「これやる」
猗窩座殿がぐいっと拳を突き出してきたので、両手をその下へと潜り込ませるとその上に何かがぽとりと落とされた。
そっと掌の上を見ると、ディープピンクとシルバーの組み合わせのリングで、ピンクのレジンのデザインがチョコレートを溶かしたようなメルト柄になっている。
「わぁ、ありがとう猗窩座殿♪」
何となく懐かしい気持ちを覚えながらお礼を言うと猗窩座殿は照れながらふいっと顔を逸らしてしまう。
可愛いなぁなんて思いながら俺は今しがたもらったそのリングを左手の薬指に嵌めてみれば、しっくりとそこに収まった。
流石親友。俺の指のサイズも分かるんだなぁ。
「お、ま…!あっさりそこに嵌めるとか…!」
そんな風に顔を真っ赤にしながら口をパクパク動かして言葉を紡ぐ猗窩座殿。
「え、だってここに嵌めるように注文したんじゃないのかい?」
「そうだけど!そうなんだけど…!」
なんというかこう、もっとそうなんかあるだろう!?と猗窩座殿は言っている。
うーん、もっとこうなんかこうの意味が見えてこないんだけど、俺の今のリアクションじゃ満足できなかったわけだ。
「俺にとって猗窩座殿は昔から特別だからな。大切な親友からもらった指輪をこの指にはめるのは当然のことだと俺は思っているよ」
なのでありのまま、素直に自分の気持ちを伝えてみた。
すると猗窩座殿の顔は照れ顔からちょっとだけ寂し気な表情へと変化した。
「…違う」
「? 何が?」
「…そのニュアンスじゃない」
何だろう? 俺、また間違えちゃったのかなぁ。って、アレ? ”また”ってどういう意味だろう。
猗窩座殿とは物心ついた時からずっと一緒にいた仲の良い幼なじみだ。
俺に何かあるとすぐに駆け付けてくれて、助けてくれた。守ってくれた。でも俺だって猗窩座殿を守りたいし助けたいって言ったら『おまえはだまっておれにまもられていればいい。かりはここできっちりかえす』と言われたんだけど、当時は意味が分からなかった。あの時に言っていた”借り”って何のこと?と
何度も訊ねたけど、その度に彼は『俺はお前に借りがあるんだ。だから返さねばならない』としか言ってくれなかった。
猗窩座殿が今ポツリと漏らしたその声と表情。何度も言っていた彼が俺に感じている”借り”。もしかしたら関係があるのかな?
貰った指輪をじっと見つめる。デザインは確かに可愛らしいなと思うし、甘めのビジュアルだと言われる自分の顔立ちからしてピッタリだと思う。だけどこれは一般的に見ると女の子向けのデザインだなと感じるし、猗窩座殿が俺を女の子と勘違いしているわけではないのはもちろんわかってる。
何だろう。見ているうちに頭のてっぺん当たりがむずむずするような…。
「…すまん」
知らず知らずに覚えていた違和感をやり過ごそうと目を閉じていた俺の手を猗窩座殿はぎゅっと握る。
「…気に入らないなら捨ててくれていい」
「捨てないよ? だって猗窩座殿が俺のために選んでくれた指輪だもん。大切にするよ」
本心からそう告げるも猗窩座殿の悲痛な顔は晴れないまま、今にも泣きそうな顔で笑う。
「ありがとな童磨…。お前はずっと”昔”からそうだったんだよな…」
何だろう、猗窩座殿が口にした”昔”と俺が認識している昔はひどくズレがあるように感じてしまう。
ずっと一緒にいたからと言って人の気持ちは必ずしも全部理解することは出来ない。だけど俺は心の底から猗窩座殿が抱えている寂しさの原因を余すところなく知りたくて、理解したくてたまらなかった。
どまさん記憶なしで座殿記憶ありだとやっぱりこんな切ないシチュになるのは仕様です\(^0^)/
値段もお手ごろだし可愛いし、座殿からどまさんのプレゼントにピッタリだね!
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