春スイーツを仲良く食べる猗窩童の話 - 1/2

その1

※若干際どいネタがあります

 

 

夕食を食べ終えて食器を洗い、お互い一息着いた頃。風呂に入る気分でもなくもう少しダラダラしていたいと思っていた猗窩座の隣に座っていた童磨がうーんと唸りながら難しい顔をしていた。
おい、どうしたんだ?と猗窩座が声をかけようとしたのと同時、童磨は何かを決意したようにソファからすくっと立ち上がる。
「決めた! どうしても今じゃないとだめだ!」
「は?」
「ごめん猗窩座殿。俺行ってくるね!」
「え? いやまて、どこに行く?」
「コンビニ。さっきいっぱいご飯食べたけど、どうしても今、コンビニスイーツが食べたい気分なの!」
「ああ…」
一大決心をして立ち上った童磨の理由を聞いて猗窩座は脱力するのと同時納得する。確かにたくさん飯を食ったにも拘らずどうしても甘いものが食いたい時ってあるよな分かる。特に今の時期はどのコンビニのスイーツも春らしい食材を使っていて、食欲や見た目がそそるものが多い。ちなみにどれを買うのか迷うお前の顔が可愛くて、コンビニスイーツよりもお前が食いたいと思う俺もいるんだがその辺も分かれ。
何やら不埒な方へと思考が行きかけた猗窩座を尻目に、童磨はいそいそとリビングから出ていき自室からサイフをもって玄関へと向かっていた。
「いやいやちょっと待て。俺も行くから」
童磨と言うスイーツを散々貪った昨晩のことを思い返しうへへへへと締まりのない顔を浮かべていた猗窩座がトリップから戻ってくるもすでに童磨は靴を履いて玄関扉を開けるところだった。
「ごめん猗窩座殿! いくら猗窩座殿の頼みでもこればっかりは聞けないんだ」
「な、何故だ!?」
ガビーンというオノマトペが二人の間に鳴り響くも、童磨はしゅん、と眉を下げ、玄関の扉を開けかけていた。
「ま、待て童磨! 一体俺が何をした!?」
心当たりはあり過ぎるほどある。昨日の夜調子に乗って抜かずに三発ヤッた挙句、後始末のために風呂に入った際に、風呂上がりのいちごミルクと称して童磨の真っ赤になった乳首をチュウチュウ吸い上げてイカせたことが原因と言えば原因か!?いやいやでもさっきまで普通に接していてくれたし何でなんで何で!?!?!?!
「…猗窩座殿、ものすごい顔になってるけど大丈夫?」
「はっ!? い、いや大丈夫だ。だがなぜ一人でなど…!」
「うーん…、なんだか〝そういう気分〟だから…?」
自分でもどう説明していいのかわからないと言ったきゅるんとした表情を向ける童磨に、猗窩座は何だその顔超可愛いとたちまち意識がすり替わる。
そして童磨の言わんとしていることが猗窩座にも飲み込めた。要するにそういう気分なのだ。理屈や論理では説明できないそういう気分。
敢えて言うなら根拠のない直感が強く訴えかけていると言った感じか。そしてその直感に従えば大小はあれど自分の実りに繋がるということも猗窩座も経験済みだった。
つまり童磨のそういう気分とは〝一人でコンビニに行き、これだ!といったスイーツを買ってくる〟というものだろう。それに加えて男というものは本能的に一人になりたがる生き物なのだ。猗窩座にとってもそれは心当たりがあるため邪魔するわけにはいかない。
「…わか、った……!」
そうならば仕方がないと引き下がりはしたものの、やはり自分の目の届かないところに行かせることに抵抗はある。立てば聖母 座れば菩薩 歩く姿はアフロディテも書くやと言わんばかりに麗しくも大事な恋人なら尚更だ。例えそれが歩いて二分足らずの場所にあるコンビニでも。
「大丈夫だよ猗窩座殿。ちゃんと帰ってくるから、ね?」
玄関の扉から手を離し、そっと猗窩座の元へやってくると、その形のいい額にキスをする。
「…唇にも寄越せ」
「はいはい」
苦笑しながらリクエスト通りに、心配で尖らせてしまった可愛らしい恋人の唇にちゅっとキスを落とす。
「気を付けて行ってこい」
「うん、ありがとう。猗窩座殿、ちゃんとリビングに戻っててね? 春とはいえここは寒いし風邪ひいちゃうから」
「うっ゛」
帰ってくるまで座り込んで待つつもりだった猗窩座に仕方がない人と苦笑いしながら、両頬にもおまけのキスをして童磨は今度こそ扉を開けた。そんな後姿が外に出ても尚、猗窩座は玄関の扉を見つめていた。

そんなやり取りからおおよそ二十三分後。
「ただいま猗窩座殿」
お帰りの代わりにどたどたと言う足音と共にダッシュで玄関先に駆けて来る猗窩座を見て、まるで犬のようだなぁなんて微笑ましく思っている童磨の頬に、ちゅっちゅっとお帰りのキスが降ってくる。
「お帰り、童磨」
そのままギュッとお帰りなさいの抱擁を交わされ、ビニール袋を手にした童磨はもう一度ただいまと言いながら、体温の高い猗窩座のがっしりとした身体をぎゅっと抱きしめる。ほんの少しだけ外出しただけなのにと思わないでもないが、こんなにも帰ってきたことに安心してくれる猗窩座を見れば無碍になんて出来やしない。
「何を買ってきたんだ?」
「うん、あのね。桜と抹茶をモチーフにしたあんみつとね」
再会のキスと抱擁を済ませてさくっとリビングに移動し、がさごそと袋を開けて中身をテーブルの上に取り出していく。すっかりこのコンビニではお馴染みの天保三年に西の古都で創業された茶屋で人気の宇治抹茶あんみつをベースにした桜を思わせるホイップクリームや花で彩られている新作のスイーツが一つ。
「それからね、美味しそうなプリンがあったから買ってきた♪」
もう一つは世界的パティシエの一人が考案したこのコンビニ限定のプリン。シンプルながらもどこか高級そうで濃厚な味わいが楽しめそうな佇まいのスイーツだった。
「本当はね、あんみつの方を二つ買ってこようと思ったんだけど一つしかなくてね。だからもう一つ違うの買ってきたんだけど…猗窩座殿、どっちがいい?」
「っ…!」
自分自身が食べたくて買ってきたスイーツなのに、当たり前のように自分の分も買ってきてあまつさえ己から選ばせようとする。そんな童磨にたまらなくなった猗窩座はグリグリとその肩に甘えるようにして頭を押し付けた。
「本当にお前はいつもいつも…!」
「え? 欲しくなかった?」
「そんなわけないだろう……嬉しいんだ」
いつだって童磨は自分を優先し甘やかす。それが当然だと言わんばかりに。
だから俺も当然のようにその嬉しさや感謝の気持ちを言葉にする。コイツの優しさが当たり前になって、踏みつけて胡坐をかかないように。
「ありがとうな、童磨」
「どういたしまして♪」
万感の想いが込められたお礼の言葉に童磨もニコッと笑って返す。そうして今度は猗窩座の筏葛色の髪にそっとプルりとした唇が優しく触れた。

「正直どっちもお前と食いたい」
「じゃあ半分ずつ食べようか」

そんな風にくすくすとじゃれ合いながら二人は仲良くソファに座り、童磨が桜あんみつを、猗窩座がショコラキャラメルプリンを手に取りながらそれぞれスプーンに載せて最初の一口を食べさせ合い自分も食べながら折を見て相手に食べさせていく。

ほら、やっぱりそんな気分に従ってよかった。
どちらからともなくそう思いお互いのスイーツを食べさせ合いながら、甘い甘い幸せに身を浸す二人の春の夜はゆっくりと更けていった。

 

 

BGM:Claudio The Worm

この話は別に春にこだわる必要はなかったかもしれませんが、春限定スイーツがどこもかしこも美味しそうなので浮かんだ話なので、企画内にぶっこんでみましたw
コンビニスイーツって本当どこもかしこも美味しい物増えましたよねぇ♪ 夏はアイスの方を重点的に買うので夏以外の季節毎回同じこと言ってる気がします\(^0^)/

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