バスタイムと明日の約束
玄関先で二回身体を重ねた後も熱は冷めず、ベッドに移動して一糸まとわぬ姿で更に挑んだ猗窩座と童磨は、今は部屋の風呂にゆっくりと二人で漬かっていた。
流石に汗でべとべとになった身体を洗い流したいのはお互い一緒だった。なら、後処理ついでにもう一度…と童磨が猗窩座を誘った形で、風呂場でも一度致している。
「もう、猗窩座殿ってば手加減なしなんだからなぁ」
「お前がそれを言うか」
しっとりと湯に濡れる童磨の白橡の髪は、フェイスタオルを使ったヘアアレンジによりバンダナのようにまとめられている。それでいて湯船でほんのり薄桃色に染まった肌に点在する自分が付けた朱花が否が応にも目に入る。
「っ…」
「おーい?猗窩座殿ー?」
これ以上目にすれば目の毒になると判断して顔を背けた猗窩座だが、そんな彼の考えていることなど手に取るようにわかってしまった童磨がニヤニヤしながら足先で猗窩座のふくらはぎを悪戯めいた動きで撫ぜていく。
「っ、こ、の…っ!」
明らかに性欲を引き出させようとする動きだが、それに乗っかからまいと耐え抜く猗窩座。
四回も致せば流石に疲労を覚える。互いに頑丈な方ではあるがそれとこれとは話が別だ。
「ふふ、ごめんよ猗窩座殿」
歯を食いしばって性欲に抗おうとする猗窩座に、これ以上悪戯を重ねると、箍が外れた彼によって明日はおろか明後日にまたがってベッドの中で過ごす羽目になると判断した童磨はサクっと悪戯を切り上げる。
「ねぇ…」
「あ?」
「あなたが見たがっていた俺の表情、ちゃんと見れた?」
乳白色の入浴剤を入れた湯が、ちゃぷ、と音を立てて微かに揺れる。
ふわりと笑いかける童磨に対し、一瞬何のことだと首を傾げた猗窩座だが、そう言えばそんなことを最初の方に言っていたなと思い至る。
「……どうだかな?」
「えー、何だいそれー」
ぷーっと頬を膨らませる表情があまりにも幼いため、これもある意味間抜けと言えば間抜けだが、あえて猗窩座は言わなかった。
「お前のような抜け目のない奴が、一日二日でそう簡単に見せるはずがないだろ」
「エーッ!? 猗窩座殿俺のことそう思っていたの?!」
「何だ?気づいていなかったのか?」
そんな会話をしながら笑いあう関係は、まるでこのお湯のように心地よいと童磨は思う。
こんな穏やかな時を猗窩座殿と過ごせるとは思っていなかった。
ああ、俺いま、すっごく…。
「幸せだなぁ」
「藪から棒になんだ?…と言いたいところだが」
つつ、と距離を縮めてきた猗窩座の手が、フェイスタオルで巻き上げた髪に触れたと同時、ちゅ、と軽い音を立てて口づけられる。
「奇遇なことに俺もそう思ってる」
「あかざどの…」
虹色の瞳が大きく見開かれ、向日葵色の瞳がその様を柔らかく見つめている。
「どうま…」
薄い肉付きの唇が想いを伝えようと開きかけたその瞬間、毎年行われている催し物の花火の上がる音がホテルの外から聞こえてきた。
「あ、花火始まった♪」
たちまち興味をそちらに持って行かれた童磨が湯船から出ようとするが、猗窩座はそれを許さなかった。
「わ…っ」
腕を引っ張られそれに従う形で、童磨は真正面から猗窩座の両腕に囚われてしまう。
「もぅ、猗窩座殿ってば…」
「うるさい、花火なら明日も見れるだろ?」
少しムッとした表情で独占欲を露にする猗窩座に対し、童磨はくすりと笑みを零す。
「そうだね、明日も明後日も、まだまだ日にちはあるものね。
…だからさ、猗窩座殿。もっともっと俺の色んな表情を引き出してよ」
俺の間抜けた顔も腑抜けた顔も間近で見て、してやったりなあなたの表情や真っ赤になって照れる表情や笑った顔がみたいから。
猗窩座の胸に顔を押し付けながらそう囁くと、どくん、と彼の心臓が大きく高鳴ったのが分かった。
そんな猗窩座の様子にほわりとした気持ちと共にとくんと己の心臓も高まったのが分かる。
やがてどちらからともなく顔を見合わせた二人は、小さく笑いあった。
そのまま引き寄せられるように猗窩座と童磨の身体と唇が重なり合ったと同時、打ちあがった花火も最高潮の彩りを次々と夜空に描いていく。
暑くとも幸福な二人の夏休みはまだまだ始まったばかりである。
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BGM:sunny day sunday(センチメンタルバス)
記念すべき北の大地デートシリーズ猗窩童第一弾☆
まだちょっと二人の設定を生かし切れていない感がありますねw
この遊園地は高校時代に過ごした村内の有名なリゾート地に実在します。
冬はスキー客のメッカとしても有名なのでそのうちそっちも書いてみたいなぁ。
ちなみにこの遊園地ですが、フリーパスが冬季の間は使えないとしても10000円で買えたりするので、ガチで公式ページを三度見しました\(^0^)/
しかも無料送迎バスもついてです。え、神過ぎない? その気になれば毎週末遊びに行けるくらいの神コスパなので興味のある方は調べてみて下さいね♪
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