22年2月2日2割引き22時22分22秒の出来事


「ただいまー」
仕事が終わって帰宅したのは２２時を１/４ほど回ってのことだった。すでに夜も遅いため近隣住民に迷惑にならない程度のトーンでマンションのドアを開けば、ルームソックスを履いた控えめなパタパタという足音を立てて同棲相手がやってくる。
「お帰り、猗窩座殿♪　今日もお疲れ様♡」
「おう、お前もな、童磨」
帰宅したばかりなので、唇はまだお預けで。俺はおおよそ半日ぶりに味わう伴侶の頬にただいまのキスを送る。
そうするとくすぐったそうにしながらも童磨もまたお帰りのキスを俺の額に寄越してくれる。
身長の差は８㎝俺の方が低い。だがそれを若干悔しく思う時期は過ぎ去った。今はこちらが低いことを逆手にとって愛しい童磨とのスキンシップに役立てている。この額のお帰りのキスもその一環だ。
「あ、そういえば……」
「ん？」
コートを脱いでレールハンガーにかけ、廊下を渡り、暖房の効いたリビングへたどり着くと、ふと戦利品があることを思い出した。
「これ、安くなってきたから買ってきた」
「えー、なになに？」
カバンの中から取り出したのは、誰もが知っている有名なパンのメーカーが出しているイチゴ味のエクレアだった。最近コンビニスイーツ巡りにお互いハマっている俺たちからすれば、今の時期はどのコンビニもまさに百花繚乱状態だ。”昔”と違って今の世の中はこんなにも美味い物があふれているんだなと感激したのも懐かしい。ちなみに一番美味いのは童磨が作る料理と童磨本人だ。異論は認めない。
話は逸れたが、このエクレアはコンビニのものではなく通り道の某スーパーで買ってきたものだ。賞味期限が今日までなのと２割引きになっていたのが購入の決め手だった。
「わっ！　コレ美味しいんだよねぇ」
案の定、甘いものも大好きな童磨が顔をほころばせる。本当にコイツは可愛い。これだけで買ってきた甲斐があったというものだ。
「あ、でもこれ…」
冷やして明日食べよう♪と浮かれていたのも束の間、賞味期限の部分を見て少し顔を曇らせる。
「今日までだね…」
「そうだな、だから二割引きだったんだ」
「そうかぁ…、でももう夜も遅いからなぁ…、でも猗窩座殿がせっかく買ってきてくれたんだし…」
ぐらぐらと葛藤に揺れ動いているのが見て取れる、夜遅くに食べてしまう罪悪感と、俺が買ってきたから美味しいうちに食べたいという食欲と愛情に悩む童磨を見て俺はふふ、と笑う。
　

なあ、気づいたか？
この賞味期限と割引の数字。
俺とお前がかつて座していた数字がものの見事に並んでる。
だからこそこれを買ってきたことに。
　
　
我ながら単純だなという思いと共に笑った俺に、何故笑うんだい？　と首を傾げる童磨に、いやいや何でもないと俺は片手を振る。
「俺も今日はなんだか腹の減りが凄くてな…。どうせなら半分ずつ食べないか？」
「あ！　そうだね！　でもって残りの一つはまた明日半分ずつ食べるってことで♪」
俺の提案に嬉し気な顔で乗りかかってくれるコイツは、本当に可愛くて可愛くてたまらない。
ああでも折角だから…と俺はチラッと、壁にかかっている時計を見る。
時間は２２時２０分を少し過ぎた頃で、秒針はゆっくりと回っていく。
　
…タイミングもバッチリだな。
　
「なあ、ちょっと食うの待ってくれないか？」
「んん？　別にいいけども…」
袋から取り出したエクレアを均等に半分に割って差し出してきた童磨が俺の提案に不思議そうな顔をしながらも了承してくれた。
すかさず俺はエクレアを受け取り、隣り合ってソファに座る童磨の唇にそっとキスをする。
「んっ…」
ちゅ、ちゅ、とフレンチキスを交わしながら、俺はもう一度時計を見つめる。
　
２２時２１分２２秒
「ん、んぅ…♡」
　ちゅく、と童磨の唇を軽く舐める。

…３０秒
「んぁ…ぁ…」
薄く開いた童磨の唇の中に、軽く舌を差し入れて。

…４５秒
「ふぁ♡　ぁっ、…んっ」
ちょん、ちょんと舌先を絡め合って表面を戯れにすり合わせて。

…２２時２２分…
「はふ…♡」

そっと唇を離して改めて童磨を見つめれば、すっかり甘く蕩けた表情が見える。
「も、いいの？」
「ああ、”丁度いい頃合い”だからな」
ニヤリと笑って告げた俺に、えー、なにそれーと少し潤んだ目で唇を尖らせる童磨の口元に、そっとエクレアを押し付ける。
「むぐ…ん、おいひぃ…♡」
「それは何よりだ」
反射的に差し出されたエクレアにぱくつく童磨の背後の時計が示すのは２２時２２分２２秒。
それを確認した俺はひっそりと密かな甘い充足感を覚えつつ、お返しと差し出された恋人の手ごと食べる勢いで、一気にエクレアにぱくついたのだった。



参考画像



















































元鬼二人が鬼にちなんだスイーツを食べる話

「そういえば今日は節分なんだよねえ」
二月三日の昼下がりのこと。
朝の七時から夜の十一時までが営業時間だったことに由来する全国展開している誰もが知っているコンビニのスイーツコーナーにて、白橡の髪を持つ穏やかな雰囲気の青年が呟いた。
「ああ、そうだったな」
その青年の隣に立つブーゲンビリア色の髪を持つがっしりとした体躯の青年も感慨深そうに呟く。
「俺たちからしてみれば、何の意味があるのっていう行事だったよなぁ」
「確かになぁ、豆と柊じゃあ鬼は追い払えないのは立証されているしな」
「だよねぇ」
周りからすれば意味不明だが当たり前のように会話は成立している。それもそのはず、この青年二人は昔、鬼と呼ばれる存在であり、なおかつその記憶も有していた。
加えて白橡色の青年-童磨-は、鬼の始祖が結成した十二鬼月と呼ばれる組織に置いてナンバー2の存在であり、ブーゲンビリア色の髪をした青年-猗窩座-はそのすぐ下のナンバー3という立ち位置であった。
”昔”はその数字を廻ってのいざこざもあり、猗窩座が一方的に童磨を忌避していたため決して良好とは言えなかった二人の関係だったが、今は微塵もそんなことはない。
かいつまんで説明すれば、二人は共に鬼を狩る組織”鬼殺隊”の隊士と交戦し敗北。その後地獄へと向かう途中で、猗窩座にかけられていた”呪い”は解呪され、晴れて首だけになって堕ちてきた童磨と初めて分かり合い、親友になったといういきさつがあった。そこから現在に転生し約束通りに再会、親友だけでは物足りなくなった猗窩座が恋人へと関係を発展させることを望み、今の二人があるというわけだ。
とりわけ猗窩座は、二という数字は童磨を結び付けた聖数だと思っている。親友から始め、恋仲になり、今は共に歩んでいきたいと思える永遠のパートナーである童磨を彷彿とさせる如月の季節は、寒いながらも心がホワホワするそんな時期でもある。
なのでその理屈でいえば、二月三日は節分であると同時に自分たちの日であると猗窩座はそう信じている。
ちなみに毎月訪れる二十三日をアニバーサリーとしては流石に扱ってはいない。最もその理由が『俺と童磨の邪魔をする無粋な数字が目障りだ』という、どこまでも童磨にべた惚れであるが故に起因するものではあるが。ただし物事には例外があり、語呂合わせで”良い”と読める四月と十一月の二十三日は、『いい童磨と俺の日だ』ということで思い切り浮かれながら童磨を様々な角度から愛する猗窩座が見ることができるという。

閑話休題。

「ね、折角だから買っていこうよ」
店内に期間限定で設けられた節分にちなんだスイーツコーナーはどれも美味しそうだと童磨は思う。”昔”は栄養価があるのと美味しいからという理由で女性を好んで食べていた名残だろうか、美味しいものに目がない上、料理にこだわる一面もある。もちろん言っておくが人として生まれ落ちた今は食人衝動など微塵もない。
「そうだな。何にするんだ？」
「うーん…どれもこれも美味しそうだけどなぁ。猗窩座殿は？」
顎に指をあててむぅ、と悩む顔は年齢よりもずっとあどけなくて可愛らしいものだと、猗窩座はいつもそう思う。
「俺はお前が選んだのとは別のを選ぶ」
「えーっ！？」
猗窩座の答えに思わず甲高い声を上げてしまい、まばらにいた店内の客の注目を集めてしまう。なにそれ、俺と一緒の物を選びたくないってこと？と思わず唇を尖らせるが、そんな童磨を見て早とちりをするな、と猗窩座の指がつん、と頬に触れた。
「お前と一緒の物が嫌だってんじゃないぞ。俺とお前が別々のものを選べたら、その分シェアできるだろう？」
「あっ…！」
そうか、何も一人で全部食べることはないのだと童磨は我に返る。確かにここに並んでいるスイーツは一人で食べるには少しばかり量が多い作りになっている。
「そうか…そうだよね、さすがだね、猗窩座殿！」
「褒めても何も出ないぞ…。というか俺も言葉足らずだったな、すまん」
ん゛んっと照れたように咳ばらいをしながらも、童磨の心に若干の斑を与えてしまったことは素直に謝る。不必要に彼を忌避し、痛めつけてしまった分、何度だって言葉で伝えられることは全部伝えるのだ。
「ううん、俺も勘違いしちゃってごめんね」
そう言って謝る童磨に本当にこいつは…と、ホワホワとキュンキュンが甘さを纏って猗窩座の心に来襲する。

「本当にお前は…」
「え、なぁに？」

そんな心境を知ってか知らずか、ニカーッと惜しみない笑顔を浮かべながら、あ、俺これがいいと、目当てのものを見つけて童磨が手に取ったのは恵方巻を模したロールケーキだった。
「…何でもない」
内心で”帰ってからのお楽しみってやつだ”と唱えながら、猗窩座はその隣にある鬼の金棒がモチーフになっているクッキーサンドを手に取る。
「わー、こっちも美味しそうだねぇ」
さっき泣いた烏がもう笑うかのようにコロコロ変わる表情も愛おしくて仕方がない。
「じゃあそれ寄越せ。ここは俺が持つ」
「えー！？　いいよいいよ、自分のものは自分で買うし」
「お前、節分の料理は張り切って作るよー！っていっていっぱい色々買ってただろうが。せめてここは俺に持たせろ」
「ぅ…、じゃあ、お願い、します…」
「任せろ！」
俄然張り切りながらレジへと勇んで歩き出す猗窩座に、童磨もまたホワホワとした気持ちが止まらないでいる。

(ああ、大好きだなぁ)

これ以上に無いほど大切にされているのが伝わってくる。”昔”にされた仕打ちなんて全然気にしていないのに、こうやって精一杯の愛情で労わってくれる猗窩座にもっともっと気持ちを伝えたくなる。

(俺、猗窩座殿に出会えて、本当に良かったなぁ)

それは”昔”を含む、地獄での邂逅、今に至るまでを指す。
そう自覚した瞬間、片時たりとも離れがたくなった童磨は、レジに向かう猗窩座に追いつき、その隣に改めてピッタリと並び立ったのだった。

余談だが店内にいたまばらな客たちはそんな二人のやり取りを目にし、色んな意味で甘すぎてたまらないと言わんばかりに、ピザや肉まん、スルメイカなどを山ほど買って帰って行き、店の売り上げに貢献したという。

***

さて、家に戻ってきた二人は、買ってきた恵方巻ロールと金棒クッキーサンドをローテーブルの上に並べてさっそく食べてみることにした。
恵方巻ロールはその名の通り巻き寿司に見立てたロールケーキなので、生地の部分はココア色だが、特にココア味はしなかった。
白米に見立てた生クリームが、カニカマとキュウリを模したイチゴジャムとキウイジャムにピッタリマッチして中々美味しい。フルーツもそれなりに入っている部分もポイントが高い。
「えー、これかなり美味しい！」
「ホントだな。この美味しさでこの値段は逆の意味で詐欺だな」
「ははっ、本当だよねぇ♪」
まくまくと食べながら思い思いに感想を言い合う二人。分け合って食べる分には少し物足りない量ではあるが、まだ金棒チョコクッキーも残っているし、何より大好きな相手と共に感想をシェアしあいながら食べることで、頭のてっぺんからつま先まで十分な充足感に満たされつつあった。
麦茶を飲みながら一度甘さをリセットし、今度は金棒モチーフのクッキーサンドを手に取った。
「今思ったんだけどさ…」
「ん？」
「こんな金棒持った鬼、”昔”も地獄でもいなかったよね」
「…確かにな。まあ俺らの知る限りでの範囲かもしれないし、もしかしたら金棒を武器にしている鬼もいたのかもしれないぞ」
「うーん…そうかもねぇ」
何となく思ったことを口にすればきちんと話を聞いてくれる。何気ないそんなやり取りがとてもとても大切で尊いと心から感じながら、二人は金棒クッキーサンドを口にする。
「わっ…、チョコ、意外に甘くないところが美味しい…！」
「生クリームが中に入っているからな。丁度いい塩梅だ」
「アーモンドの大きさもちょうどいいし、ザクザクしてて美味しい～♡」
口元に手を当てながら今にも蕩けてしまいそうな顔で美味しい美味しいと言う童磨。むしろ鳴いていると言った方が正しいかもしれないが、本心からの言葉と表情でどれだけ美味しいかが伝わってくる。
ちなみにこのクッキーサンドは金棒がモチーフなので、ポッキーと同じようにチョコがかかっていない持ち手の部分がある。セレクトした猗窩座としては童磨に美味しい部分を少しでもいっぱい食べてほしいという思いを込めて、持ち手がある方を潔く引き受けた。
だが結果的にそれで正解だった。甘いものは人並みに好きではあるが、童磨の笑顔はそれ以上の甘さと美味しさをいつも自分にもたらすのだ。ある程度甘さをセーブしないと童磨の笑顔が堪能できないと猗窩座は心からそう思っている。

「んん～♡　こんな風に猗窩座殿と食べることができて俺幸せだなぁ～」
「ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛！！！！」

ほら、こんな風に特大級の台詞を不意打ちのように告げてくるのだから、甘いものは常に控えめにしておかなければ。

だがやはり何の前触れもなく、所かまわずバズーカ砲を打ち込んでくるのはほどほどにしてほしいと、勢いあまって飲み込んでしまったクッキーサンドのアーモンドが変なところに入ってしまい、咽ながら猗窩座はそう思う。

「え？　大丈夫かい？！？！」

それでも隣で心配な顔をして背中をさすってくれる童磨の温かく大きな手を感じながら、これはこれで役得か…と即座に考えを改める猗窩座であった。



参考画像

BGM:黒毛和牛上塩タン焼680円(大塚愛)


というわけで、2月3日は童磨と猗窩座の日+節分なので、それにちなんだお菓子を食べる話でした。

一話目の話は、ガチで賞味期限と割引額が2づくめだったので爆笑しつつ、せっかくだからと書き殴りました。
文書メーカーでもツイッターでアップしましたが、しっかり22時22分にアップしてますｗ(秒はずれちゃいましたが…)


というかコンビニスイーツ、ハマると抜け出せませんね！！
四季折々のイベントに合わせて販売される個性豊かでちょっと贅沢目なスイーツが手ごろな価格で食べられるコンビニ様は庶民の味方ですわ。
仕事の帰りに三大コンビニ＋セ〇マを毎日ローテーションで足を運んでいますが、今の時期だと作中に出したセブ〇のスイーツが私の中ではナンバーワンです。
ちなみに一年を通じて美味しそうなのが並んでると思うのはファ〇マ。

我らがコンビニセ〇マも、時折行われる農業高校生が考えたスイーツコンテスト上位に並ぶスイーツがめっちゃ美味しいんですよね(＾p＾)　ただ個人的にはセ〇マはアイスが強いと思ってます。ロー〇ンはひ〇るのアップルパイがうまし。


ちなみにコンビニで思い出したのですが、喜茂別村にあるセブ〇のお菓子コーナーは色んな意味でパンチが効いてますｗ
強面のスキンヘッドの店長さんがしのぶさんや伊之助の衣装を着ているイラストが描かれているのを見て二度見したのと同時、店長さん本人の姿も目撃して更に三度見ぐらいしましたねｗｗ(私が見たときは呪i術のキャラのコスイラストもあった)
この村に行く機会があったら是非このセブ〇に立ち寄ってみてくださいちなみに店内は撮影禁止ですｗ

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