聖戦が終わり、ヒルダ様の呪いもとけたと同時、戦いに散っていった神闘士達も全員復活して、万事めでたしで蘇った北の聖地アスガルド。
神闘士達はその後、聖なる巫女を守護するためにワルハラ宮に留まり新たな生活の拠点としていた。
が。
極々一部の者にとっては、これが新たな試練の始まりだと言うことを徐々に思い知る事となる・・・。
闘 う お 兄 ち ゃ ん!!
~Sweet Sweet My Brother~
「あ゛~~~・・・」
既に尻のあたりの感覚が無い。無理も無い、こんなに長く椅子に拘束されているなんて、今までの人生を振り返ってみても無かった事だ。 目の前に山積みにされた書類を改めて見て、見なきゃ良かったと溜息を吐く銀髪の青年-バド-。 「・・・・・・・・・。」 やってられるかぁああーーーっ!!と、思わず机ごとひっくり返したい衝動に駆られたが、そんな事をすれば、仕事は倍増、何よりも近衛隊隊長に発見され、副官に密告される事を想像して、無駄な抵抗はしないことにして。 ヘッドバンキングのし過ぎでもあるまいし、しくしくと首の付け根の痛みを堪えながら、半分は泣きながらもくもくと引き続き書類整理に取り掛かる。 「何だって、傭兵部隊所属の俺が、こんなデスクワークに勤しまなきゃならないんだよ・・・。」 まぁ、そう言う部隊に所属している人間にこうした仕事が回ってくると言うのは、何よりの平和の証拠なのだが、それにしたって限度はとうに越えている。
今までの人生、狩りに家事に明け暮れて、今日食うものすらままならぬ物だった。 掘っ立てたボロ小屋で、満足に隙間風を凌げないままに寒さに震えながら毎晩眠っていた。 それを比べれば、今の生活は180度違う。 一応は食うものには困らないし、衣住は言うまでも無い。 ただ言うならば、今までアウトドア派だった彼が、いきなり長い時間一室に押し込められて、書類とだけ延々と格闘するのはこれは拷問以外の何者でもない。 「こりゃ今日も残業だなぁ・・・。」 辛うじて書類に占領されていない、机の一部分にオーバーヒートした頭を冷やすために乗せているバドの耳に、日も落ちかけた朱色に染まった白い空の向こうから、居るはずも無い烏のカァーカァーと言う、切ない鳴き声が聞こえてきたような気がした。
コンコン・・・。 「おう、お帰り。」 案の定、残業になったものの思うように仕事がはかどらず、自室に引き上げてすっかり伸びきった様子でベッドに身体を投げ出していたバドは、それでも眠さを堪えて起きていた。 「まだ起きてたんですか?」 そっと控えめに扉が開くと、ひょっこり顔を出したのは、バドと瓜二つの双子の弟の近衛隊副官のシドだった。 「ん~、そりゃあ・・・。」 今までの疲れも何のその、軽く伸びをしてベッドの上に跳ね起きて、何かを催促するように両手を伸ばすと、戸惑うような表情を見せつつもシドはとことことやって来て兄のその腕の中にすっぽりと収まった。 「このご褒美が無きゃ、やってられないからな♪」 「・・・・・。また残業してきたんですか?」 「うっ・・・;」 静かながらどこか後ろめたさを感じさせるような弟の問に、バドは声を詰まらせる。 「やはり慣れませんか?」 ふと、膝の上に乗せて抱きしめていたシドの手が、バドの肩辺りにかかり身体をついと離す形になり、小首を傾げて兄の顔を見上げる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・;」 首の角度と潤む瞳と捨てられた子猫の様な表情の三拍子揃った無意識下必殺スキル発動中な弟に、兄はしばし心が遙か彼方にぶっ飛ぶ。 「・・・・いいや?」 しかしながら、兄もまたその子悪魔的誘惑を受け入れるだけのスキル-漢前スマイル-を発動し、そのほっぺたにちゅっと軽くキスをする。 「んっ///」 一瞬ピクンと身体を震わせて、顔を赤らめる弟の衣服に既に手をかけてするすると脱がせていきながら、バドはそのまま唇を耳元に持って行き、食むようにして最大奥儀を発動させるべく、取って置きの声音で囁きかける。 「愛するお前の為なら、何だって頑張れるさ。」 「・・・・/////////(真っ赤)」 初々しく顔を真っ赤にする弟を微笑ましく思いながら、心の中では狼の如く腹黒い策略を廻らせながら、今晩もまた仕事疲れをたっぷりと癒すのである・・・・。
むしろ頑張るべきなのは、この超がつくほど絶倫の兄貴を相手にした後の身体を引きずって、次の日からも重要任務を常に抱え続ける副官業務に携わる弟の方なのだが、新婚ラブラブバカップル夫婦の二人にそのようなことを言うのは野暮であろう。
とりあえず、ハードな仕事をこなす人間に必要なのは、何よりも癒しなのである。 酒でも良し、趣味でも良し、愛する者が待つ愛の巣でも良し!
まぁ何はともかく頑張れ兄貴! 働け兄貴!
貴方の弟を今宵も美味しく戴く為に―――!!!
戻ります。
|