猗窩童週間6日目

元ネタ:お題ガチャ・独占欲強めの攻めと可愛い受け 『11.お仕事している童i磨に暇な猗i窩i座はかまってちゃんをする。後ろから抱きついたり、「好き…」って言ってみたり。しかしそれがあまりにもしつこかったからか、「邪魔。」と童i磨に一喝された。諦めて猗i窩i座はその場を離れる。終わったら速攻かまってもらいにいくんだから!』

猗窩座は落ち込んでいた。これ以上に無いほど落ち込んでいた。 何故ならいつも自分のスキンシップを快く受け止めてくれている童磨に拒絶されたからだ。 今日の童磨は仕事で次に配信する動画の原稿を書いていた。”昔”は信者たちの前で説教や演説を行っていたが、パソコンやスマホを使って動画を配信するとなるとやはり勝手が違うということらしい。そんなわけで生配信以外はきちんと原稿を書いてそれを読み込みそこから配信をしているのだが、当然その間猗窩座は放っておかれることとなる。 猗窩座が大学やバイトに出ている間であれば何の問題もない。 むしろ童磨も猗窩座がいる時にわざわざ仕事を入れることはしない。だが今回は自身の企画ではなく、とある有名リスナーとのコラボ企画なので、当然猗窩座の都合を考慮していては間に合わない。 なので童磨も申し訳なさそうな顔をしながら、知らずむくれ顔になっている猗窩座の額にそっとキスを落としたり空いた時間を縫って猗窩座とのコミュニケーションを積極的に行っていた。もうちょっとの辛抱だからと少し困ったように笑う童磨を見て、彼を困らせたいわけではない猗窩座は目いっぱい童磨と触れ合ってその寂しさに耐えていた。 だがいい加減、限られた時間でのスキンシップも限界に達していた猗窩座は耐え切れなくなって現行の最終チェックを行いながら読み上げの練習をしている童磨に思いっきり構ってもらいに行った。正直もう我慢できない。講義やバイトから帰ってくればいつもよりも疲れた顔で出迎えてくれる童磨に無体を働けるはずなどない。だから四六時中一緒にいられる今この時間くらいは少し息抜きをしたっていいだろうと、猗窩座は童磨の仕事部屋へこっそり侵入し、ドアに背を向けて座っている彼の背後から近づいていき、そっと背中から抱き着いた。 「うわっ!?」 珍しく上ずった彼の声。”昔”、彼がやったように右手で童磨の肩に腕を回し顔を近づける。 「…童磨」 ぴょんぴょんとした癖のある童磨の髪から覗く耳に唇を近づけ吐息交じりに好きだと囁きかければ、思わずビクンと身体を震わせる様子があまりにも可愛くてたまらない。 そこで引いておけば良かったものを、童磨に飢えていた猗窩座は調子に乗ってしまったのだ。 両腕を使って後ろからむぎゅむぎゅと更に抱きしめながら「お前が愛し過ぎて耐えられない」「ずっと抱き潰したい」「仕事にかまうな童磨。全力を出せ。俺に集中しろ」などという台詞をこれでもかと言わんばかりに吐いた猗窩座に、童磨は一拍おいてから一言「うん、邪魔」と無感情のまま言い切った。 その瞬間、猗窩座の脳内にはお約束の通りトッカータの例の曲とおきのどくですが略の音楽が大音量で鳴り響き、筏葛の髪は燃え尽きたボクサーの如く真っ白になった。 あの童磨が取り繕うことなくそう言い切ったということは相当今の状態は切羽詰まっているのだろう。 そんなことに思い至らず自身の寂しさを優先させ構え構えと駄犬のように突っ走っていった自分に自己嫌悪を感じて、とぼとぼとうなだれて部屋の外へと出て冒頭へ至る。 ぺたんと廊下に腰を降ろし、童磨に否定され嫌われたかもしれないと打ちひしがれている猗窩座だったが、やがてためらいがちにパタリと部屋の扉が開かれた。 「…あの、猗窩座殿…」 おずおずとした声が頭上から響き弾かれたように猗窩座は顔を上げる。 そこには常ににこやかで穏やかな雰囲気を纏う姿とかけ離れた、とても申し訳なさそうな顔をした童磨が立っていた。 「…ごめん、ちょっとテンパってたみたいで…」 太眉を困ったように下げる童磨の顔は確かに疲労が滲み出ており、改めて己の身勝手さを思い知らされる。 「…謝るな。俺が全面的に悪かった」 「…でも…」 すっと立ち上がり両手でその柔肌の頬を包めば、くすぐったそうに小さく笑う顔があまりにも可愛くて綺麗だった。 「…その仕事はいつ終わるんだ?」 そのままキスをしたい衝動に駆られるがどうにかぐっとこらえて尋ねる。 「うーん…、あともう少し推敲して読み返していけば目途が立つかなぁ」 「そうか…」 ならもう少しの辛抱だなと、猗窩座の両手が童磨の頬を軽く撫でて離れていく。 「さっきの侘びだ。何か食いたいものや欲しいものはあるか?」 そう言いながら離れていこうとする猗窩座の手を童磨がそっと阻止するように掴む。 「は、」 そしてそのままちゅっと軽く口づけられた。 ポカンとする猗窩座の前で「もう貰ったから大丈夫だよ。ありがとうね猗窩座殿」とニコーっと笑いながら童磨は再び部屋の中へと入っていく。 その扉を見つめながら、不意打ちを喰らった猗窩座の顔がじわじわと熱くなっていく。 「ったくお前という奴は…!」 本当に何という男だ。どこまで俺を骨抜きにすれば気が済むのだとドアの前で地団太を踏みながらこみ上げてくる笑いが止められない。 「やはりお前は俺と結婚しろ」 そう独り言ちながら、仕事がひと段落着いた後たっぷりと童磨を抱きしめてやり、そして隅々まで構い倒してやるのだというプランをガッチガチに固めた猗窩座は、そうと決まれば翌朝の食事の準備をしておかなければと思い立ち、いそいそとキッチンへと向かったのだった。


猗窩童週間作品その②:3月26日にアップした話。こちらもお題ガチャで遊んでいたらナイスなものが出たのでノリノリで書きましたw
どまさんに塩対応な座殿っていうのは結構見かけますが、逆に座殿に塩対応などまさんはあまり見かけないですよね。
それだけどまさんの懐が大きいということですが(あるいは歯牙にもかけていないか)、そんな彼が座殿に遠慮なく邪魔って言えちゃうのも二人の関係が深まっている証拠ですよねw
というかうちの座殿は本当にどまさんのことが好きすぎるだろ!と書きながらセルフツッコミをしていましたw
座殿の作中の台詞をどまさんに言わせるのもすげえ楽しかったです(^q^)



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