背後から見守るような、熱く凍えそうな視線を今夜も感じる。
たった一人の双子の兄の、殺意と哀れみに満ちたそれの中でひたすら耽る恥為に溺れ、どれだけその中で達したか知れない。
浅ましいと思いながらも、アナタを想うだけで昂ぶる性をアナタに見立てたその手で刺激を加えて弄繰り回して、それで高めた薄汚い白い欲情を夜の闇の中に飛び散らすだけの非生産的な夜毎の独り舞台。
『あ、いしてます・・っ!』
それが高じた高じた結果が・・・、きっと果たされないと思っていた一夜の夢だった。
an heir
背後に広がる闇の向こうから伸びてきたその腕は、逞しいアナタに似つかわしくないほど鮮やかに白く私の視界に入り、そのまま肌蹴た胸に回されて絶頂途中の私を押さえつける為に力が込められていく。
一瞬このまま殺されて行くのだろうか?いや、それでも構わないと思ったのは、それこそこの身にアナタが触れる事など無いだろうと思っていたから。
それだけでこの汚らしい身体には上等すぎるほどの刻印となったはずなのに、貴方のその手が私の背を押さえつけながら纏っていたシャツを手首の当たりで手繰りこませて組み敷いて、その視界を遮ったかと思うと、声も無いままアナタの忘れ得ぬはずの無い視線が私の下肢に注がれるのを感じて、自分でいたぶり尽して勃ちあがらせた自身がビクビクと熱く震えて、先端に露を滲ませていくのが判った。
待ちわびたアナタのその軽蔑に満ちた視線、それだけで達しそうになるも、もっとアナタに触れて欲しいという底無しの欲望に任せて焦れる身を捩ると、その狭く窄まる今のところ排泄にしか使われていない部位に熱すぎる吐息が触れて、そのまま唇を押し当てられた。
「あぁ・・っ!」
びくんっと一瞬震えた次に、押し当てられた唇から差し込まれるその柔らかい生き物の様に這っていくアナタの吐息と同じ位に熱い舌先が捻じ込まれていき、自分で触れたことも無いその内部からは今まで感じたことの無い、焼かれるほどの悦楽が与えられていく。
「・・ッ、あぁ・・っ」
ぴちゃ・・っと音を立てられて、柔らかくソコを・・・最も不浄とされる部分に突き入れられて、解されていく為に穿る様にして動き回るその愛撫が気持ちよくて気持ちよすぎて・・・・・。
ずっとずっと、お慕い申し上げていたアナタの奴隷になることを夢見ていた私は、今こうしてアナタが私の仕掛けた誘いに高じて乗ってきてくれたことがたまらなく嬉しくて・・・。
優しくして欲しいなどとは露ほども思わない、いっそこのままバラバラに壊れてしまっても良い、むしろ繋がったままで殺されたって構わないから、もっともっと・・・私を嬲りつくして欲しくて・・・。
「や・・っ、あぁあっ!」
そう昂じていた私の気持ちを汲んだのかと思う程、柔らかい舌が入れられたままでアナタの筋張る長い指が侵入してきたのと同時、その部分から全身に回って行く甘い甘い毒の様なそれに、アナタの双眸その前で、びくびくびくとのたうつ様に猛るソレから欲望を解放していく。
「ひ・・ぁあっ・・!」
一瞬だけ飛んだ思考で呼吸も憚れて締まって、間を置くようにして乱れた息を整える間も無いまま、入れられた長い二本の指が私の奥・・それこそ届きもしないような場所にまでアナタ自身が蹂躙していく為にぐりぐりと捻じ込まれていく異物感に、苦しさよりもむしろ恍惚感に満たされ始める。
「あ、あ・・・ぁあ・・っ」
擦られる感覚と、ぬちゃぬちゅと言う私をひたすら調教するための水音と無言のままでありながら僅か漏らされる無意識のうちかの荒いアナタの息遣いに混じる自分の喘ぎ声が齎す奏でに、またじわじわと中心部が硬くなり出しながら充血してくる。
本当はもうこのまま、アナタにこの身を引き裂いてもらっても構わなかった。
例えこれ以上のどんな激痛を与えられたとしても、本当に裂けてしまって事切れたとしても、それはちゃんとアナタが私を貪り穢したと言う証として私の身体に刻み込まれる事となるのだから。
「は・・ん・・っ」
それでもこうして、念入りに念入りに弄られていくその指の感覚が、本心から望んだ人が与えてくれるもので、それによって沸き立ってくる快楽は、もう間近に迫る死の瞬間まで自分を偽り続けようと、最期のその時にまで伝えないで置こうと決めた私の見ている都合の良い夢の様な甘さを持つそれで。
「あぁあ・・」
三本にまで増えたアナタの少しだけささくれた長い指で、じゅぷじゅぷと音を立てられて突かれていく度、注挿を繰り返されるたびに段々とほぐれていく快楽に、無意識のうちに腰を突き出し始めていた。
「もぅ・・、ゆる、して・・・。」
もっとアナタに与えられる快楽を味わって居たいと思いつつも、それでも早くソコに私を蹂躙したく想う猛ったアナタを突きこんで、めちゃくちゃにして欲しいと、焦らすように引き抜かれていく指の感触に、掠れた声で理性の欠片など残らない台詞を吐く。
「はっ・・ぁあっ・・、あぁーっ」
それをアナタはどの様な角度で受け取ったのか暗闇の中では知る術も持たないが、強く強く、ぐ・・・っと裂けんばかりに双丘を掴みあげられて、息を呑む隙を見計らったかのように、この狭い汚らしい穴の中に捻じ込まれていく猛り立つアナタ自身。
暗闇の中、機能を果たさない視界に代わって、他の身体全体がそれを補う為に、快楽だけでなく苦痛を敏感に感じ取った私の肉体が背を反らせて激痛を訴えていても、私を嬲りつくして奪いつくす事を目的にしたこの行為であっても、心は今、例えようのない程に満たされています。
「は・・ぁ、ん・・っ」
背後から覆いかぶさってくるアナタの掠れた熱い荒い息が耳元をくすぐっていくのと同時、やはり埋没した方も若干の苦痛が齎せるらしく、それを紛らわそうとしてかその大きな手が私の前に回されて、ずぅっとそうされたくて待っていたその性に触れられていく。
「あ・・・・っは・・ぅっ」
そうされることでもっともっと力を抜いて、精一杯アナタをお迎えしたいのに、結局は身体は正直だとはよく言ったものでもうこれ以上はどうすることも出来なかった。
だけれども私の中に在るアナタはとても熱く硬くて、更にそうなっていくからの事であって、それはこんな私の中に満足感と快楽を覚えてくださっていると言う事でしょう?
「あっ、ぅああっ・・ぁああ!」
それでもようやく根元にまでアナタが私を感じるために埋めた瞬間、また呼吸を乱すほどに憎しみと蔑みをただただ込めて激しく穿ち始めたこの時、肉体の方も持て余していた乾きと疼きがようやく温かく熱く満たされていく。
両手を戒められて、上半身をうつ伏せに投げ出して、下半身を固定されてひたすら雄を咥え込んで、アナタのその前に全てを捧げた肉奴隷の犬と化したとしても私は、わたしは・・・。
「はっ・・んっんん・・っ!」
その時不意に力なく横たわっていた上体に手を回されて起こし上げられて、顔を横に向かされて、何事かと認識する前に、半開きのまま鳴き散らす私の声を塞ぐように与えられていく噛み付く様な、それは・・・。
「んんっ、ぅん・・っ!」
その膝の上に乗せるようにしてぐりぐりと下肢を押さえつけられて、何の手加減も無いまま揺さ振られているのに、絡め取られるアナタの舌先に諦めていたはずの愚かな想いを今一度抱く程に甘い甘いこれは・・・っ。
「・・・・――っ!、ぁあっ、あー・・・っ!」
バド・・・!
唇を離されて絶頂を迎える瞬間のその前に、白く霞む意識のままにそう叫びそうになったのを必死で押し殺したそれは果たして上手く行ったかな――・・・・?
――・・・そう。
もうこれで私は何も思い残す事なんてありません。
後は今、最初で最期霞む視界の中、正面からの邂逅を果たしている貴方にとっては残酷でしかな真実を告げて貴方の思考の中に“私”を遺して逝くだけで。
強張っていく貴方の表情には、ありありとあの夜についての私に対する疑念とおぞましさが張り付いて心の中にまで侵食して言っているのが判る。
私の肉体には、貴方からの形に残らないであろうけども、一生私に残るものを頂いて、後は文字通りに貴方から与えられる最期の一撃で命を奪われる贈り物をもらうだけ。
貴方が今まで歩んできた道程の中で、どれだけの対象に憎しみを滾らせたのか・・・、それは思うまでも無く、私に一番惜しみなく注いだ事でしょう。
これが、最期・・・。そう、期は熟したのだ。
その翳した手から拳が放たれれば、それが私の本当に思い描いていた理想的な終幕なのだから。
さあ、はやく――・・!
これで私は貴方に全てを捧げられるのだから――・・・・・・・・・。
これは、罪無き貴方へ捧ぐ・・・、さいごの・・・・。
BGM:シド『御手紙』
戻ります。
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