クリスマス猗窩童まとめ - 1/3

雪と君の華が降る
R15注意

「ん…」
ふわふわと柔らかく温かな物と熱く固い物に抱かれている感覚を覚えながら童磨は微睡みから少しずつ覚醒する。
起床二時間前に稼働させたエアコンによって真冬特有の朝の冷え込みは感じることはなかったが、カーテンの向こうの窓の外が冬至前の季節にしてはいやに明るいことに気づく。
何だろうかと思い身を起こそうとしても、隣で眠る恋人ががっしりと自分の身体に両腕どころか両脚までも絡めた所謂〝だいしゅきホールド〟をされているので、起き上がるまでに少々骨が折れるだろう。
「あかざどの……」
寝起き特有のウイスパーボイスでそっと筏葛の髪がかかる耳元で囁く。年末にかけて仕事が忙しくてなかなか手入れに行けないとぼやいていた彼の髪は、〝昔〟から馴染みのある髪形よりも少し伸びていて、なんだか新鮮に思えてとくとくと胸が高鳴ってしまう。
「ごめんね、少しだけだから……」
仕事で疲れているのにも関わらず、自分を心から求めて愛してくれてやまない、愛しくて可愛い恋人。そんな彼からの愛の拘束を名残惜しい気持ちでそっと解いていけば案の定不満そうな表情と声を漏らす。なので童磨はその腕の中に間髪入れずに使っていた大き目な枕を差し込むと、たっぷりと恋人の匂いが染み込んだ枕に安心したのか、猗窩座はすよすよと安らかに睡眠を再開した。
全く現金なんだかそれともこんなに愛されていることに喜んでいいのかと苦笑しながら童磨はベッドから降りて窓へと向かう。
陽の光は差さない夜明け間近の時間。少しだけカーテンを開いたその外には、暗闇の中白く冷たい華が鮮やかに舞い散る光景が映し出される。
「ああ、雪が降ってたんだなぁ」
さらさらとした粉雪ではなく、一粒一粒が大きめの雪。まだ黒みがかった景色を白く彩るその光景は確かに綺麗ではあったが降り積ると中々に骨が折れるほど重たく水分を含んだ物である。
これは今朝は雪かきが大変だろうなと思いながらマンションと契約を結んで仕事をしてくれる除雪業者の苦労を思いながら、しばし童磨はその光景をじっと見つめている。

彼の血鬼術が発動するときに足元に広がる雪の結晶。
洗練された武術を基盤にした血鬼術と、ひらひらと軽やかで儚い雪と、そして花火の名前を模しているのがどうしても彼と結びつかなかった。
思えばその疑問が彼を知りたい、仲良くなりたいと思うきっかけだったのかもしれない。
それでも彼に近づくことはままならず、結局のところはそんな間もないままお互い鬼の生を終えてしまったのだが。

だけど、鬼の生を終えた後の地獄にて、長年持ち続けていた疑問が解消されるとは思ってもみなかった。
雪の結晶と花火は彼の人間時代に大切にしていた物の名残であること。
人間時代の…今は双子の兄として生まれ変わっている…狛治と分離したことで、猗窩座がなぜ自分を時には暴力を伴い避け続けてきたのかその理由が分かった時、蟲柱に大して感じた物とは比べ物にならないほどの質量を伴った温かなものが胸の中に突き上げてきてたまらなかった。
ぽろぽろと、初めて心から流す涙を、猗窩座は親友なのだから、とそっと唇で拭ってくれた。

「おい」
雪の華、というよりも雪の礫を見つめていた童磨の背後に、不意に温かく固い腕が回される。
「ああ、おはよう猗窩座殿」
「さむい…」
そう寝起き特有の声でそう言いながら素肌の状態のまま猗窩座はぎゅっとバスローブを身にまとった童磨にしがみついてくる。
「そりゃ寒いよ。いくら暖房をつけてて猗窩座殿が身体を鍛えているからと言っても」
「そうじゃない」
童磨の言葉を遮るように、未だとろとろとした微睡みに支配されながら猗窩座は猫のような仕草ですりすりと童磨の背中に少し寝癖のある頭を擦りつける。
「おまえがとなりにいないから寒い…」
「えー…、寒くないように俺の枕入れておいたんだけど」
「そんなもの、おまえのかわりになるかバカ…」
そう言いながらぐいっと後ろに抱き寄せられる。半分だけ後ろを振り返ってみれば伸びた髪のせいでただでさえあどけない顔立ちが更に幼く見えてしまって苦笑する童磨だが、すぐにその笑みは、ん?という表情になった。
身長差は6㎝あり、童磨よりも背の低い猗窩座の下腹部が童磨の丁度後ろの、散々昨晩労わられつつ可愛がられた敏感な箇所に当たっている。そしてそれは心なしか硬くなっているような気がする。
(えーっと…、朝だからなぁ。うん)
男特有の生理現象だと結論付けた童磨だが、こちらも素肌にバスローブを羽織っただけであり、ともすればふわふわとした生地が猗窩座の分身に押される形で内部に入り込む感触に思わず小さく声が出そうになる。
「んっ…、ねぇ、あ、かざどの…」
「んー?」
これ以上はいけないと寝ぼけた猗窩座の悪戯をやめさせようと声をあげるも、とろんとした向日葵色の瞳で見上げられた童磨は口をつぐむ。やはり伸びた髪のせいかいつもと勝手が違って咎める声が出てこないのだ。
(う、その顔…!)
下から見上げてくる猗窩座のあどけない表情はまるで構って欲しいと訴えるあざとい猫のようだった。少し大きめのアーモンド形の瞳や寝癖のついた髪が丁度猫耳のように見えることもあり無碍に振り払うことが出来ずに童磨は固まってしまっている。
「どうま、だいすき」
「~~~~~~っ」
舌足らずの甘えた声でそんなことを言われてしまえば抵抗する術などなくなってしまう。クリスマスイブの前日までお互いに忙しかったがそれも一段落し、昨晩は激しくその分も込めて愛し合った熱が再び童磨の身体に灯っていく。だが猗窩座は寝ぼけ眼のまま純粋な気持ちで童磨に愛を伝えたに過ぎない。こんな新雪のように無邪気に甘えてくる彼に肉欲を覚えるのはなんだかとても居たたまれない気分になった童磨は体に燻る熱をどうにか逃そうと猗窩座の拘束から逃れようとする。
「ね、ちょっとだけ離してくれるかな?」
「なんでだ…? おれはこんなにもお前と離れたくないのに…」
「~~~だからぁ!」
胸がどきどきと高鳴って止まらない。こんな彼は知らない。いつもは自分と対等にあろうと一生懸命で精いっぱいに大切にしてくれる格好いい恋人のこんな無邪気な姿に調子が狂わされて行くのが分かる。
元々童磨は心が綺麗な人が傍にいると落ち着くタイプであり、そういった人はありのまま愛でる性質である。自分が猗窩座に持つ感情は決して今まで数多の人間から向けられてきた救済にかこつけた肉欲とは断じて違うが、今の彼にそういった欲望を向けてしまうのはなんだかとても憚られてしまうのだ。
「俺だって離れたくないよ…、でもゴメン、今は…うぁっ」
不意に腰に回された猗窩座の大きな掌がバスローブに包まれた豊満で柔らかな胸元に這い上がりぎゅっと揉みしだいてくる。それと同時に押し付けていた下腹部が童磨のはくはくと蠢き始める秘所を明確な意思を持ってぐりっとえぐるように押し付けられてくる。
「ちょ…っ、猗窩座殿、起きて…!?」
「ああ、ようやく気付いたか」
ここでようやく童磨は猗窩座が寝ぼけたふりをしてくっついてきたことに気が付く。ぐりぐりと背中に頭を押し付けていた顔が不意に上げられれば、そこにはニヤリとした笑みを浮かべた恋人の姿があった。
「もう少しだけ俺に翻弄されるお前を見たかったのだが…、お前があまりにも温かくいい匂いがするから色々やばい」
「やばいって…っあぁっ♡」
男特有の生理現象だと思っていた朝勃ちが完全に起ってしまっているのを身をもって感じる羽目になった童磨は、今度は明確な意思を持って秘部に押し付けられることによって生まれる感覚に高い鳴き声を上げる。
「なあ、童磨…」
「っ」
先程とは打って変わって雄を匂わせる高音ながらも低い声。先ほどの猗窩座も新鮮でたまらなかったが、平素の猗窩座だって魅力的であることを童磨はまざまざと思い知らされ、そしてあっさりと降伏してしまう。
「…っ、あさごはん、は…っ、猗窩座殿も手伝ってよね…!」
「! そうこなくてはな!!」
そう言いながら窓の雪を眺めていた童磨の身体をこちらに振り向かせた猗窩座は喜び勇んでその体をかき抱きながら、すぐそこにあるベッドへと連れ戻しにかかる。

ずるい、本当に猗窩座殿はずるい。
だけどそんなずるい彼も格好いい彼も無邪気な彼も全部全部大好きで仕方がない。

「んんっ♡」
「愛してる、童磨…。俺の童磨…」
「あっぁ♡」
バスローブを性急にはだけた猗窩座の熱い掌が、唇が、童磨の白く滑らかに広がる雪のような肌に触れ、すでに咲いている赤い華の上やその傍に、また新たな花びらを刻み始めていく。

窓の外の雪はそんな二人の愛に充てられたのかいつの間にか止んでおり、鈍色の垂れ下がった雪雲の向こうから徐々に青空と太陽が顔を覗かせつつあった。

本当は『俺の雪はお前だ。純真無垢な白橡の髪と穢れを知らない雪…。まさにお前だろう?』みたいなロマンチック甘イチャラブな展開に持って行こうとしたんだけども、本当に何でどうしてこうなったんだろうか\(^0^)/

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