び名で。 雨の日の傘の中。人間の声が一番綺麗に聞こえる空間。そこでサガを呼びたかった。そして、今のサガの声をこの空間の中で聴きたかった。 春の緑を介する瞳がカノンに向けられるのと同時、再びサガの唇が開いていく。 ──何だいカノン? ──聞こえているよ、カノン ──カノン、カノン ──わたしの、カノン 「ぁ゛、ぉん…」 しかし出てきたのは声と呼ぶにはあまりにも程遠い音。それでも、カノンの耳にはその音が、至福の調べのように届いていた。 すでにゆっくりと帰路へ歩き始めていたカノンの足が、サガの歩みに合わせてピタリと止まる。俯きかけたサガの視界の端に映るのは、苦笑を称えた弟の顔だった。 「そんな顔をするな」 無数の針のように激しく降り注ぐ雨の中、その声は綺麗すぎるほどの余韻を持ってサガの耳に入り込んでくる。そしてその言葉と声音に含まれた弟の想いも。 サガは恐れていた。弟と言葉を交わして再び道を違えてしまうことを。 声を失った自分に女神は勿体なくも赦しの口吻を授けてくれた。だがそれすらも拒絶するかのようにサガは自分を赦すことを認めなかった。その結果、”いかな神でも完璧ではない。サガが自分自身を許せない限りその声は戻らない”と女神を悲しませてしまうことになった。サガが言葉を手放すある意味のきっかけとなった天舞宝輪の術者であるシャカから”過去に捉われるなと詮無きこと、私の信じたあなたはそんなに弱くないだろう”と閉じた目を更に伏せながらそう言われても尚、サガは再び過ちを犯すかもしれない恐れを拭い去ることはできなかった。 そして何よりも自分が声を封じたことで更に日常が円滑に回る事。言葉が足りない変わりに行動で示せばいい。言葉があるから取り繕う、自分をすり減らす、相手を傷つける。ならばいっそそのままでも良いとサガは思っていた。それを真実だと思い込もうとしていたのだ。 だが、本当にそれで良いのだろうかと、傘の中で聴いた弟の声に、サガは聖戦後からずっと持ち続けていた考えが揺らがされていくのを感じていた。 真っ直ぐな弟の視線から逃れるようにサガはそっと目線を逸らすが、カノンはそれを咎めなかった。ただ、穏やかな海に混じる緑を介する瞳に見守られながら、サガはずっと止めていた思考を動かし始めていた。 押し黙ることで齎されるメリットは多くてもそれが全てではない。確かに小のデメリットは生じていた。それに向き合わずに握りつぶすこと、それはすなわち、13年前にカノンをスニオン岬に有無を言わさず放り込んだ時と何も変わらないのではないか?否、それよりも前から差し伸べられてた手を振り払った時と、何も。 「俺は待っているから」 無限の思考のループに陥りそうになったサガの頭上に、まるで雲の切れ間から差し込む聖書の光のような声が降り注ぐ。 「俺がその分、サガに唱え続けるから」 見計らったようにかけられるその声は美しいだけではなく、心からの優しさと自愛に満ちていた。 「ゆっくりでいい。お前がお前を赦せる時が来るのを俺はいつまでも待つ」 柔らかく自分を包むように放たれていく言の葉。同じ卵から生まれ、同じ細胞を分け与えて生まれた、たった一人の弟の想い。 世界から自分達を隔絶するかのように雨が一際鋭く開かれたままの傘を叩きつけていく。その勢いが激しければ激しいほど、傘の中で紡がれる人の声は何物にも代えがたいほどの奏でとして響き渡る。 その奏でに込められたカノンの想いに真の意味で答えたいと、サガはすっと身体を摺り寄せて自分の冷えた唇を弟のそれと重ね合わせた。 心地の良い熱い唇。そこから紡がれる声を耳以外でも感じ取りたい。 お前の想いを、もっと、もっと間近で。 「っ……」 一瞬の間に巡らせた自身の想いを感じ取ってか離れようと身じろいだサガの身体はカノンの掌に捉われ、そのまま口づけを継続される。 ──いつまでも、過去の鎖に縛られている、愚かで哀れで、愛しい俺の兄、サガ。 ──今度こそ、俺よりも長く生きて、そしていくらでも聞かせてほしい。 ──お前が、真に俺を呼ぶ声を、俺が飽きてもずっと、ずっと。 傘の中で美しく響き渡った声以上に、温かさの伴った感情が口付けを介してサガへ注がれていく。やがて双子を世界から隠していた雨が徐々に上がり、ジオスミンが立ち込め、厚い雲の切れ間から天使の梯子が下ろされても、祈りと願いを注ぎ受け止める儀式はしばしの間途切れることはなかった。

BGM:しゃぼん玉(大塚愛:Love Punch)

人間の声が一番綺麗に響くのは傘の中→なら相合傘最強じゃね?というツイートから不意に浮かんだ双子話です(*゜∀゜)b
周りからは同じように聞こえる声でも、当の本人達は多分全く違うように聞こえているというのが双子萌えの醍醐味だと思います。
そして聖戦後のサガは、恐らく自責の念でこうなる可能性は高いかなと勝手に思ってます。聖域一強いのに同時に儚さが似合うって本当どういうことなんだろう…。だからこそカノンはそんなサガが愛しくてたまらないのだと思います。
ちなみに今回の双子、カノサガというよりは無自覚両思い的な感じで書きました\(^0^)/ ブラコン以上なのは確実ですが、恋人関係かと言われれば二人とも「「いや違う」」と答えるみたいな、そんな関係。

(2018/05/04)

ブラウザバックでお戻りください。