新しい一日が始まる希望に満ちた朝陽が徐々に世界を照らしていく時間に呼び出された童磨は、内心ドキドキしながら彼を待っていた。
昨夜日付が変わってすぐに恋人からかかってきた電話だ。話があるから来てほしいなんて、何を差し置いてでも行くに決まっている。
(猗窩座殿まだかなぁ)
呼び出された理由なんて別れ話以外何だって良かった。
鬼として生きたで100年以上は顔見知り以上同僚未満の関係だった猗窩座と人としてこの世に生れ落ちて15年、神が手を抜いたのか何だか知らないが今の自分は女として彼と再会した。
しかし変なところで天然だった猗窩座は童磨のことを小学5年生まで前世と同じ男だと思い込んでいた。
夏の水泳の授業でスクール水着に着替えた己を見て、まつ毛に縁どられたただでさえ大きな瞳が零れ落ちそうなほど見開かれていたのを童磨は覚えている。『なん、おま、え? おんな? え? え!?』と可哀想なほどうろたえていたので現実を教えてあげようと猗窩座の手を取り又坐に導こうとしたその瞬間、彼の脳天から爆発音が聞こえ猛煙が見えた…ような気がした。
その直後ばったりとぶっ倒れた猗窩座は三日三晩目を醒まさなかったが、思えばこれが自分たちの転機だった。
死んだ後の世界で親友になろうと思っていた相手が異性なら、もっと親密な関係になりやすい。
男女間でも親友関係は確かに成立するが、バランスが取りづらいのも確かである。もしお互いに親友同士のまま恋人が出来たりしたら双方共にそちらを優先しなければならないのがどうしても童磨は嫌だった。
感情を覚え始めた直後に再会した猗窩座に対してインプリンティングが働いているのかもしれない。だけどそれならそれで好都合だと思うほど、童磨にとって猗窩座は様々な初めての感情を与えてくれた、紛れもなく大切な人なのだ。
それこそ鬼として生きてきた百十数年の間で行ってきた、子供の恋愛ごっこより先に進めなかった関係を彼と結ぶこともやぶさかではないほどに。
「あ、猗窩座殿!」
ほんのりと頬が熱くなったその時、教室の扉がガラガラと音を立てて開かれる。はじかれるように立ち上がるとそこには彼女の想い人が汗だくのまま入ってきた。
「すまん、待たせたか?」
「ぜーんぜん♪猗窩座殿こそ急いできたの?」
「あ、ああ…まあな」
そんなに汗をかいてまで急いで来るなんて、ホント何の話なんだろう? でもきっと俺にとってはいい話に違いないとワクワクしながら、ハンカチを取り出し汗を拭こうとする童磨の白魚のような手が拳ダコが浮くごつりとした手によって包まれた。
「あ、」
来る、と童磨は直感した。
今の関係からより進める言葉が彼から放たれると感じた童磨は、じっと先を促すように猗窩座を見上げる。
「どうま…っ」
切羽詰まった声で名前を呼ばれ、その直後に猗窩座から飛び出た言葉は…。
「え…?」
白橡の髪と花のかんばせを持つ美少女に、鳩が豆鉄砲を食ったような表情にさせるには十分すぎるほどの破壊力で。
「……えー…っと…?」
ごめん、もう一回言ってくれないかな?なんていうのは目の前にいる恋人の白目を剥いた表情から察するに余りあるほどの、明らかに戸惑いと混乱を覚えているそれであり。
(何でこうなった!!)
自分たちはもう鬼でもなく序列も関係ないはずなのに、猗窩座の心の声がはっきりと聞こえたような気がした。
朝採り 聞きなし 君とキス
~待ちわびた少女dの衝動~
氷雨童磨。都内の中学校に通うごく普通の15歳。
白橡の髪と虹色の瞳を持ち、浮世離れした外見から高嶺の花的存在だと思われがちだが、当人はいたって親しみやすい性格をしているので、男女問わず人気がある。
困ったことがあれば親身に相談に乗り、決して相手を否定しない。よく頑張ったね、偉いねと声を掛けられて頭を撫でられるだけでまるで極楽に行けた気持ちになれるということで、彼女の元には引きも切らず人が絶えない。
(うーん…今の俺は別に教祖じゃないんだけど…)
今日も今日とてクラスメイトの愚痴を聞きながらうんうん頷く童磨はふとそんなことを考える。
生まれ変わって感情を覚えてから15年、万世極楽教があったのも過去の話で今の彼女は一般家庭に生まれついている。それでも天性の聞き上手は性別が変わっても失われることはなかった。
(ま、持って生まれ変わっちゃったなら仕方がないか。それにしても昔も今も話を聞いて欲しい人って一定数いるんだなぁ)
かつて感情が分からなかった頃、悲しければ泣き、嬉しければ笑えばどうにかなった。怒った時に吠えるという感情の表し方も知っていたが、それは童磨の性には合わなかったので滅多にそれが表に出ることはなく。
だが感情を多少なりとも伴った今、やはり人は黙って共感して頷いて聞いているだけで勝手にスッキリできる生き物らしい。その際芽生えた感情故に『そこはああした方がいいんじゃないのかな?』『えー、それってそうなって当然じゃないの?』という思いも頭に過るため、故意に感情を脇に置くことも学習した。
せっかく得られた感情も、天性の聞き上手ということが災いして出す機会があまりない。それでも感情を持たなければいいと彼女は思ったことはない。
「おい、童磨」
「あっ!」
ガラガラと教室のドアが開いて聞こえてきた少し甲高い金玉の声に童磨はパッと嬉しそうな顔になる。それを見たクラスメイトはうっかり話し過ぎていたことに気づき、童磨に謝礼替わりのロリポップを二つ取り出して与えると謝罪の言葉とと共にそそくさと教室から出て行った。
「猗窩座殿?」
レモン味とマーブル味のロリポップを手にしてやってきた猗窩座に差し出す。どっちがいい?と尋ねるとお前が貰ったのだからお前が選べと言われたので、猗窩座の瞳に近いレモン味を選びフィルムを外していく。
「お前、まだ人生相談されてんのか?」
マーブル味のロリポップをすでに口の中に含みながら猗窩座が尋ねると、童磨はあははと困ったように笑う。
「うん、なんかね」
別に困っている人の話を聞くのは慣れてるからいいんだけどさぁとぼやく童磨に、あっという間にロリポップをかみ砕いて胃に押し込めた猗窩座はむすっとした表情で彼女に向き合う。
「お前が何も言わず受け入れてくれるのをいいことに甘えているのではないか?」
…かつての俺みたいにという小さく呟かれた言葉が耳に届いた童磨は、唇をすぼめてロリポップを舐めるのを一時中断した。
三か月前、猗窩座から親友よりも恋人になってほしいと告白されて付き合い始めた童磨だが、先述した通り二人には遥か昔に人ならざる者として百数十年以上生きた記憶がある。
その百数十年以上の中で、猗窩座は童磨にこのような感情を持つどころか逆に蛇蝎の如く忌み嫌っていた。
童磨としては心の底から彼を始め他の上弦の鬼と仲良くしたかったのだが、外見や中身が人からも鬼からも規格外であったため、元人である鬼からも彼は忌避され続けていた。
更に言えば猗窩座は童磨に対し複雑な感情を無意識下で持ち得ていた。
『自分を気にかけてくれた強い者は尽く置いて逝く』という警鐘は正しく猗窩座に伝わることはついぞなく、童磨を前にするたび苛立ちささくれだった彼は一方的に手を上げ続けていた。
だが童磨はその行動に対し何も意趣返しはしてこずに、俺は何も気にしないからと序列を重んじる上弦の壱にカラカラ笑いながら言ってのけた。
その態度がまた猗窩座の怒りに油を注ぐことになるのだが、それが強者の余裕でもなんでもなく、感情の薄い彼が外から仕入れた情報を精査した上での行動であったということに彼は死んでから気付かされた。
地獄に堕ちてそのフィルターが剥がれ落ちたとき、猗窩座は童磨に対して行ってきた仕打ちを心の底から後悔した。
自分が早くに弱さを認めていれば。
警鐘を正しく受け取っていれば。
少なくとも”毒”でやられる前に何かしらの手立ては打てたはずだと。
そう懺悔する猗窩座に、首だけになって彼の元に堕ちてきた童磨はニコリと笑ってこう言ったのだ。
『「ありがとう、猗窩座殿」』
最後に地獄で耳にした童磨の声と今の彼女の声が重なって聞こえた猗窩座は反射的に振り返る。
『「そんな風に思ってくれていたなんて知らなかったから嬉しいよ」』
わざとに地獄でかけた言葉をなぞれば、思わずきゅっと唇を噛み締めた猗窩座を見つめた童磨はその一点を凝視する。
(…ああ、キス、したいなぁ)
前世で百数十年以上、今生では10年以上、猗窩座が自分への蟠りを解いてこの関係に落ち着いたのだが何も手出しをしてこない。
確かに今の自分たちの年齢を考えれば丁度いい距離感なのかもしれない。しかし中身はお互い百数十年以上…地獄の使役も含めればもっと年月は経過しているのだ。
加えて猗窩座は過去ストイックな鬼であったと童磨は記憶している。あの方の名を受け方々を飛び回り強者との戦いに明け暮れ、空いた時間はひたすら鍛錬を重ね続けており、いい稀血があるから一緒に呑もうと誘ってもけんもほろろに断られていたし、会話の糸口をつかもうと女性経験の有無を聞いたところそんなことにうつつを抜かす暇があるかとバッサリ切り捨てられた。
じゃあ自分からモーションをかけてもいいのだが、そうは問屋が卸さない。周囲からかなり誤解されていたが、女を喰うというのは文字通り栄養価の高い食糧としてであり、寝所を共にしあれやそれの食う意味では全く経験がない。
そう言った経験をしてみようと努力を重ねては見たものの、体の関係までは発展しなかった。というよりもできなかったといった方が正しい。
理由は簡単で女に対して勃たなかったのだ。
しかし一方で”救済”と称してなら男女共に関係を結ぶことができた。根底に”哀れな人々を救わなければならない”という使命に支えられ、与えられる興奮に身を投じ、与えてほしいと希われて興奮を与えることもやぶさかではなかった。
しかし、恋愛に身を持ち崩す様を知りたいという未知なる経験をするために、食糧でしかない女に興奮して魔羅を勃たせることは興味云々ではどうしようもできなかったのだ。
当時脳内テレパスで一方的に猗窩座に相談を送っていたがあったが、ことごとく無視をされ最終的に鬼の始祖から通信制限が入ったことを童磨は思い返す。
つまり、関係を勧めたいと思っていても両者ともに長くは生きていたが色事に関してはとんと初心者と変わらないのである。
なので周囲にいるクラスメイトや比較的よく話す知人にその手の話を聞くのもアリかと思ったが、変な噂が立ったり下手に目立ってしまうのも面倒くさいことになるのは目に見えている。
それに猗窩座とは公認の関係になってはいるものの、彼を狙う者はまだまだたくさんいるのだ。そんな外野にキスの一つもしていないなんて知られてしまえば、いつ横やりが入ってくるのかわかったものではない。
何よりこれは自分と猗窩座の問題なのだ。時間は限られてはいるものの弱冠15歳という年齢ならばまだまだ猶予はあるし、猗窩座と何の気兼ねもなく話すことができる。だから二人で話し合って少しずつ、少しずつ関係を発展させて行けたらいいなと思った童磨は、そっと猗窩座の指先を己の手でからめとった。
一瞬身体を固くした猗窩座がこちらを見る。うろたえちゃって可愛いなぁという気持ちのままニコーッと笑うと顔を赤くしてそっぽを向いてしまうが、そのまま手を繋いでくれる猗窩座の気持ちがくすぐったい。
なので猗窩座がまさかネットに転がる情報を鵜呑みにしてそのまま伝えてくるなんてことは思ってもみなかった童磨にとって、この朝の奇行ともいえる行動は15年生きてきた中で間違いなくベスト2に入る衝撃だと後に語る(ちなみに1位は三日三晩寝込んだアレ)。
「ごめん猗窩座殿、あの、なんて…?」
聞いちゃいけないことなのは分かっているが、もしかしたら聞き間違いかもしれないと、一縷の望みを託して童磨は何でもないことのように尋ねる。
しかしそんな気遣いも今の猗窩座にとっては痛すぎる現実なのだろう。顔色は鬼の頃よりも蒼白であり、一瞬目を離したらその隙に自分で自分の頸を切ってしまいそうなほど追い詰められている。
ということはここは笑い飛ばした方がいいのか、それとも気持ちを汲んだ方がいいのか。
(でもこれは笑えないなぁ…)
言葉の真意はともかく、昨夜の電話と言いたった今告げられた声と言い、冗談には聞こえない。
ということは気持ちを汲むのが正解だと判断した童磨は、かの戦国武将が詠んだ句に隠された猗窩座の真意を探っていく。
(ホトトKiss…ホトトギス…?)
「ああ、そうか!」
合点が言った童磨は声を上げ、つまりはホトトギスとホトトKISSをかけた猗窩座殿からのお誘いというわけだな!と推理した真意を口にすると、ますます猗窩座は死にそうな顔をして奇声を上げる。
(ふふ、面白いなぁ猗窩座殿…ホトトギスとホトトKissをかけあわせたお誘いなんて…って)
ほほえましく思っていたのもつかの間、あることに気づいてしまった童磨の顔が一気に熱を持ち始める。
(え、えー!? ま、まさか猗窩座殿に限ってそれは…)
ない、とは言い切れない。だって猗窩座も自分も今は人間なのだ。鬼の頃は不要だった三大欲求を欲し、そういったことに興味バリバリの思春期Boy&Girlだ。
「しかし猗窩座殿…、いくら何でもそれはまだ早すぎると思うのだが…」
「……は?」
さっきまでのリアクションはどこへやら、何を言っているのかわからないと言わんばかりに真顔になった猗窩座が童磨を正面から見つめている。
その視線を受けてますますドキドキと高鳴る胸を自覚しながら、顔を赤らめた童磨は消え入るような声でこう言った。
「だって…、俺たちキスもまだだろう? そ、それを…蕃登(ほと)とキスなんて…」
恋愛関係の行きつく先は肉体関係だし最終的目標はそこだ。猗窩座が望むなら童磨はその通りにさせてやりたかった。
だけど猗窩座とは一から恋人としての関係を育みたい。”救済”としての肉体関係ではなく、きちんと恋愛の手順を踏んだその先を猗窩座と一緒に迎えたい。
(でも俺、猗窩座殿に求められたら拒めないし拒みたくない)
猗窩座は何を思っているのかと、おずおずと見上げると再び顔面蒼白に陥った彼がそこにいた。
「ちが…っ!違うんだどうま! 俺はお前の身体が目当てじゃなくてだな!! 確かにお前のことはいずれ抱きたいと思っている! だがその前に手順というものがあるだろう!? だからせめてキ、キスだけでも、と思って俺は…」
思いっきり感情的になって言葉を紡ぐ猗窩座。前世では見たことのない初めての表情だ。真剣だけどもあたふたと、言葉が追い付かないけれどそれすら構わず一生懸命想いを伝える彼を見て、誰が嘘だなんて思えるだろう。
先程まで抱いていたざわりとした不安が一気にほわりとした温かな気持ちに変わっていくのが分かる。
「うん、うん分かってるよ猗窩座殿」
すい、と両腕を伸ばしそのままぎゅっと抱き寄せた。肩口に猗窩座の顔を乗せ、彼の胸板に自身の旨を押し付ける形になるがそれはワザとだった。
顔だけじゃなくて猗窩座の体温が一気に上がったのを感じ、ますますホワリとした気持ちが募っていく。
「俺もその…、”昔”にキスはしたこと、なくてなぁ…」
猗窩座の顔が見たくて両腕を緩めると、すかさず顔があげられる。驚いたように見開かれた向日葵色の瞳には、自分でも見たことがないほど照れている恋する乙女が映っていた。
「”昔”はともかく…、今の猗窩座殿としたいなぁって、ここだけの話、ずっと思ってはいたんだけど…。”昔”と勝手が違うからどうしていいかわからなくて…」
??…あと一歩踏み出したかったのはこちらも同じだったんだよ。
そう紡いだの同時、急に猗窩座の顔が近づいたかと思うと、そのまま童磨の唇はかさついた唇によって塞がれていた。
「んっ…!」
ごちんという感覚が口元から響く。勢いあまって歯同士がぶつかってしまった音だが、そんなことは些末な出来事で。
瞳を閉じることすら忘れた虹色の網膜に映るのは、余裕のない表情でぎゅっと目を閉じる猗窩座の顔だ。
(…ふわふわする)
不器用ながらも心地のいい、猗窩座からの初めてのキスと自分に向けられる気持ち。
”救済”の最中に救いと称して口を吸われたことはあったが、それとは全く違う。むしろそんなものと比べること自体おこがましいほどに、猗窩座から与えられるキスは心地よかった。
上手いのか下手なのかは童磨にとんと分からなかったが、心地よくて、ふわふわで、もっと、もっと欲しくなる。ただ唇同士が触れ合っているだけなのに。
両頬に両手を添えながらゆっくりとそれに応じるために、唇の表面をすり合わせていく。
互いに夢中になりどちらからともなく鼻にかかった吐息が漏れていくのが分かった。
「ん、は、ふ…っ」
「ふ、は、ぁ…」
息を継ぐ勝手がわからず名残惜しい気持ちを残しながら一度唇を離す。もう猗窩座の顔には”やってしまった感”は見受けられず、ただただ童磨を向日葵色の瞳に映している。
「気持ちよかった…」
「俺も…」
正直な感想を述べれば、打てば響く答えが返ってくる。また心に新たなほわほわとした温かなものが宿るのを童磨は感じていた。
「こんなことなら、変に小細工せずにお前に伝えればよかった」
「ふふっ、流石の俺もビックリしたよ」
本当に心からそう思う。でもそんなところも猗窩座らしく見ていて飽きないし好ましく思うのもまた事実で。
「ああああああそれはもう忘れてくれというか忘れろ忘れさせてやる」
「ははっ、握り拳を作りながら言うの止めてくれないかな?」
物騒なポーズを取られても”昔”とは全く違った空気感の中で行われる他愛もない会話とじゃれあい。
今朝、そこに新たにキスをするという習慣が確かに二人の間に芽生えた。
「ねえ猗窩座殿」
「ん?」
ほんの少し体を寄せる。キスだけじゃなくてもっとピタリと猗窩座に寄り添いたいという思いからだ。
「…もう一回、今度は俺からしていい?」
「いいぞ、来い」
軽く両腕を広げた猗窩座の唇に宣言通りに童磨から唇を重ねていく。
自分からしたことなんて今朝この時が初めてだ。それも心からしたいと思った相手ができて実行するなんてことは。
(猗窩座殿、猗窩座殿)
ちゃんとできているかな? 猗窩座殿は喜んでくれているかな? 恋愛ごっこがもう少しうまくできていればきっと満足するキスが出来たのにな。
「んっ…!」
不意に彼女の華奢な背中に猗窩座の両腕が回される。タイミング的に心を読まれたのかと思いピクリと体を震わせたが、このまま続行していいのだという了承と受け取った童磨は、やはり息が続かなくなるまで唇を重ねていた。
「…ふ、ぁ…は、ん」
「…どうま」
いつの間にか童磨の身体は猗窩座の膝に乗り上げていた。こんなにも今の彼(女)は柔らかく華奢だったことに否が応にも気づかされる。
「どう、だった?」
はふ、と息を吐きながら元々垂れがちの大きな瞳を潤ませ訊ねて来る童磨に、猗窩座はニコリと笑みを浮かべる。
「最高以外に何があるんだ?」
まるで夏の空のようなその笑顔と共に紡がれた言葉に、童磨もニコーッと笑い、そしてまたどちらからともなく唇を重ねていた。
猗窩座バージョンへ
こちらのツイートを拝見して降りてきたネタ。
頭の悪いギャグにするつもりだったのに、気付けば甘ラブちゅっちゅな猗窩童♀になりました\(^0^)/マジで何でと思いました。
どまさんの苗字は”万世”や”万”が一般的(?)ですが、個人的に色々考えて氷雨に落ち着きました。
ちなみに第一候補は七氷(ななぎょう)でした。
|