S’s greeting ・・・-S`s vacation of fool lover twins -









S`s greeting・・・
~S`s vacation of fool lover twins~



「なぁ・・・シド。」
「どうしました兄さん?」
「・・・・どうしましたって・・・;何で俺たちはいきなりこんな北海道の南に位置する田舎の遊園地なんかに居るんだ・・・?;
「え・・・、それは確か数日前・・、ヒルダ様がお忍びでアスガルドの街まで出かけたときに、怪しげな福引を回してこの遊園地行きのチケットを当てたとか何とかで、で、折角だから私達にゆっくり羽根を伸ばして来いって言われて・・・。」
「何だ!?その取ってつけたような設定は!; 夏だから余計に脳が溶けとる様な設定にしやがったなここの管理人は・・・。」
「ま、まぁ・・・、そう言わずに楽しんでいきましょうよ?;折角来たんだし。」
「・・・しかしなぁ・・・。」
「ね・・?」
さほど姿形の変わらない、だが可愛らしさあふれる仕草にて弟のシドに、例のスキルで覗き込まれて兄であるバドは四の五の言うのをやめた。
唐突に降って沸いたかのように、北の国からの来訪者である双子が居る現在地は、祖国と同じように冬は寒さに厳しいが、夏はそれなりに暑い北海道の某リゾート遊園地。
その場所から国道230号線を更に南に下っていくと段々と建物が疎らになり、周りには田園風景が広がっていき・・・早い話が平和な田舎にある遊園地に北欧双子は骨休めに来たと言う訳である。
今は世間一般では夏休みと呼ばれている期間であり、他のリゾート地の例に漏れずここもかき入れ時であって割と人・人・人でごった返している。
仲の良さそうな家族連れ、今が旬の恋人達や暇つぶしに一人で来て乗り物を制覇しようとする者も居れば、この暑い日差しの中に黒や白のフリルやらレースやらのドレスを身に纏って、ミステリアスさとこの賑やかさのミスマッチを体感しながら、例え服の下は灼熱地獄と化していても涼しい顔を取り繕い優雅に闊歩している何人かの乙女達も居る。
だがしかし、そんな様々な人々の中に在っても、彼らの世界は彼らだけのものであり、無意識かそれとも見せ付けたいのかはきっと前者なのだと思うのだが、~世界は二人だけの為に・序章~を発動させた双子の廻りは人ごみの中にあっても、数センチ弱の空間が保たれていた。
その世界を壊してはいけないのか、果たして踏み込んで行ってもいいものなのか・・・そんな生ぬるい視線と引き攣った表情の周りになど物ともせずに、同じ顔をした若い恋人達はこの時間を楽しむ事にして、園内を歩いて行く為に互いの指先から絡めて手を繋いでいた。

「で・・・最初に何に乗りたい?」
園内パンフを受け取ってそれを開きながら、バドは弟に問う。
「んーと・・・。」
バドの手に持たれているパンフを見ながら、滅多に無い機会だからと頭を悩ませつつも、それでもその楽しみに顔が嬉しそうに綻んでいる。
そんな弟を見ながら、むしろシドに乗りたいいやいやいや・・・何を考えてる俺!今は純粋にシドと休暇を兼ねたデートを楽しむ事が重要だ・・・と、既に健全ではない思考に侵食されている己VS僅かに残る真っ当な己とのろくでもない脳内バトルが兄の中で催されている等とは、今の彼には知る由も無かった。
「あ、これ・・・。」
「ん?;ああ、決まったか?」
シドの一声で、妄想と煩悩の狭間からたち帰ったバドはそれを悟られないように、くしゃりとその柔らかい猫っ毛の弟の髪を軽くかき回すように撫でてやる。
「これ・・、兄さんも一緒に乗りません?」
「いいぞ?で、何に決めたんだ?」
そんな弟の嬉しそうな顔を、これまた幸せそうに覗き込むバドに、シドは極上の花開くような微笑みと声で兄に言う。

「メリーゴーランドv」
「却下だ!」
その間僅か二秒・・・もしくはそれ以下の速さで弟のリクエストを拒んだ兄に、当然ながらシドも食って掛かった。
「ひどい!一緒に乗ってくれるって言ったのに・・・っ!」
「何でメリーゴーランドだ何で!?二十歳すぎの男二人で乗る代物か!!」
「だって乗りたいんですもの!折角来たんだし・・・、それに遊園地といったら先ずはコレでしょう!?
「・・・・・・・・;」
その情報は一体どこから仕入れてきたのか見当は付かなかったが、それでも純真さと世間知らずさは時として恐ろしいほどの隙になるんだなとバドは改めて思ったと言う。
「・・・兄さんと一緒に乗りたかったのに・・・。」
うるうるうる瞳が段々潤みだし、弟の最大奥儀捨てられた子猫Verが発動される中、思わず流されそうになるがこればかりは兄として・・・と言うか男として妥協する訳には行かなかった。
「と に か く!乗りたきゃ一人で乗れ!俺は・・・っ!?」
そっぽを向いて歩き出そうとするバドだが、その横で微かに聞こえる声に嫌な予感を感じつつそちらを見やると案の定それは的中していた。

ぽろぽろぽろぽろ・・・。

「∑;泣く事無いだろ!泣くこと!」
て言うか、泣きたいのはこっちの方だ・・・。
「・・っく、にいさんと・・っぇ・・、にいさ・・と・・・っ」
片やぽろぽろと涙をこぼす長身の男、片やその男に泣かれて困り果てているこれまた同じ顔形の男。
端から見れば、それは修羅場にしか思えないであろう関わりたくない要素が密集しているその場は何とも言えない空気が立ち込めており、数センチだった空間はおよそ半径5mにまで引き伸ばされて、段々と込み合う時間にもかかわらず来客たちはその場を目を合わせないようにして避けて走るように歩いて行く。
「・・・っあー、もう、判った!」
男として妥協出来ない!というバドの決意はそれから僅か二分で打ち砕かれた。
「判った。判ったから・・、一緒に乗ってやるから・・・だからもう泣くな・・・。」
一応日差しを避ける為に帽子を被ってはいる物の、それでもずきずきと日射病の類ではない頭痛に額を押さえつつ、その肩をあやす様に叩いてやると、さっき泣いていた烏がもう笑った・・・と言う諺どおりに、まだ温かい涙に濡れていたが花が綻ぶように嬉しそうに笑うシドの顔を見つめつつ、バドはこの場に居ない某隊長や某北欧の荒くれ馬の気持ちが少し判った気がすると後に語っていたと言う。


そんなこんななやり取りがあっても、それでも基本はラブラブな双子はその後有意義に楽しい時間を過ごして言った。
色々なアトラクションを乗り歩き、美味しい物を食べたり、アスガルドの仲間達にお土産を買う為に敷地内に立てられているホテルで買い物を楽しんだりと・・・、なんだか骨休めと言うよりも新婚旅行に来ているような錯覚を覚えるのだが、そんなこんなでしっかりと元を取った二人が部屋に戻って来たのは、色取り取りの花火が上がる夜もすっかりと更けた頃だった。
「楽しかったか?」
「はい!とっても♪」
二人の取っている部屋は、高層ホテルの上方にある階の部屋で、大きく造られた窓からはまだ花火が、どーんどーんと音を立てて夜空を彩っており、その下を国道230号線を疎らに走る車のライトにうっすらと浮かび上がるはコンクリートと広大な緑と畑であり、いかんせん都会に比べれば物足りない気がするも、それでも彼らは満足だった。
先にシャワーを浴びてくると言い残して、バスルームに向かった兄を見送りつつ、その窓から見える花火と祖国までとは言わないが、この涼しい気候の地特有の澄んだ空気の為がくっきりと星空を見上げつつシドは思いを馳せていた。
こうして大好きな人と一緒に旅行に来れて、新しい思い出が出来て・・・。
何時まで見上げていても飽きない夜空の下でゆったりと流れる時間を過ごすことがどんなに贅沢な事か・・・と、甘やかな至福に身を任せていたシドの身は、不意に近づいてきた兄の腕にそっと背後から捉われた。
「兄さん?」
早かったなぁと思いつつ、一風呂浴びてきたバドの身体は何時もより温かく、その体温に身を預けていたシドだったが、まだ昼間の汗も落としていない身をバドの手が弄りだしたので、思わず抵抗の声を上げる。
「ちょ・・と、ま・・っ!」
だがその制止に構わずに、シドの顔を半ば強引に後ろに振り向かせて口付ける。
「ん・・っ」
僅かに抵抗が緩んだが、それでも抱きこまれている兄の手を振り切ろうと身を捩るも、そんな弟をバドは更に身動けないようにきつくきつく抱きしめなおし、そして与えている口付けも更に深さと激しさを増していく。
「んっ・・ふ・・・・」
膝ががくがくと震えだして、もう立っていられない程に甘く激しいそれ。
一人では立っていられない状態のシドの閉じられた瞳からは、息苦しさとは別の恍惚からか、無意識のうちに涙が零れ落ていく。
「・・・は・・・・」
ようやく唇を離されて、呼吸を整えようとして息の上がるシドの身体を軽々と抱え上げた。
「ぇ・・っ」
突然宙に抱え上げられた自分の体と兄を見比べながらも、それでもすっかり抵抗力を奪われたシドは為すがままに身を預けていたが、そのままベッドの上に行くのかと思ったら、何を思ったのかバドは先ほど自分が使っていた浴室のドアを開けて、まだ湯煙が立つ、空の浴槽の中に弟を置いた。
「・・なに・・?」
「折角の旅行だし、一緒に入らないか?」
既に入浴は済ませたはずなのににこやかに弟に問いかけるバドの企みに気づいているのかそれとも本心なのか、シドは本気で困った表情をでその案を断ろうとするも、そんなことで引き下がるほどこの兄は殊勝ではなかった。
「んんっ」
既に返事を待たないまま、小さな浴槽にバドも入り、狭いその空間座り込んだままのシドに覆いかぶさる形で口付けを再開して行く。
「ん・・ぅ・・っ」
微かに開かれるその唇の隙間から舌を侵入させて絡め始める中、後ろ手で適温にした湯を出すために、そっとシャワーのカランを回す。
ザー・・っと、霧雨の様な湯がバドの着ているローブと、そしてシドがまだ身にまとっている服を濡れそぼらせていく。
「んぅ・・っん」
温かいその雨と共に降ってくる、バドの口付けが施していく熱に、段々とシドの思考は麻痺しだしていく。
「ん・・、あ・・っ」
口内で絡まっていた舌が引き抜かれ、唇同士を煌銀糸が繋いで消えていく中、シドの唇を貪っていたバドのそれは、濡れたシャツの上から透けて見えている胸の突起を啄ばむ為に寄せられていく。
「あ・・んっ」
濡れたその感触と共に突起に触れられる兄の愛撫に、素肌と布地の擦れる感触と相俟って、ぴくんと震えるシドの身体は、徐々に欲望に忠実となっていく。
「ん、ん・・・ぁっ」
湯煙の温かさも手伝ってか、どんどんと火照りだしていくシドの身体にぺたりと濡れて纏わり付く服を脱がして、素肌をその指先で直になぞりながら、もう一方の手の平を快楽にもたげ始めているシド自身にそっと落とす。
「ぁっ!」
押し殺す様な甘い悲鳴を聞きながら胸への微刺激はそのままで、焦らす様にそれを撫で回し続けていると無意識のうちに強請るように腰を揺らし始めるシドにバドはくすりと笑みを零す。
「ん・・ぁあっ」
薄紅色に色づき始める白い肌に、所有の朱華を散らし始めながら、自身にあるその手は濡れて重くなったズボンの中に侵入し直に触れ上げて快楽を促進させる為にゆっくりと扱きだす。
「は・・んっ・・あっ」
いつの間にかシャワーのノズルから湯は止められており、所有の証である刻印を散らし終えたバドは自分の手によって切なげに甘く鳴く弟の顔を覗き込みながら、更に手の中の熱い弟自身を追い上げてやる。
「や・・ぁっ・・・あぁ・・・!」
「可愛い・・・シド・・・。」
限界を訴えるかのように息の上がりかけるシドの耳元に唇を近づけて、そっと囁いてやるとその吐息すらも快楽と受け止めたシドの身体は更に大きくびくりと跳ね上がる。
「ああぁ・・っ!」
そしてそのままシドは掠れた声を上げて、兄の手の中に己の熱を吐き出していた。

「っふ・・は・・はぁ・・っぁ・・」
上がる息を整えようと、それでも快感の余韻に浸るシドの身体をバドは抱え上げて寝室へと戻っていく。その間もシドはくったりとしたまま兄に身体を預けていた。
「ん・・」
キシリ・・・と、柔らかすぎるほどのベッドのスプリングを軋ませながら、バドはシドの身を優しく横たえてやり、そのまま両脚を抱え上げて、先ほど熱を放った弟自身を口に含んで再び弟の身体を高めだしていく。
「あぁっ・・!」
先端を軽く甘噛まれながら吸い上げられて、根元をその手で扱かれて、身体はもとよりシドの思考は真っ白に染まり始めていく。
「あ・・は・・・っ、あぁ・・んっ」
何時もと違う異国の中だからか、バドのほうも段々と自制が効かなくなって居るのを感じつつも、前を愛撫していた唇を後ろに寄せていき、固く閉ざされた秘所に舌先を這わせて解きほぐす為にゆっくりと柔らかい異物を侵入させていく。
「あ・・ぅ」
柔らかい舌先が侵入していく感触に一瞬強張る弟の中に指も突きいれて、感じる箇所を両方で攻め立てていく。
「ふ・・ぁあ・・ぁっ・・・ん」
何度も何度も抱き合って、快楽を感じ合える様になって久しいが、出来るだけ弟を傷つけたくなく思うバドは、はやる気持ちを押さえつけながら、ゆっくりと指を増やしていき丹念にその熱い内部を押し広げていく。
「にい、さん・・っ」
愛しさが募る分だけ優しくしてやりたい・・そして、そう愛される泣きたい位の快感を感じ取れるシドは、吐息の様な掠れた声で兄を求めた。
「シド・・・。」
身を起こして、中から指を引き抜き圧し掛かるバドの頬にシドは白いその綺麗な手を添えて、こくんと頭を縦に振る。
「ん・・っ!」
自分を想って熱く滾る兄の先端が秘所に触れる生々しい感触にシドはきつく瞳を閉じる。
いくら快感を感じるとは言え最初の方は若干の痛みを伴う弟を労るように、バドの唇が閉じられて震える睫毛に優しく落とされる。
想いを確かめ合うこの蜜時、シドがその想いを一番感じられるのはこの瞬間だった。
「ああぁあっ・・!」
「く・・っ、シ、ド・・!」
ゆっくりとゆっくりと肉壁の縮小に合わせながらシドの中に入っていくバドも、何度入り込んでもその内部の熱さが齎す快感に思わず吐息を漏らす。
嬌声を上げて仰け反らせた白い喉元に思わず噛み付くように唇を落としながら、それでもシドの呼吸が収まるのを待ち、そしてゆっくりと律動を開始する。
「は・・ぁ、あぁ・・っん、ぁっ!」
バドの熱い先端が奥を突くたびにシドは艶っぽく喘ぐ。
白いシーツを握り締めて、本能的に零れる珠の様な涙を、目尻から零れ落ちる前に唇を寄せて舐め取りながら、バドはそのまま両手をその横脇に差し込んで、シドの体を繋がったまま起こし上げて向かい合う形に抱き変えてやる。
「や・・ぁあっ・・・」
至近距離にある兄の瞳が乱れる自分の全てを捕らえていると言う羞恥と共に湧き上がる悦びとが入り混じり無意識のうちに弱々しく首を振るシド。
密着した裸体と、中にある熱い兄自身と、その身体を支えられるその寸分違わぬはずでも大きく逞しいその手・・、その何もかも全てが愛おしくて。
「シド・・っ」
下から突き上げながら、バドもまたシドに囁きかけて、若干上の位置にあるシドの唇にバドは何度目かの口付けを交わすために己のそれを押付ける。
「ん、んぅ・・、んっ」
見上げられて差し込まれるバドの舌に、シドもまた何度目かの応答の為に舌を絡ませ出す。 首に巻きつけられたシドの両腕は更に力が込められて、その逞しい身体を抱きしめ返していく。
「ん、ふ・・ぅ、ぁあっ」
バドの唇がシドから離れ、名残惜しげに二人の間を透明な儚い糸が繋いで消える。そのまま少しだけ顔をずらしたバドの舌がシドの両胸に鮮やかに赤く色づく突起に直に這い出してそのまま吸い上げて甘噛んでいく。
「あっ、やぁ・・ぁっ、も・・・・ぃくっ・・」
いっそう激しさを増しながら加えられて行く快楽に、弱々しく頭を降りながら絶頂を訴える弟をしっかりと抱きしめながらバドは余す事無く強く腰を押さえつけて一際激しく揺さ振りだし、その内部を強く穿っていく。
「あっ!・・あぁああっ、にいさ・・っ!」
「く・・シ、ドっ・・!」
内部を満たしたその快楽の衝撃に、大きく体を仰け反らせて達したシドとと同時に、バドもまた内部のきつい締め付けに弟の中に全ての熱を解き放っていった。

ぐったりとして崩れ落ちるようにして兄の身体にもたれかかるシドを、そっと支えてやるバド。
「大丈夫か?」
「ん・・・・、へいきですよ・・。」
心配そうな顔をする兄に掠れた声ながらも答えるシド。そのまま肩に頭を預けたままですぐ近くに在る体温を感じている弟の頭をバドは優しく撫でていた。
「来て、良かったな・・・・。」
「・・・はい・・・・。」
「また・・・・来ような・・・。」
「はい・・・。」
それはこれからもずっと一緒にいるという想定での未来への誓い。
いつの間にか窓の外の灯りも殆ど消えてしっとりとした夜闇に覆われる中、二人はそのまま身体を横たえて、幸福のままに深い睡へと落ちていった――・・・。








・・・その、翌朝。




「∑あぁああーッッ!!?」
珍しく取り乱したシドの絶叫が部屋に響き渡っていた。
「んー・・・?」
まだまどろんでいたバドは、半分寝ぼけながらもそのただ事じゃない弟の声に目を擦りながらも気だるい体を起こし上げてシドの姿を捜すと、彼はその身にブランケットを包んだまま浴室に立ち尽くしていた。
「・・・なした?」
「・・・・服・・・。」
そう、二人ともすっかり忘れていたのだった。
シドの服が、昨夜浴室にそのまま干しもされずに放置されていた事を。
一泊二日と言うこれまたとんでもないスピード旅行の為に、お互いに替えの衣服は持って来ていないし、今から乾かそうにしても出発の時間も押し迫った中では無理な相談である。
「・・・・どうしよう;」
落胆するシドの頭をぽん・・っと軽く撫でながら、バドはホテルの店で何か見立ててくるからと言い残してそのまま部屋を後にした。



それから、数分後・・・。



「に、兄さん・・・;」
「何だ?」
その間すっかりシャワーを浴びてホコホコと湯気を立てながら待ちわびていた弟を美味しそうに思いつつも、いかんと首を振りながら兄に差し出されたそれを身につけたシドは戸惑いに満ちた視線のまま、この状況の説明を求めていた。
「・・な・・、んですか、この服・・・?」
「下の店で委託販売として置かれていた某ブランド服だが?」
「いえ、聞きたいのはそこじゃなくて、何でゴスロリ服を買って来たのかを聞きたいのですが・・・。」
既に涙目で問うシドの身には、黒いフリルシャツ+黒いチュールのロングスカート+その下にはご丁寧にもドロワーズまで装備済みであり、頭上にはこのファッションには必需品の黒ヘッドドレスまで付けられていた。
ヘドレ・・・と言うか、チュールスカートの時点で気づけよと言う話なのだが、あえてもう何も言うまい・・・。
「似合っているぞ、シド・・・。」
「嬉しくないです!(涙)この姿のままアスガルドに帰れと!?大体何でこんな辺鄙な場所にこんなコアな服の委託をしている店があるんですか!?;」
「だから言ったろ?取ってつけたような設定だと。
「・・・うぅっ・・・。」
「だが心配するな・・・、お前は俺が責任を持ってアスガルドまでエスコートするから・・・。」
「うぅうっ・・・(涙)」
どこか恍惚とした表情で跪かれてとられたその手の甲に口付けを落としながらの兄の台詞がどこか楽しげに聞こえるのはきっと気のせいではないであろう・・・・。




かくして北欧双子達の怒涛に訪れた短い夏休みは、怒涛の結末で幕を下ろしていった。
ちなみに結局その姿のまま祖国に戻ったシドは、あまりのショックを受けたため一週間ほど部屋に引きこもり仕事に出ずその尻拭いを全部バドが受けたと言う、兄の自業自得でしかない結末も一応付け加えておく――・・・。






BGM
大塚愛『フレンジャー』
ANNA inspi NANA・BRAST『rose』
OLIVIA inspi REIRA・TRAPNEST『a little pain』




全ての働くアスガルダー腐女子様に幸あれ!\(^0^)/