絶 対 勢 力 圏
「・・・・・・・・・。」
そわそわと落ち着かない様子で、白く滑らかなバスローブに身を包んで、ベッドサイドに腰を下ろすシドは、時折水の音
が漏れる閉じられた扉の向こうを見やっては、曲線的な脚の造りで硝子の表面上に、大きく描かれたその透明さを損なわないよ
うに白く掘られた葉のサイドテーブルに、二人分のワイングラスと、温くならない様に凍りにつけていて、まるで自分たちと同
じような佇まいで並ぶ赤ワインと白ワインのボトルをちらりと眺め、そしてまた扉へと戻す。
既にシャワーを浴びたのか、水気を吸い取った髪の毛は照明を落とした部屋の中でも窓の外の雪と月明かりに照らされて仄か
に淡く艶やかに発光し、そして白く微かに上気した肌もまたその扉を隔てて湯を浴びている想い人を思うごとに、ほんのりと期待に疼きながらもまた更にその艶めかしさを増して行くかのように微熱を孕んでいく。
初七日を迎えた今日になって多忙な日々から解放され、今年最初にようやく彼の人と重なる休日の夜。
新年を迎えたアスガルドを祝う式典は、慎ましやかに暮らすこの国の民達や、末端部分のワルハラ宮に仕える人々にとって見れば忙しくも、また頑張ろうと身を引き締められる日々であっただろうが、今の自分からしてみて正直に言えば、アスガルドを愛する気持ちには変わりはなくとも、以前と同様に盲目的に主神に絶対的な信頼を・・・元々主神に祈りはしても信じてなどいなかったがそれはさて置いて・・・・寄せる事はできず、それよりも目の前にいる互いを本当に信じて生きたいと想えるようになったその事実を大切にしたいシドとそして彼にとって見れば、今夜、今から酌交わす時間こそが本当に新たな年の始まりに思えたし、頑なに今日だと信じ込ませる様に、多忙な日々を乗り切ったといっても過言ではない。
そのために帳尻を合わせた時間・・・残業がまわらないように全ての仕事を片付けた事によって身体にかかる疲労はじわじわと溜まってはいたものの、それでも途中で合流した彼と一緒に帰って来た自室の扉の取っ手に、互いの手を重ねて同時に回して開いてしまったただそれだけで、ここ数日間の疲れ全てが浄化されるかのような感覚を覚えたのがつい一刻前。
「早く・・・来ないかな・・・・・・。」
知らず俯き加減で呟いたのと同時、不意に水の音が止んで訪れる薄闇の中の静寂に、シドはぴくんと反応を示すかのように顔を上げる。
それと同時間髪いれずに上がっていく全身への熱。
彼を想うだけで、こんなにそばにいても尚、早く来て欲しいと訴える貪欲な本能
かちゃり・・・・・
そして間髪いれずに耳に響く浴室のドアの開く音に、とくり・・・・とシドの胸は静かに確実に高まりの音を刻んでいく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・待ったか?」
「え、いえ、そんなに・・・・・。」
それほどに長く待ったわけじゃない、正直にそう告げるにしても、どうしても言葉が詰まってしまうほど、既に酔わされているかのような甘い、甘い動悸。
長く伸ばした後ろ髪の毛先から滴る雫は、同じ造りのバスローブの胸元にまで伝わっている。
同じ造りの髪の色、同じ色をした瞳、同じ筈の顔・・・なのにどうしてこんなにも、彼が向ける瞳は優しくて、彼の笑う顔は無邪気
で、その身はそんなにも逞しいのか・・・・・、そう、シドが目の前の彼・・・双子の兄であり恋人のバドを熱の篭った瞳で見上げ続けていると、やはり彼は惜しみの無い笑顔を弟に向けた。
「そんな目で見られりゃ、お預けしちまったって気にもなるさ。」
「・・・・・・・・・///」
自分は一体どんな目で、兄を見ていたのか・・そう問い掛ける前に、バドはシドの隣に腰を下ろし、ピッタリと密着するようにくっ付いて、その細腰に同じようでいて弟を越える為に鍛えてきた、少々不器用な無骨さの名残を示すがそれでもあくまでも弟だけには優しい掌をまわしていきながら、その温かみを感じ入るように頬に一度口付けを落とす。
「・・・・・去年は、色々と世話になった・・・・。」
「こちらも・・・色々とお世話になりました・・・・・。」
そして今度は弟からバドに、少し首を伸ばしてそっと柔らかく唇を落として触れて、また離す。
少し見つめあいつつも、ふとバドの視線がテーブルの上で待機しているワインのボトルに伸ばし持ち上げると、そのまま栓の部分に指をかける。
きゅぽん・・・とコルクを抜く音が小気味よく室内に響くと、バドは目線で、磨かれたワイングラスを弟に持つように促すと、シドは少し申し訳なさそうな表情を見せて、それでも彼の好意に背かずに華奢な脚を持ってすっと差し出す。
とくとく・・・と、控えめな音を立てて、器に注がれていく透き通った紅の液体の向こうに見える、ほんのすぐ傍にいる彼の姿。
こうしている間にも、その体温、湯上りの匂い、それらを感じ取り、魅入るほどに近づけたこと、そこから始まった旧年の様々で掛け替えの無い思い出が注がれるワインと共にシドの頭を駆け巡って行く。
「・・・・・。」
半ば、ぼぉっとしつつ、その注がれる液体を見つめる視線にバドは、まだ陶酔するのは早いと言わんばかりに、小さな音を立てて赤ワインボトルをテーブルに置くと、今度は自分のグラスを手に取り、ん?と言うように小首を傾げてそこに白ワインを入れて欲しいと軽く促す。
「あ、すみません;//」
自分もまたすぐ傍にあるサイドテーブルに赤く注がれた液体の入ったグラスを置くと、小振りの白ワインボトルを手に取って、同じように軽く音を立ててコルクを開けて、ぎゅっと抱きしめてくる兄の温もりを感じ入りながら、ゆっくりとボトルを傾けて、白・・と言うよりも少し金色がかかる液体を切りのいいところまで注いでいく。
「・・・・・・・・シド。」
それをじっと見守りながら、そして同じようにサイドテーブルにボトルを置いたのを確かめたバドは、もう一度強く、肩に手を回してシドの身体を引き寄せると既に目元から頬をほんのりと薄紅に染める弟が、じっとその瞳を見上げてくる。
「・・・・・バド。」
呼称で呼ばず、字で呼び返し、そしてカチン・・・と軽く乾杯をして、そのまま互いに互いのグラスを交換する。
弟の手の中に兄の白。
兄の手の中に弟の赤。
――・・・・愛している・・・・。
そして、これから先もその気持ち変わる事無く・・・・・。
その言葉ごと飲下すかのように、新たな年を刻み巡るこの夜から、また、永遠の愛の誓いを浸したワイングラスに、シドは唇をつけてそしてこくん・・・と一口、また一口味わうかのように喉を上下させて嚥下していく。
「・・・・ん・・・っ。」
薄く瞳を閉じてその様子を見守っていたバドは、改めてこの弟を強く愛おしく想うのを感じたのだが、しかしそれ以上にむくむくとそこから発展していく欲情を感じ、手の中にまだ一口もつけていないワイングラスを弄びながら、ふとシドの見えない所でほくそ笑んだ。
「?兄さん??」
弟の手の中に在るグラスは既に空で、てらてらと赤く反射するワイングラスに目を移して、飲まないのか?と言う意味合いを込めて見上げてくる弟にバドは、ふ・・・・と、彼にだけ向ける優しい・・しかしどこか嗜虐的色を含む笑みを浮かべた。
「いいや、飲むさ。」
しかしそういうと同時、先ほど弟に注いだ筈の赤ワインのボトルに手を伸ばし、とぽとぽとギリギリまで足していき、元々少量しか嗜めない者用に作られていた類のワインのボトルはすっかりと空に近い状態になってしまう。
「あ、そんなに注いだら・・・。」
後に飲む分が・・・と諫めようとするシドの言を受け流すかのように、ぐいっとグラスを煽るバド・・だが、至近距離に寄り添っている弟の顎をいとも容易く捉えると、何事かと目を見開いたと同時に、半開きになった唇に自分の唇を重ね合わせて激しく奪うような口付けを開始した。
「ん・・・っ!んぅっ・・・」
いとも容易くぬるりと、兄の熱い舌先が侵入してきたかと思うと同時、そのまま生ぬるい赤ワインの液体がゆっくりゆっくりと
己の口腔内に注ぎ込まれ、それを押し返す暇も無いままで、飲みきれずにそのまま唇の端から顎に伝い、赤く濡れた一線が描かれていく。
その身を捩ってその口付けから逃れようとするものの、その身体をますます離さないとばかりに片手で押さえ込まれ、そしてもう片方の掌は、口内から与えていくワインを飲み干すまで離さないと言わんばかりにがっしりと顎を固定される。
「ん、く・・・ふっ・・・!」
もとより逃れるつもりなど無いが、突然前触れも無い激しいキスと口移しのワインを飲み込む若干の息苦しさに、きつく瞳を閉じた端から滲んでいく透明な真珠。
それをどこか抑揚の無い瞳で眺めるバドは、このまま弟をますますよがらせて行きたいという天性的な加虐心を煽られるのを感じながら、口に含んでいるワインを全て弟に投与していく為に、一定の角度から僅かに首をずらしては舌先を絡めながらシドの唇を大きくこじ開けて喰らいつくすかのようなキスを何度も何度も繰り返し与えていく。
「・・・っ、ふ、ぁっ・・・は・・・っ」
無理に注ぎ込まれた最初とは元より、断続的に与えられてくるワインをそれでもどうにか飲み終えたシドは、とろりと水膜の貼る夕日色の瞳で兄を、肩で息を切らしながら少しばかり非難するかのように見上げる。
「こ、んな・・・っ、いきなり・・・・・!」
それでも肌を合わせることには抵抗はなく、誓いの乾杯を交わした後に行われるものかと思っていたのに前触れもなく仕掛けた口付けと、その祝盃を自分が飲んでしまっては何も意味がないと、唇を尖らせて訴える弟に、バドは機は熟したり・・・と内心ほくそ笑んで、抱き寄せていたシドの身体から一度離れると、強い力でそのまま弟を壁際に押付けた。
「っ!な、に・・・?」
何か新しい遊びを思いついたかのような・・・むしろ最初から計算づくでこうなるように仕掛けたのか、酔いが醒めれば気づく事が出来たのだが、シドが冷静に考える先よりもバドの方が先手を打って出たのがこの年最初の愛の儀式の始まりだった。
「ちゃんと飲ませてもらうさ・・・・・。」
いつの間に置いたのか、柔らかすぎず固過ぎない二人の身体を受け止めるダブルベッドに敷かれたシーツの上にまだ半分以上残る中身のワインを再び手に取って、口に含む・・・ことはせず、きっちりと着込まないでゆるく帯を緩めて着込んでいたのがシドにとってこの夜の不幸の始まりであり、既に合わせから誘うように覗いている白い素肌の上に、軽やかな曲線を描く淵を押付ける。
「ひっ」
小さく触れられる冷たさに息を飲んだのも束の間、その部分からシドのうすい両胸の僅かな谷間から緩やかな渓流の様に伝っていく赤ワインの感触に、身を竦めて兄に訴えかけるように見上げるが、その視線に含まれる意志をさらりと受け流してあくまでも表面上は優しく微笑んで、耳元に口寄せて低く囁いた。
「お前の身体ごと美味しく、な・・・・・。」
「っ・・や、やぁっ・・・・・!」
その声に否定する間も無く、バドの顔は自らが流した赤い流れの跡をみぞおちに舌先を這わせて辿るようになぞり上げていく。
「あっ、やぁ・・っ!」
焦らされるような触れるか触れないかの舌先の感触にぶるりと粟立つのも束の間、視界の端先で安定感を保つワイングラスの中にバドの長い指が二本、軽い水音をたてて漬けたかと思うと、微かに赤く染まった指先がするりとバスローブのはだけをかき分けて中へと入り込み、少しずつ甘く硬くなりつつある赤き実りを摘み上げた。
「ぁっ」
バドの無体を許せずにもがいていた身体は既にそれだけで力を奪われ、それと入れ替わるようにうすい花弁から零れ落ちていく吐息交じりの甘き声。
「あっ、やぁ・・ん、ぁあっ」
摘んでは押しつぶし、そして扱かれていく突起は段々と芯を通してぷっくりと起ち上がり、時折またワイングラスに指を浸しては滑りを加えてまた触れる。
それを繰り返されていくうちに、もう一方の触れられていない突起も疼くように硬くなり始め、辛うじて全身をまだ覆い隠している光沢を放つ布地の上からも判るほど、胸の部分は赤く染み渡っていく。
「ぁっ、にいさんっ・・あぁっ」
「・・・こっちも?」
「っ・・・・!」
判っているくせに!
確信的な笑みを浮かべて胸元から顔を上げながらも、突起を弄繰り回す手は止めないで尋ねられ、羞恥で顔は既に赤くなりながら唇を噛み締めて、それでも頷くか頷かないかの角度でこくんと微弱ながらも頷いた弟に、バドはやれやれといった様子で、合わせを解いて上半身の白い素肌を露出させると、小刻みに震えているかのような小さな実に口付ける前に、もう既に空になりかけているワイングラスの中身を煽り、それから唇で覆い隠した。
「あぁっ、ぁ・・っ、ぁあっ」
舌先と唇で舐め上げるごとに、その部分から滴り落ちていく赤いワイン。
まるで自分の突起から放出されているかのような音を立てて、ちゅく、ちゅぅ・・と吸い上げられていく感触・・・・突起に触れてそして時折甘噛まれる歯や、絡め取られて行く舌先の滑り、そしてワインを含んだ事でアルコールの効果で熱く感じるバドの口腔と相俟って、布地で覆われる下肢もまた段々と昂ぶりを覚え、知らず腰がくねり出す。
「あ」
力が入らずに壁伝いにずるずると崩れ落ちそうになり、ベッドに横たわりたいとする身体が、一度突起を弄っていた掌で少し乱暴に押し上げられ、再び兄と向かい合う形の体勢になる。
「ぁん、ん・・・」
口内のワインを飲み干すまで胸にむしゃぶりついては吸い上げて舐められていくじわじわと炙られる快楽に、もう我慢が出来ないと、シドは震える手で肩を押し返していたうちの片方を、今自分の身体を押し上げた兄の片手が下へと降りて行くのを感じ取り、ピッタリとくっつけていたローブの中の両膝をゆるゆると解きソコへ彼の手を導こうとする。
「んっ、ぁ・・にいさ・・・、も・・・・っ!」
だが一向に自身に触れてくれず、それどころか自分の胸から顔を上げたバドは判っている筈なのに、ハァハァと乱れた吐息を吐き、目尻に涙を零れさせて掠れた小さな声で懇願する、滅多にない弟のお願いにも関わらず、その声を押さえ込むかのように唇を奪い始める。
「んんぅっ、ん、んんっ」
先ほどうすい胸と胸の間に流したワインは、ピッタリと閉じられたシドの太股と太股の間に溜まりを作る直前、淡い緑の茂みに吸い込まれており、その濡らされた感触を不快に思う以前に、もっと強い刺激を求めて微かに腰をくねらす弟を焦らすのと、その対象を自分にだけ反らしておきながらバドは、今度はサイドテーブルに置きっぱなしになっているほぼ空になった赤ワインボトル・・・・の隣の白ワインボトルを手に取った。
「んぁっ」
ゆっくりゆっくりと、自分の身体に触れられていた手が肩から離れ、下肢を覆うバスローブの裾を掻き分けていくかの様に下に降りて行く一瞬遅れた後に、口封じの様に長いキスを与えていた兄の顔も離れそのまま下へ通りていく空気の動き、それだけでシド自身は触れられても居ないのにますます膨張し先端に血が溜まっていくのを感じて、そろそろと無意識のうちに自分から裾を捲りあげてバドの顔をその場所に誘おうと軽く両膝を立て、震えながらも微かに広げていく。
打ち震えながら顔を赤らめて、段々と欲望に忠実になっていく弟、そんな彼は隙だらけで、バドはベッドサイドに降りてシドの前に膝まづいた形になるが、シドの視界に入らないように一瞬身体を屈めて手に取った白ワインボトルを口につけて先ほどと同様中身を口に含み床に置くと、シド自らが開いたその足首を両手で掴んで更に大きく広げ身体を割り込ませ、待ちわびたであろう、薄白の露を滴らせながら隆起する彼の欲望を、我欲の含んだ口腔にて覆い隠していく。
「やっ、・・つめたっ・・・あぁっ」
先ほどの突起物と同様、しかし今度はダイレクトに自身に注がれていくワインの刺激と、深く深く飲み込んでは口を窄めて、裏筋を舐め上げられていく舌先の動きに、シドの身体はびくびくと跳ね上がり震え始める。
アルコールの度数は強すぎず、弱すぎも無い丁度良いものだが若干ぴりぴりとした弱電流を流されているような感覚にシドは
怯えるかの様に無意識に逃げ出そうとするが、上半身は已然として固い壁に打ち付けられたままで、下半身に至っては両足首を掴んでいた筈の兄の両手はがっしりとシドの腰を固定して、ワインと、そしてシドの欲望全てを啜っていくかのようにじゅるじゅると卑猥ないやらしい音を立てながら彼を追い立てていく。
「あっ、ぁあっ、や・・ぁああっ」
それでも的確に舐め上げられて吸い上られていく最も感ずる性感帯と、そんな自身に直接注がれながら一緒くたに飲まれていくワイン、それらがシドを追い立てていくのは充分なほどの要因となって彼を絶頂に導いて・・・行こうとする正にその時だった。
「じっとしてて。シド。」
「っ、・・・?」
バドがシドの腰の拘束を解き、ほんの僅かに曲げられる膝裏に両手を差しいれて少しの力を込めてベッドサイドの方へ引っ張ったと同時、猫の如くしなやかな柔軟性を持つ弟の下半身を、そのまま頭部の方へと持ち上げていく。
「や、やだっ、やぁあぁっ!」
目の前に曝け出された己の恥部を隠そうとして、はだけた状態のローブの裾を持って来て隠そうともがくも、バドはますますシドの脚を強く押さえつけながら、後ろの秘部にまで滴り落ちた白ワインを辿るように舌先を這わせて、そのまま窄まりつつも誘うようにひくひくと蠢いているその場所を数回つついた後、そのまま柔らかい異物を挿入させていく。
「あぁっ、ひっ、あっあっ・・・!」
「ちゃんと見てるんだ・・・シド。」
もうとっくにバドの口腔内にはワインはなく、そして顔をずらされる事によって限界まで登り詰めている己の欲望をまざまざと見せ付けられながら低く下される命令に、シドは羞恥のあまり泣きじゃくりながら頭を振るばかりだった。
「もぅ、ぁ・・もぅや、めっ・・ああぁっ」
内部に突き立てられた舌は、ずぶずぶと柔らかく熱くなる肉壁に呼応するように、入り口から押し広げる為に左右に動き回り、時折上下にも蠢きながら奥へ奥へと穿るように深く入り込む。
「ひっ、ぅぁっ、ぁあっあっ!」
そしてバドの唇が秘部触れたと同時、軽く歯を立てて舌先が入っている入り口を吸い上げて攻め上げていくと、ますますシドはその潤んだ夕日色の瞳から涙を溢れさせてこれ以上の兄の暴挙を制止する為に不安定な身体ながらもその頭を押し返そうとするが、舌先だけでは足りないのかと言わんばかりに、長くささくれ立った指を二本、充分に潤い濡れそぼつ中にぐちゅり・・・と、故意に音を立てられながら犯入され、ますますシドは身悶える事になる。
「や、あぁっ、あああっ!」
ぐちゅぐちゅと湿った音を響かせながら、舌先と指で内部の最も感じやすい所ばかりをなぞり上げられ時には強く押しつぶすように触れられて、張り詰めていく熱は細い線の様に保たれていたシドの理性をぷつりとかき切って、バドの頭に伸ばされていたその手を自分自身の根元に添えて、根元から上下にかけて思わず強く扱き出してしまう。
「ああっ、あっ、も、ダメっ、い・・・っ、あっあああ」
きゅうっと内部を締め付けながら、兄の舌と指、そして両足を押さえつけていた筈のバドの片手はいつの間にか清楚な弟の隠された本性を象徴するが如くに淫らに膨張した根元を飾る膨らみを揉みしだいて、それも手伝ってシドは大きく全身を、拘束を解かれて自由になった片足と折り曲げられている片足のつま先に至るまで痙攣させながら絶頂に達していく。
「はぁっ、んっ、は・・・・・ぁっ」
ゆっくりと舌と指、そして宛がっていた掌をどけてバドはすっと身体をずらして、彼の身体の横に手を付いてそんな弟の乱れ切て婀娜声をあげて達した姿を恍惚感溢れる瞳で見下ろしている。
「シド・・・。」
切なげに吐息を漏らしている、うっすらと紅すらも引かれているのではとすら思う艶やかな唇に己の指を戯れに差し出すと、シドはその唇から赤い舌先を出してゆるゆると絡めては吸い上げていく。
「んっ、んんぅ・・・ぁ」
とろんと潤んだ瞳、内部に劣らずとも熱い口腔、徐々に激しくなっていく舌使いに、自分も既に限界が近いことを感じ取っていたバドは指を引き抜いて立ち上がり、纏っていたバスローブを払い落とし、そのままシドの身体を起こしあげて身体を反転させて上半身はベッドの上、そしてすらりと伸びる両足はベッドサイド脇に下ろす形の後背にさせると、もう残り僅か入っていない白ワインのボトルを手に取って、しなやかな形を描くシドの背中を器として全て注いでいった。
「あっ、あぁーーっ」
すっかり時間がたち冷たさは無いとは言え、元は凍り付いていたものなので体感的にはまだ冷たい液体を感じて思わず仰け反る背中に、バドは唇をつけ、誓いの全てを飲んでいきながら、解されてそして今も尚収縮を繰り返している秘部に熱き先端を宛がい、突き出されている弟の腰を強く固定して一気に突きこんでいく。
「あぁっ、あっ!あああっ、にっ、ぃさぁ・・・!」
後ろから突き入れられて無防備になる背中に溜まる白ワインを飲み干したバドの唇が、背筋から肩甲骨・・・元は白き羽根が生えていたと錯覚するほど綺麗な滑らかな素肌・・・・に、この手でその羽根を引きちぎってそしてここに堕としたという意味合いを込めて、歯を立てて落とされながら、段々と早められていくピストン。
「やぁっ、はげし、あああっ、こわ、れぅっん!」
圧し掛かってくる兄の何時もより熱く激しい動きに、シドのシーツを握りしめていた両手から腕にかけて力は見る見るうちに奪われて良き、あっという間に上半身は崩れ落ちる。
苦悶と快楽両方が入り混じる涙を流しながら、開く唇から漏れるのは果実よりも甘い嬌声と婀娜息。
心から恋しく想うその眩むような身体を思う存分に組み敷いて、愛と言う名の下に陵辱できるのは自分しか居ないのだと。
「もっ、と・・っ、壊れて魅せろ・・・!」
「ああ!」
けだものの様に弟の身体に圧し掛かりながら耳元で何事かを囁く兄の両手は、赤い涙の跡を流す胸板に宛がわれ、下肢と同じように赤く尖る突起を捻り潰すかの如く摘んでは指先で弾いて押しつぶし、荒々しく揉みしだくかの様に動き回る。
「あぁっ、んっ!あぁぁっ・・・!」
消え入りそうになる白く霞む理性、根元まで犯入されて奥の奥まで突き上げてくる熱い兄自身と自分の入り口が擦れるたびに零れ落ちる粘音。
どんなに蹂躙されても、自分にはこの人しか居ないし、この人以外愛せない。
「こわ、してっ・・・!もっと、もっと・・・っ、もっとぉっ!!」
「ああああぁっ」
首筋に這わせられる舌先に仰け反ったシドの身体を、胸に回していた両手でぐいっと上半身を持ち上げて胸板に抱き寄せていき、ベッドサイドの上に乗りかかっていた片足の膝裏に片手をまわして持ち上げると、内部を満たして擦りあげていた兄自身を更に深く呑み込んで弟はは悲鳴にも似た声をあげる。
「あ、ああっ、あっ、また・・っまた、くるっ・・・あああーーっ!」
「んぅっ!シド・・んっくぅぁっ!!」
自らの重みで最奥のスポットに先端が抉られ、兄の手によって再び固く立ち上がる自身を強弱をつけて擦りあげられて、先ほど以上の快楽の訪れに、大きく白い裸体を仰け反らせながら達していく弟に締め付けられながら、バドもまたその掌の中に濃白の液体を受け止めながら、身体を支えるその手で強くまたシドを抱きしめ、その唇に荒々しく口付けながらその内部に熱く泡立ち迸る欲情を注ぎ込んでいった。
深く深く繋がれ行く、心と身体。
傍から見ればもう二度と離れないと誓いを交わすことすら必要の無い位に満ち満ちる充足的至福感。
そんな淡くもあって甘い余韻に包まれながら、ぐったりとして意識を失ったシドをその手に支えながら、バドはゆっくりと息を荒げながら自身を引き抜いて、身体を横たえると同時、どっと押し寄せてきた疲労感にそのまま弟の上に被さるように唐突に意識を失った・・・・のが彼が最後の最後に見せた油断だった。
しょりしょり・・・・しょりしょりしょり・・・・・。
「ん・・・・?」
何やら軽やかな音が聞こえて来るのと相俟って、下腹部に何だか鋭利な違和感を覚えてバドはそれから数時間後に目が醒めた。
「シド?」
しょり・・・・。
「あ、起きちゃったのですかv」
寝ぼけ眼のままほぼ本能反射的に弟の名前を呼ぶと同時、聞こえてきた音はぴたりと止み、その違和感を覚えていた下腹部に覆いかぶさっていたシーツの中からからひょっこりと顔を見せたシドは、どこか残念そうな・・それでいてどこか黒光りすら覚える嬉しそうな笑みを見せたが、この時点ですらバドは弟の掌の中にある銀色に鋭く輝くそれに気が付かず、まだ夢現の幸せな世界から帰還していなかった。
「ちょっ、おまえどこから・・・・!」
あんなに散々可愛がって啼かせてやったのにそんなところから顔を出すなんてはしたない!と思うと同時、そうかまだ足りないのか愛い奴め・・・vと、だらしなく顔と鼻の下を緩めて、むくり・・・と上半身を起こしあげたその時、はらりとシーツが落ちた。
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
何時も弟に見せて聞かせる低いテノールボイスはどこへやら、、その風体に似合わず絹を真っ二つに裂いたといっても過言ではないほど甲高い悲鳴をあげたバドのその目
の前に曝される現実とは、哀れなほどにつるつるな自分自身の周り。
それこそ芝刈り機でも持って来たのか?と言うほどバドの茂みは、ぺんぺん草すらの面影も無いほど綺麗に刈り取られていた。
「な、ななななななんで∑;!!??」
哀れなほどにうろたえる、よくよく見た掌の中のそれが剃刀であることに気が付いた兄に、シドはにーーっこりvと擬音を浮かべるかのごとく微笑みを浮かべる。
「先ほど気持ちよくしすぎてくれたお礼ですw」
「・・・・・・・・・・・・(滝汗)」
男としてこれ以上無い程恥かしい姿にされた兄はさめざめと泣く前に、今年はもしかしたらリベンジもありなのか;と暗雲すら感じるが、だがそれは次のシドの言葉で一気に掻き消える事となる。
「それに・・・これであなたは私以外の方に行かないでしょう?」
「・・・・・・・・・・。」
リベンジもありだけど、実はこれが本音なのだと、少々恥かしげに俯いて告げる弟の姿に、持ち前の前向きさでそう解釈したバドは、とりあえずその物騒なブツをこちらへと回収してから、床にほっぽり投げたバスローブを身につけた弟を上に乗せる形でぎゅっと抱き寄せる。
「莫迦だな・・・・、俺はもうお前のものだと先刻に誓っただろ?」
「っ・・・そう、ですけど・・・・・!」
散々先ほど恥かしい事をされたちょっとしたお茶目も兼ねたのは本当だが、やはり易々と兄が予想したように愛しすぎた今だからこそに感じ入る不安が主な理由で・・・・。
「俺が信じられない?」
「そんなことありません!」
誓って言える、自分はもうシドしか見えないし、この者しか愛せない。
そんな丈を込めて告げるその言葉に、シドはきゅっと兄の首に両手を回して抱きつく・・・が。
「っ!?」
丁度自分の下半身辺りに当たるのは、硬い・・・身に覚えのありすぎるそれに思わずシドは顔を青ざめて兄の上から降りようとするが、早々にそれは阻止されてくるりと体勢をひっくり返される。
「もうとっくにお前以外じゃ勃たねぇ身体にされちまったからな。(にや)」
「っ!?ちょっ、待っ!」
弟の待ったを訴える掌が近づいてくる顔を押し返そうとするが、そんな抵抗もこの兄の前では、兎が虎に歯向かう如く・・・要するに無駄な抵抗であることを思い知らされて、いっその事その欲望の対象もうっかり手が滑った振りしてちょっとだけ・・・と思ってももう後の祭りである。
「折角こざっぱりしてくれたのだから、こっちでも楽しまなきゃな・・・・(にやり)」
「いやああああーッ!獣ーーーーーっ!!!!」
時間にしてまだ丑三つ刻を三十分まわった程度の時間。
永遠を誓った若い恋人達が、更に愛を深めていくのには充分の時間であり、彼ら二人も例外・・・以上の絶倫を持つ兄によって、文字通り寅の七つ過ぎまで啼かされることとなってしまったシドは、来年に取り交わすワインには、痺れ薬と睡眠薬を大量投与しするべきだと真剣に考えていたという。
戻ります。
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