雪と星の法則








雪 と 星 の 法 則



「なぁ・・・、どうして冬に雪が降るか知っているか?」
暖炉の中の薪が、ぱちぱちと燃え盛る部屋の中、白い窓に縁取られたガラス戸の向こうで、ビロードの様な夜の空から降り落ちる雪を何となく見ていた私にバドはそう問いかけてきた。
「?大気中の水蒸気が凍って、それが結晶として落ちてくるのでしょう?」
突然の問いに、何の気なしにそう答えた私に、彼は軽く苦笑する。
「まぁ、それはそうなんだがな・・・。」
何か変なこと言ったかな??
そう思いながら首を傾げる私に、向かいにいるバドは、軽く私の首に手を回し、優しい光りを宿す瞳の中に、私の姿を映し出す。
その仕草と視線に、私の鼓動がトクンと静かに跳ね上がる。
そんな私の様子に気づいてか気づかずか、彼は更に言葉をつなげていく。
「冬って言うのは、あらゆる生命が一時的にしろ何にしろ死ぬ季節だと捉えられているだろう?で、その季節の空の上から降る雪ってのは、同じ様に先の季節で生命を全うした星々が形を変えて、また生まれ変わる為に地上に堕ちて来るって言う説がある。」
そう言われて見て、改めて窓の外を眺めると、確かに夜空を彩るように音も無く地に落ちる雪達は、空を滑り落ちていく流れ星がそのまま大地に漂流して言っているとも取れなくも無い。
「それ・・・、何処から聞いたんですか?」
意外に・・・といっては失礼だろうか?不意に疑問に思ったので聞いてみると、彼は僅かに顔を赤らめて目を逸らしながらポツリとこう言った。
「いや・・・その・・・。」
「?」
ごにょごにょと言いずらそうに口ごもる彼。
「・・・科学的に証明する術を持たずにいた先人達は、きっとそう思っていたのだろうなぁ・・・と・・・。」
思わずぽかんとした表情になっただろう私の顔を見て、ますます彼は困った表情になってしまった。
そして一瞬後・・・、
思わず私は吹きだしてしまった。
「~~ッ!悪かったな!!」
「いや、そんな・・・、怒らないで下さいw」
兄の意外にもロマンチストな面を垣間見てしまった私は、顔を僅かに赤らめてそっぽを向いた兄の頬に手を当てて、自分の方に向かせた。
だけども、一度損ねてしまった彼の機嫌は、多分ちょっとやそっとでは直らないことは、一緒に暮らし始めてから、よーく判っていた。
「ゴメンなさい・・・、笑ってしまって・・・。」
「・・・五月蝿い・・・。」
普段の余裕綽々な雰囲気は何処へやら、まるで子供の様に拗ねているバドの首に腕をするりと回して、尖らせている唇に、自分の唇をそっと重ねる。
「・・・・。」
触れ合うだけの口付けを解くと、怒っていたはずの彼の口元は、ほんの僅かだが穏やかになっていた。
「・・・・ご機嫌、直してくださいませんか・・・?」
下から彼の顔を覗き込みながらそう言うと、バドの手が私の身体に少しずつ絡められてくる。
「・・・・お前次第だ・・・。」
珍しく照れているような低い声で、耳元で囁かれる。
「はい・・・。」
そのまま優しく抱き上げられて、臥所へと柔らかく押し倒された私は、そのまま彼に身を任せていった――。


戻ります。