「ねえねえ、猗窩座殿」
「…何だ?」
晴れて(?)俺と猗窩座殿は恋仲になったわけだが、はて、恋人というのは一体何をするのだろう?
信者たちの相談によると、あの人を想って夜も眠れない、あの人が自分だけのものにならないのがツライなどといった感情が常について回るものだと聞いていたけど、多分俺はそれには当てはまらない。
生まれて初めての感覚に、流石の俺も情報がなければどうすればいいのか分からない。
穏やかにお話をしたいというのは間違いはないんだけれど、きっとその先もあるんだというのは分かっている。そして俺はその先の世界を猗窩座殿と体験したいなって強く感じている。
だから猗窩座殿にそれを尋ねたいのに、何でかなぁ、言葉がうまく出てこない。
「…なんでもない」
「…そうか」
俺と向かい合って座る猗窩座殿もよく見たら耳が赤い。髪の毛の色と相まってそれがなんだかすごく可愛い。
それも言葉にしたいのに、胸の鼓動があり得ないくらいドキドキしている。
上手く話せない。いっぱいお話したいのに。
「…なあ」
「なぁに?」
今度は猗窩座殿の方から話しかけてきた。そう言えばお話好きだって言ってたなぁ。今まで俺には話しかけてはくれなかったけど、いっぱいお話を聞かせてくれるんだろうか。楽しみだなぁ。嬉しいなぁ。
「…何でもない」
「えー?」
と思ったら猗窩座殿も何か言いたげな表情をしていたけれどすぐに押し黙ってしまった。
残念だなぁ。もっともっとお話しできるはずだったのに。
あれ? 何だろうこの気持ち。心の中がずんと重たく感じる。
「っ、おい、そんな悲しそうな顔をするな!」
「え? 俺そんな顔をしてた?」
焦ったような猗窩座殿に言われるまで、全く自覚がなかった。
悲しい顔をしてた? 俺が??
「…っ、このままじゃ埒が明かないな…、童磨」
「は、はい?」
思わず殊勝な返事を返した俺は、真剣な顔をする猗窩座殿にぴし、と姿勢を正す。
「あのハ…側近にありったけの帳面を用意させることは出来るか?」
「え、うん出来るけど…どうして?」
この状況で帳面を用意させるってことは猗窩座殿が俺に対して使うってことだよな?でも何で?脳内テレパスもあるし、会おうと思えば会えるのに。
「その、俺たちはあまりにも言葉を交わすのが少なすぎた、だろう? 今だって何を話していいか、話そうにもうまくいかないだろう?」
うん、確かにそうだ。いっぱいお話したいのに出来ていない。
「だからその、…まずはこの帳面に互いの思ったことを全部書いて知らせ合うことから始めないか?」
「あー、なるほどね! それぞれの日常を日記を書いて知らせあうように、お互いの想いを書いて知らせ合うのかぁ」
文通とはまたちょっと違った形になるかもしれないけど、それはすごい楽しそうだ。
だってその帳面は他の人に預けるわけにはいかないから、猗窩座殿がここを訪ねてくる動機にもなるだろうし、俺も猗窩座殿に会えるし彼の想いを知ることもできるし俺も彼への想いをしたためることができる。
「さすが猗窩座殿だなぁ♪ 俺には到底思いつかないことをさらりと思いつくのだから♪」
「っ、褒めてもなんも出ないぞ?」
「?出さなくていいよ? 本当のことじゃないか」
「ンン゛っっ!!」
すっかり擬態が解けてしまい蒼い刺青の部分まで真っ赤になったんじゃないかってくらい顔を赤くした猗窩座殿が、だからお前そういうところ…!とつぶやきながら俺の肩口に顔を押し付ける。
そんな猗窩座殿が可愛くて可愛くてたまらない俺は、そのままぎゅーっと彼を抱きしめてしまう。
抱きしめれば抱きしめるほど、猗窩座殿が大好きだなぁ、ずっとこうしていたいなぁっていう気持ちがあふれてあふれて止まらなくて。
そんな俺の心の中を読んだように、猗窩座殿も俺の背中に両手を回してぎゅっと抱きしめてくる。
そうかぁ。
これが恋、というものなのかぁ───…。
その後、ハーちゃんに帳面を用意してもらったついでに猗窩座殿に対する想いの丈はこれでいいのか確認してほしいと頼んだところ、何もない彼の頭に逆立った金髪の幻覚が見えたのはどうしてだろう?
更にその後、頼むからあのハゲに文章をチェックしてもらうのは止めろ色んな意味で俺がくたばるからと血涙を流しながら真剣な表情の猗窩座殿に言われたんだけど、ハーちゃんと何かあったのか俺にはさっぱりわからなかった。
BGM:こっちのお水の蛍はどうだ/大問題!されど快晴(グルグル映畫館)
TEKKENⅡ(SEX MACHINEGUNS)
以前ふせったーにて何気なく呟いて、うっかり妄想が広がった話です。書いててめっちゃ楽しかったー♪
某奇妙な冒険のオマージュをめっちゃしまくったり、最終的にピュアピュアの代名詞とも言われる(?)交換日記をさせたりと、すごく生き生きとして書いてた記憶がありますww
教祖界隈でKing of モブと名高いハゲ様がキューピッドとなって猗窩童が成立しました\(^0^)/ちなみにどまさんのハゲ様の呼び方をハーちゃんにしたのも、もう一つの漫画のオマージュだったりしますw
というかこの人、結構お年を召していると思ったのですが、刀鍛冶編のノベライズを読んだところ、頭を剃りあげた若い男というのが非常に衝撃的でした。若いのに側近(?)なの、めっちゃ有能じゃないですか…!!
ちなみにどまさんが座殿の暴力を受け止めて、一番仲のいい友人と判断したの、そういうことを人間時代にやられてきたから刷り込みで思い込んだ説を押します。
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