※98話・99話の台詞パロ
前ページの世界軸とは微妙に展開が違う並行世界として受け止めて下さい。






「猗窩座…」
バラエティ番組の収録を終え、移動中の車の運転席から重厚感のある声が響く。
「お前は…度が過ぎる…」
筋肉質の体つきに黒いスーツを身に纏うこの男は黒死牟と言って、彼らのボディガード兼マネージャーだった。
「…」
そう言われてなにも返せる言葉はない。その代わり彼へ返事を返したのは童磨だった。
「よいよい黒死牟殿、俺は何も気にしていない」
笑いながら答える童磨に黒死牟はやはり威圧感のあるバリトンで言葉を紡ぐ。
「お前のために言っているのではない…。お前たちのスキャンダル…、ひいては無惨様が立てているお前たちの結婚プロジェクトの破綻を恐れているのだ」
「あ…、なるほどね…」
確かに黒死牟の言う通りだ。自分達のデビューの経緯や目的はどうであれ、ここまでの人気になってしまったなら、自分達の結婚はもはや一代プロジェクトも同然である。
「猗窩座よ…、気に喰わぬのなら、揺るがない地位を築くことだ」
「いや、待ってくれ黒死牟殿。俺も猗窩座殿とスキンシップを取りたかった気持ちがある。加えて俺たちの関係は世間の認知は真逆にあるのだから、こうでもしないと潰されてしまう。そこは分かってくれまいか?」
必死さが垣間見える童磨の言葉に猗窩座は人知れず唇を噛む。ここまで童磨に甘えていた自分への苛立ちとどこかでこの世界を甘く見ていたという現実を容赦なく突き付けられる。童磨と共に居たいのなら、それ相応の覚悟をする必要が今一度あるのだと、黒死牟の言を通じた無惨からの発破をしかと受け止める決意を固める。
「猗窩座…」
鋭く己の名を呼ぶ黒死牟の声に童磨の言葉は遮られる。
「私の…言いたいことは…分かったか…?」
「わかった…

俺たちは頂点を目指して、必ず童磨を幸せにする」


あかざどの…と童磨の掠れたような声と同時に目的地へとたどり着く。
着いたと同時に猗窩座は扉を空け、外に出る直前に黒死牟の方へと振り返り今一度宣言する。

「そうか…、励む…ことだ…」

童磨が降りたと同時に、黒死牟の車は走り去っていく。いつもは『さよなら、黒死牟殿、さよなら!』と挨拶をする童磨は呆けたようにその後ろ姿を見守るだけだった。

「…なんだか…、俺は会話に入りそびれた上に大層な殺し文句を言われたような気がするが、気のせいだよな猗窩座殿」
「っ…」
そう言った瞬間、猗窩座は耳まで真っ赤になるのを冷ますようにダッシュで童磨の元から逃げるように走っていく。

「あっ! 猗窩座殿!話してる途中なのに!!」
そう言いながら童磨もまた、顔に集まっていく火照りを冷ます余裕もないまま、愛してやまない相棒の後を追いかけていくのだった。



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というわけで、アップしたのが2022年1月23日だったので、壱弐参が揃い踏みの原作のあのシーンのパロを書いてみました!
これがしぼ殿初登場とか申し訳なさすぎる件\(^0^)/

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