ぐったりと雪原に放り出した身体に突き刺さるのは、心地良い死の誘い。
もう疲れたと言わんばかりに、今まで両の腕で抱えていた人物の身体を手放してそのまま重なり合うように倒れこむのは、光と闇の兇つ星の下に生れてきた双子の兄弟。
とうにシドの命は先の戦いで潰え始め、せめてもの抵抗で限りある自分の小宇宙を燃やしながらここまで運んできたが、どうやら自分にも死の翼が舞い降りてきているらしい、けれど。
「・・・お前と、・・・一緒なら・・・。」
それも悪くないと思った。
今ここで降り積もる雪の様に今までの憎しみの上に覆いかぶさっていくのは、生れたばかりの愛情。
その愛の羽に包まれながら、兄-バド-もまた、先に逝ったシドに倣いその瞳をゆっくりと閉じていく・・・。
睡 憐 双 虎
何時も心と精神はばらばらだった。
こんなにも両親に愛されているのに、こんなにも恵まれていたのに、どうしても溶け込めない自分がそこにいた。
貴方の存在を知ってからその理由は判ったけども、それでも両親を哀しませたくないからと、自分の勇気のなさを言い訳にしていた。
母に抱きしめられるたび、父に誉めそやされるたび、このままの関係を保つ事が一番良いと。
それでいて、彼等がひた隠している双子の兄の存在を私が知っていると告げてしまえば彼等はどんな顔をするだろう、と捩れて行く心の中で、ふと過ぎって行く事もあった。
募り募っていく本心を欺く迷宮に迷い込んだ私には、もう修繕は不可能だった。
元から貴方を蹴り落として生き長らえている人間が、今更何を許されて生きて行ける?
本当に欲しいものを口に出さずに、周りを嘲ってばかりいた私が今更どうして貴方を求められる?
ごめんなさい・・・。
私はあの時、貴方の為ではなく自分の為に、貴方に呼びかけた。
生れて初めて貴方に希うわがままを、貴方に聞いて欲しかった・・・。
だから、こうするしか方法はありませんでした――。
貴方が私を討ってくれることで齎される、深い睡の中に堕ちてしまいたかった――・・・。
どさり・・・と、微かに身を横たえた気配がした。
その耳元でそっと囁かれた言葉に私はこれでも悪くないなと思いました――・・・。
どうせなら・・・、
二人一緒に微睡みましょう・・・・・・・・。
醒めた世界で、今度こそ共に生きれるのならば――・・・・・。
戻ります。
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