1111の日について

「猗窩座殿、今日は何の日か知っているかい?」
おもむろに童磨に訊ねられた猗窩座はピンときた。
今日は11月11日。この日は平成19年に関西に籍を置く某大手お菓子メーカーが自身の会社の目玉商品のPRのために制定された日である。
この日にちなんで様々な楽しいイベントやキャンペーン、このお菓子の詰め合わせパックの販売などが催されるが、中でも盛り上がるのは棒状のお菓子を二人で端から順に食べて行き最後は甘いキスをするという通称〝ポッキーゲーム〟である。
なので猗窩座は待ってましたと言わんばかりにポッキーとプリッツ(旨サラダ)の箱(合計32個)を取り出しドヤ顔で童磨に見せつけた。
「ああ分かっているさ。ポッキーの日だな。よし、今からヤルぞ」
「うん待って? なんか言い回しが引っかかるんだけど…」
「気のせいだ」
そう言うやいなや猗窩座は夜通し行うつもりで一つ目のポッキーの箱を開けようとするが、童磨は残念だけど違うんだなぁと首を振った。
「違う? 何がだ?? 今日はポッキーの日ではないのか??」
「うん、確かにそれも合っているんだけどね」
そう言いながら童磨は非常に申し訳なさそうな顔をしてそそくさとキッチンへと入っていく。流石に気になった猗窩座も童磨の後に続いた。
そこに用意されていたのはうどん、蕎麦、パスタ、ラーメン、春雨といった乾麺と大ぶりな鮭の切り身。それらをどうにか手にして引き返そうとした童磨だが、気配を消してやってきていた猗窩座がいたことに驚き少しだけのけぞってしまう。
「わあっ」
「うぉっ」
「あ、あ、ゴメン。ちょっとびっくりしちゃって…」
「いや、こっちこそ驚かせてしまったなスマン」
取り落としそうになってしまった童磨の手の中のものを受け取り、改めてシンクに置き直す猗窩座。コレは一体なんなのかと訝し気な目を向ける恋人に、そうそう!と仕切り直すように童磨が声をあげた。

「今日はね、麺の日と鮭の日なんだって!」
「…………はぃ?」

思わず杉〇右〇さんのような返しを猗窩座はしてしまう。前者はまあ何となくわかる。どこかの漫画サイトで『ポッキーがないから乾麺でゲームをしよう』と提案されて『おいちょっと待て』というオチの作品を読んだ記憶があるからだ。ちなみにその漫画はBL物であったが猗窩座は特に何も気にせず普通に面白いなと思ったのと同時、なるほど乾麺でも代用可能なのかという新たな知識をインプットしたのだ。
しかし鮭というのはどこから出ていたのだろう?考えれば考えるほどわからないといった宇宙に放り出された猫のような表情になる恋人に童磨は苦笑しながら種明かしをする。
「あのね、鮭の漢字あるよね?」
「おう」
「つくりの部分を横にして想像してみて」
「?………あっ!」
なるほどそういうことかと猗窩座は合点がいき、ポンと手を叩く。つくりの圭の部分を横に並べば確かに今日の日付になる。
「…だからね。今日は猗窩座殿が食べたい種類の乾麺と鮭を使った夕ご飯にしようかなーって思ったんだけど…」
そして更なるネタバレをされた猗窩座は、あまりにもいじらしいのと尊さのあまり胸を抑えて顔を俯かせる。それと同時、ポッキーの日だと浮かれまくって32箱もポッキーとプリッツを買ってきた自分の浅はかさに打ちのめされそうになる。
「…お前は…」
「うん?」
「お前はこんなにも俺のことを考えてくれているのに、俺という奴は…」
そのまま筏葛の髪を両手で抱え、居たたまれなさにしゃがみこもうとする猗窩座を童磨の両掌がふわりとその頬を包んだ。
「そんなこと言わないで、猗窩座殿」
「…だが…」
「俺だって猗窩座殿に言われるまでポッキーの日だってこと、頭から抜け落ちてたもん。俺とは違う視点で猗窩座殿だって俺と一緒に楽しもうって考えてくれたんじゃないか」
「っ……」
俺は嬉しいよと続けられた童磨の言葉に目から鱗が落ちるのと同時、温かくて柔らかな気持ちがとくとくと湧き出てくる。
「ただね、…32箱は買い過ぎかなぁって…」
「……それについては反省してる」
だが流石に32箱も買ってきたのは想定外であるためやんわりと言及すれば、猗窩座は潔く己の愚行を改める運びとなった。
「いいよいいよ。しばらくはおやつに困らないし、何ならオフィスグリコとして持って行っても良いんじゃない?」
ポッキーの日を制定した会社なだけにねと笑う童磨に猗窩座も笑う。

最初に予想していた展開とは違う運びになっても、それでもこうやって笑い合える。
そんな関係になれたことが何よりも嬉しいし幸せだ。

そんなことを想う二人の腹の音がシンクロして鳴り響いたことに更なる笑いが彼らを包み込む。

そんなホワホワした雰囲気に包まれた彼らの夕食は鮭のカルボナーラに決定し、当然ながら猗窩座も一緒に並んで作った。
ちなみに猗窩座が買ってきたポッキーとプリッツは食後のデザートとしてバナナとレアチーズのピンチョスに生まれ変わり美味しく二人の胃袋の中に収まった。
更に後日談として、ポッキーとプリッツのアレンジにハマった二人がああだこうだと言いながら様々なスイーツを作りながら食べさせ合っているうちに、気が付けば全て消費できたという。

そして夜のポッキーゲームも連日大いに盛り上がり、ポッキーやプリッツのスイーツを毎日食しても二人の体重が維持できたのも余談として付け加えておく。

 

11月11日が鮭の日であるのを知ったのは母経由からだったりします\(^0^)/ 最初聞いた時は私も座殿と同じ反応でしたが、理由を聞いて超納得しました。確かにこの時期鮭はめちゃくちゃ美味しいし、石狩風うどんにしてもいいかもしれん(^p^)
ちなみに麺の日はスマホに入れてあるダイエットアプリの未来先生から教えてもらいましたw

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