お題箱猗窩童小話①
お題箱:永遠にイチャイチャしててくれ
どまが入院する事になって急いで病院に駆けつけた座殿。窓の縁に座って真っ白な服を着て真っ白な部屋に包まれてるどまがそのまま消えちゃう気がしてぎゅっと抱きしめた座殿。一番早く来てくれると思ってたよ。座殿。
息せき切って駆け付けた病室で、あいつは窓の縁に座って散りゆくハクモクレンを眺めていた。
白橡の髪に白皙の肌。そして〝昔〟の記憶よりも華奢に見える身体に纏う白い服。
柔らかく細められたままの虹色の瞳が、空を眺めて戻りたがっている天の使いのように見えてしまい、俺は思わず駆け出していた。
「あ、あかざど……」
入り口からさほど距離のないこぢんまりとした部屋の中。その白さと儚さから消えてしまいそうな予感がして思わず強く抱きしめていた。
「っ、どうしたの…? 流石に苦しいんだけど…」
「なんでもない…! それよりも、他に言うことがあるだろ…っ!」
ともすれば涙声になってし舞いそうになるのを必死に誤魔化すように俺は強く童磨を抱きしめる。〝昔〟ならこんなこと思いもしなかった。俺よりも一回りも逞しい体躯だったコイツが、俺を打ち破って弐の座にいたコイツが、簡単に消えていなくなるわけがないし、実際に消えてくれればと思ったこともあった。
だが俺も童磨も今はただの人間だ。脆弱な身体と有限の時しか生きられない、それでも限りある時間の中で幸せを感じ取り、〝昔〟の分をやり直すことを決めた人間だ。
俺のいないところで消えるなんて許さない。
お前の知らないところで俺は二度と消えない。
「…うん、ごめんよ猗窩座殿…。無理はしないって約束したのに…」
「分かれば、いい…っ! その代わり…」
「うん、二度と無理はしない。ずっと元気で猗窩座殿のそばに居るから」
────…だから泣かないでと告げられる童磨の声と共に目尻に柔らかな唇が押し当てられるまで、俺は自分が泣いていることに気が付けなかった。
めっちゃ美味しいネタなので一気に書き上げた記憶があります。鬼の頃は間違ってもそんな儚いタマじゃない二人ですが、人間になったらそういう喪失感と向き合っていかなきゃならないので、こういうのもありかなと思います。
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