Child Play-break "S" spell-






ねぇ・・・、母様・・・こっちを見て?
私達はあなたのお人形じゃないんだよ?
ここには双りのあなたの子どもが居るのに、どうしてあなたは私達を一人の個体として扱うの?
ここには「シド」ではないもう一人のあなたの子が居るのにどうして気づいてくれないの?
どうしてあなたの瞳はそんなに澄んでいるのに、合わない焦点で私達を見つめるの?
ねぇ・・・、どうして?ねぇ――!

隣に居る、たった一人だけ自分と同じ存在がそう訴えていても、この女には何も届きはしなくて、それを哀しんでポロポロと涙を零すこの弟を守れるのは俺しか居ないとそのとき切に思い、そしてそうなろうと誓い、そして――・・・。

Child  Play
-break  “S” spell-


「キモチが悪くなったらすぐに言えよ?」
「うん・・・。」
二人の身体を乗せたベッドのスプリングがキシリと鳴り、ギュッと自分の夜着を掴んで震えてる小さな・・寸分違わぬ大きさなのに、華奢で幼く見える弟のシドの手を優しく取りながら、同じ姿形のもう一人のシドである兄はその桜色の可憐な小さな唇にそっとキスを落とした。
「ぅー、っ・・ん」
目を閉じている瞳をうっすらと開いて見れば、弟はその与えられるがままのキスに対しての嫌悪感とか拒絶とか微塵も出さずに、無邪気に重ね合わせられている兄の唇を自らの舌で舐めあげ始める。
「ん・・、ちゅ・・ん」
唇を這い出した弟のそれを兄の舌もまた絡め取って、くちゅくちゅと音を立てながら幼子特有の無邪気さと純粋さを前面に押し出した激しさで、お互いの舌をペロペロと舐め回すようにして絡み合っていく。
「ねぇ、キモチいいよ・・。」
唇を離して互いの唾液が糸となり二人を繋いで消えていく中、弟は潤んだ瞳で兄のシドを見上げて夜着を掴んでいたその手をするりと首に回して、ぼぉ・・ッと陶酔感溢れる感想を述べた。
「大丈夫だったか?」
「うん・・・。」
じゃあ・・と、言葉を紡いだ後、先に生れたほうの“シド”が自分に擦り寄ってくる弟の柔らかい絹で造られた夜着のボタンを一つずつ外していく。
「もっとキモチよくなれる事・・・。」
「もっと?」
「そうだよ・・・。」
「うん」
後に生れた“シド”がこくりと頷いたのを見届けた兄は、それが想定の範囲内だったのだろう、何も躊躇いも無くその中にするりと手を忍ばせていく。
「あ」
いつも温かく自分の手と繋いでくれていた、もう一人の自分の手がまるで、別の生き物の様に熱く感じる。
ぺたぺたと薄い肉付きの胸や腹を感触に弟はくすぐったいような声を漏らしていたが、その手が不意にまだ青く固いその実に触れた時、初めて感じる甘痒いような感触に身体を捩るように震わせた。
「や・・」
「どう?」
その部分に持っていった手と指でその実を軽く抓るように捻って、そして指先で引っ掻くように押しつぶしながら顔を近づけて様子を伺う兄の声。
「うぅ・・ん・・っ、なんか・・ヘンだよぉ・・・っ!」
いつも傍らで聞く兄のその声もまるで別人の様で、大人っぽく聞こえて、それが更に弟の気持ちを煽っていく。
そうする内に与えていくそれはそのままで、兄の“シド”の空いている手が肌蹴たままの弟の夜着を脱ぎ落として行き、すべすべした白い肌を露にしていくと、まるで母猫が子猫に施す身づくろいの様にして、唇と舌を使って弟の反対側の青い実に落として舐めまわしていく。
「やっ、だめ・・・!そんな、の・・!」
慌てて兄の頭を引き離そうとして身体を引こうとしても、初めて与えられていく甘いお菓子の様な感覚にそれすらもままならず、更には兄の片手がしっかりと弟の身体を掴んで離さない。
「いや・・、や・・ぁ・・っ!」
いやいやと頭を振る弟の、胸を小さくだが固く青く飾る突起を舐りまわした兄の舌先はそこから更に更に下へと下りて行き、そして自分と同じ大きさの幼い性にまで辿り着く。
「やだぁっ!ダメだよぅ・・・!」
まだソレが排泄しか機能を果たさない事しか知らない弟は、ずり下ろされた下着を何とか戻そうとしてもがくものの、それはそのまま押し倒されて兄の唇がソレを含んだ事でその動きは止められて、舌が歯がそして口内で包み込まれていく度に漏れ出す掠れた声は、未知なる快感に捕らわれ始める甘い色を醸し出していた。
「くすぐった・・・っ、いやっ・・ダメっ、きたないよぉ・・!」
「どこが?・・・ん、く・・、シド・・、お前の身体のどこに汚い部分があるんだ・・・?」
二人ともまだ子どもで、大人特有の穢れた知識が乏しいせいか、兄はそれこそ甘い甘い美味しい物を頬張るようにしてぴちゃぴちゃとそそり立ち始める弟の性を、ぺろりと舐め上げて根元を飾るまだ小さな二つの珠に手を添えて揉み解しながら弟にそう問いかける。
「や・・やぁ・・、ああんっ」
兄である“シド”がその部分で喋るたび、その動く歯と吐息、そしてひっきりなしに高めだしていく口内の熱さに、弟は脱ぎ捨てられた自分の夜着を手に掴みその裾を噛んでその甘い声を押し殺そうとする。
「ん、ふ・・ぅんっ!」
急に押し殺された声に、兄の“シド”が不意に愛撫を中断してその顔を上げると、目を閉じながら本能的な涙を零す弟の口からやんわりとその裾を外させて、頬を優しく包み込んだ。
「?」
「ねぇ、シド・・・。俺のも同じようにシて?」
「え・・っ」
それは即ち自分も兄のソレを高めろと言う事で、流石に弟は躊躇う色を視線に滲ませたが、ふと悲しそうな不安そうな表情が兄の下ろされた前髪の向こうで揺らいだのもまた見逃さなかった。
「・・・本当に俺はちゃんと“俺”なのか・・・。」
「・・・シ」
「違うよシド・・。“シド”はお前だ。」
「でも・・・っ!」
「俺の本当の名前は、お前が付けて・・・。」
その兄の懇願に弟・・シドはその覆いかぶさった彼の前髪をかき上げると、その両の瞳は全く自分と同じようで、でも違う光を宿している。

どうしてあの人は、こんなにも違う存在の私たちを切り離せないで縛り付けたままで見ているの・・・?
どうしてこんなに優しくて大事なこの兄と、この私にその存在をはっきりとする字を与えてくれなかったの・・・・?

「・・・じゃあ・・。」
少しだけ考え込んで、シドは内緒話をするような仕草で兄の耳元に唇を寄せて、取って置きの秘密を告げるかのように、もう一人の大事な自分に向けての贈り物をそっと囁いた。
「・・・バ、ド・・・?」
「・・・シド。」
その贈り名を耳にした瞬間、兄は1/2の“シド”から解放されて、バドと言う一つの存在になって、改めてシドとなった弟に向けてにこりと微笑んだ。
「ありがと・・・・。」
その笑顔は今まで見た中で一番嬉しそうな表情で、シドの胸はどきりと跳ね上がる。
「ねぇ・・バド・・・。」
先程のまでの躊躇いは一気に掻き消えて、バドに対してもっと喜ばせてあげたいと胸を突き上げてくる衝動に駆られて、シドは上に被さったままのバドのソレに手を伸ばす。
「ぁ・・っ」
途端に顔を気持ち良さそうに歪めるバドに、シドはソレを更にまだ夜着を着たまままで居る兄のソレをその上からなぞるようにして触れていく。
「く・・シド・・っ!」
「キモチいいの?バド・・」
「あぁ・・・っ、イイよシド・・。」
余す事無く本音を告げるバドに対して、シドもまた嬉しそうに微笑みながら、兄の性を更に愛撫しようとするも、その手は一旦止められる。
「?」
思わず怪訝そうにして見上げるシドに、バドは優しく微笑みながらその同じ色の柔らかい髪の毛を撫でながら少し小さい弟の体を抱き起こした。
「どうせなら二人でキモチよくなろ?」
その提案が何を示唆するのかを理解したシドは、今度こそ躊躇い無く頷いて、彼の体を優しく押し倒して手を当てたままのバドの性を直に取り出してどこか艶めく小さな唇でくわえ込む。
「ん、ふ・・」
そしてバドもまた先ほどの続きを再開する為に、自分の顔の方にシドの下肢を持ってこさせて、僅かながらに硬くなり始めているシドの性を下から口に含みだしていく。
「んく・・んぅっ、ふ・・ん・・・。」
自分よりも綺麗だと、先ほどまで同じ一個体でしか扱われる事しか許されなかった弟のソレを、自分の性を拙いながらも高めていくシドに、バドとして贈り続けて行く甘い快楽。
「ふぅ・・・っ!ぅんっ、かは・・っ」
時折息苦しくなるのか、シドはバドのソレから唇を離してはぁはぁと息継ぐものの、同じようにして硬くなっていく兄のソレを嫌悪する事も無く、ぎこちないながらもただひたすらに高みに高みにと昇らせていく。
「あっ・・!?」
だがバドの舌が不意に弟の性から外れて、それこそ本当に排泄以外に何の用途も為さない窄まった蕾にあてがわれて、シドは流石に上ずった声を上げる。
「や・・、だ・・っ、だめそこは・・っ!」
だがそんな弟の制止を何度目かの無視を決め込んで、濡れた舌先で固く閉ざされているその周りをなぞるようにして舐め上げながらゆっくりと捻じ込んで行く。
「やぁあ・・・っ!」
ぴちゃぴちゃと、まるで猫が水を飲むような音を立てながら、バドは弟の柔らかい内部に同じように柔らかい舌先を突き込んでは軽く引き、時には円を描くように動かしながら、今まで勿論誰にも入り込んだことの無いシドの内部を舌先から堪能していく。
「あ・・あ・・ぁあ・・・」
柔らかいとは言え犯入されている感覚に、ブルブルと体を震わせながら涙ぐむ目でこちらを振り返り見つめてくるシドに、バドは舌先律動を繰り返し、きゅう・・っとその部分に押付けた唇で小さな蕾を吸い上げた。
「やぁ、ぅっ」
「言ったろ?お前の身体に汚い部分なんて無いんだって・・・。」
それよりもほら・・・、と、浮き上がる腰を押さえつけていた片手をシドの頭にそっと添えて、中断されている行為を持続させようとそちらの方に振り戻させてやってから、自分の腰を軽く突き上げて、空きっぱなしの口の中にまたソレを銜えこませてやる。
「んく・・!」
逃れないように、それでもシドが苦しくないように手を置きながら再び温かい口内に自分のソレが包まれてから、バドもまた新たに見つけた快楽を送り込むべき場所に緩やかな激しさを持ってソコを攻め立ててやる。
「ん・・く・・う、く・・ん、は・・ん」
淫音を立てられながら、ぬるぬると後ろをやんわりと開かされている感覚に、シドは頬を羞恥に薄紅に染めながらも、それでもたった今に認識した兄への存在と想いを込めながら、舌先でその先端を舐め上げては固くなっていく根元を本能的に、でも優しく扱いていく。
「ん・・は・・ぁあっ、バ、ドぉ・・っ!」
「・・・シド・・っ、ぅあっ・・あっ!」
互いの身体の奥底から目覚める快楽の波は、まだ精通すら訪れていない二人の身体を初めての絶頂へと誘ってその意識を白く点滅させていく。
そのあまりの気持ちよさに、シドは兄の上でバドは弟の下でビクビクと身体を撓らせていき、深く餌付くようにして互いの身体に刻み込まれていく。
まだ性行為の知識すら、そしてそれが齎す意味すらもよく判っていない二人の子どもがそれでもここまで高めあい求め合う事が出来るのは、一重に互いの存在意義の確認のためであり、決して快楽優先では無い。
だがそれでも、暗闇の中の手探りの行進の様にして互いに導き出すその感覚が快楽だと、月日が流れ流れて行き正しく意識したところで、この二人の子どもにはそれを罪だと受け止める意識は毛頭無いであろう。



相変わらずこの綺麗な人は、夢見心地のままで私たちを切り離せないで居て、焦点の合わない瞳で一個体の名前で呼び続ける。
でももうそんなのはどうだっていいんだ・・・。
俺達は二人の世界の中では、ちゃんと切り離れて正しく一つになれる手段を知ったのだから。
だから貴女はずっとオママゴトのその甘い甘い悪夢の中を漂っていればいい・・・。

月日が流れて何時か貴女が私達に気づいたのならば、ちゃんと二人手を取り合って責任を持って貴女を愛するお父様のところへ送ってあげるから――・・・。



「シド、シド?どこに居るの?」
「「・・・ちゃんとここに居るよ、母様・・・?」」







BGM:Dir-en-grey“脈”






帰らせてください。