変 還 ~盲 愛 故 愚 愛 ~
ねぇ、どうして?
どうして起きてくれないの??
ずっとアレから眠ったきりで、私の方を見てくれない貴方。
部屋にあるテーブルの上に、突っ伏したままずっと瞳を閉じている貴方。
嫌だ、嫌だ・・!!
きっとまた眠ったふりをしているんでしょう?そうでしょう??
だって貴方はいつもそうやって、私が泣きながら身体を揺さぶるまで起きようとしないんだもの。
涙を溢れさせて、お願いだから目を開けて・・・って、何度も繰り返して言った頃になって、したり顔でようやく起き上がるんだもの。
貴方の意地悪に、私は泣きながらもうやめて、こんな冗談もうやめてって言っても、貴方はただ笑うだけで。
判った判ったとだけ言って、その温かい手で私の髪の毛をかき混ぜて・・・。
その感触で私は酷く安心できた。
他愛ない冗談でも、貴方を失う事にはもう耐えられない。
だからお願い・・・、もう止めて・・・、こんな冗談もう止めて。
何でもするから・・・早く起きて?
何でも・・・する・・・から・・・。
今日もまた、シドは目覚める事の無いバドの身体に寄り添って、泣き疲れて眠りについた。
明日こそ・・・明日になればきっと兄は目覚めると、そう一縷の願いを込めて。
それを幾夜幾晩、繰り返した事か。
しかしバドは目覚めることなく、ただそこに在るだけだった。
いや、もう二度と目覚める事は無い。
何故ならば、彼は既に生きてはいなかったからだ。
それも弟の手によって、殺められて。
それはいつもの様に、夜の帳が下りてからの情事の際。
その日もシドは兄に組み敷かれ、激しく愛されていた。
『あ・・・っ!ぁああぁっ』
最奥にまでバド自身が犯入されて、シドは白い身体を仰け反らせてそれに応えていた。
薄暗い部屋の中でさえ、シドの白い肌は薄桃色に染まり、その表情さえ妖艶に暗闇に浮かび上がる。
向かい合う形で繋がった二人、だが、この日はいつもと違っていた。
『シド・・・?いいか?』
律動を開始する前に、バドは荒く息を吐く弟の髪を優しく撫でて、その呼吸が収まるのを待ちながら、確認の意を込めて聞いた。
『ん・・・、いいですよ・・・。』
そう言って、シドは兄の目の前に自分の首を改めて曝け出すと、バドの手がそちらに伸ばされる。
『・・・ッ!』
そしてそのまま弟の首を締め上げながら、バドは律動を開始する。
いつもよりキツク締め付けてくる弟の内部に酔いしれながら、バドは無意識のうちに普段よりも激しく腰を打ち付けてくる。
『はぁ・・っ!ぁぁぁ・・・!』
加減はしているとはいえ首を絞められている息苦しさと、強い快楽にシドは文字通り息も絶え絶えになって喘いでいる。
別に心中しようとしていた訳ではない。
ただ、試してみただけだ。
どちらが提案したのか、首を絞めての情交は、いつもよりも気持ちいいものらしいから。
『シド・・・ごめんな・・・。』
とりあえず一段落して、バドがシドの首から手を離すと、加減していたとはいえ、白首にはくっきりと赤い痣が付いていた。
それはまるで首輪の様に・・・。
『大丈夫ですよ・・・。』
そう言って未だぐったりと横たわりながら微笑むシドに、優しくキスを落とすバド。
そしてそのまま身体を反転させて、今度はシドが自らの上に来るようにと、再び睦み事は始められた。
『んッ・・・、あぁ・・・っ!』
自らの奉仕でそそり立った兄の先端をゆっくりと銜え込んでいくシド。
その様を下から満足そうに覗き込むバドの視線すらも快楽と感じ取る。
そこから先へ、一向に進む事のできない弟の腰に手を添えて、一気に自身を内部に突き込ませる。
『いやぁぁ・・ッ!』
突然降下させられて、兄自身を全て飲み込んだシドは、その熱さと悦楽に悲鳴を上げる。
『あ・・・っあぁ・・ん!』
『ほら・・・シド?』
腰を捕らえている手はそのままで、動けずにいるシドの代わりにバドが下から激しく突き上げていく。
『あぁ・・っん・・、あ・・・ぁああ!』
その快楽にシドはバドの胸に手を置いて、身をもたせかけるのがやっとの状態であったが、バドの片手がシドの手首を捉えて、己の首へと導いていく。
『はぁ・・あ・・・っ』
恍惚とした、半ば狂った思考の中で、シドはバドの首を締め上げていく。
『くぅ・・・!』
苦しそうな声だったが、普段聞いたことの無いような甘い声と表情に、シドの劣情はそそられていく。
内部で熱く脈打つバド自身も、シドの最奥の性感帯を深く抉っていく。
それが彼の理性を奪ってしまったのだろうか?
あまりの苦しさに兄の上げた制止の声は彼の耳には届かず、ギリギリと首を締め上げたままでシドの頭の中は真っ白になり、絶頂へと達していた。
バド自身もそのまま彼の内部へ白濁した欲望を吐き出していたが、既に手は力なくだらりと下に落ちていた。
『兄さん・・・?』
あぁ・・・、もう朝だ。
おはよう、兄さん。
今日こそはちゃんと起きて?
もう引っ掛からないから・・・そんな冗談には。
ちゃんと私を見て・・・。
私を愛しているって言って?
ねぇ・・・、ねぇ・・・!
戻ります。
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