最後にただ優しさを(死ネタ注意!) - 2/3

なあ童磨。

俺としてはもう忘れてほしい、人生の五指に入るほどの黒歴史なんだが。

もう少ししっかりしたプロポーズの言葉があっただろうって思わないでもないんだが。

あの時伝えた気持ちは今でも少しも変わっていない。

一緒の墓に入りたいっていう気持ちは。

こら、笑うな。

仕方がないだろう、あの時はいっぱいいっぱいだったのだから。

”昔”は俺が先に逝ったよな。

そしてその後お前が俺の手の中に落ちてきた。

それから地獄で使役して、お前が先に生まれて。

俺が後から生まれて。

記憶を持ったままお前と出会えて。

関係性を発展出来て。

色んな場所に行って、色んな物を食べて、色んな経験をして。

楽しかった。嬉しかった。

共に生きていけるというのはこう言うことかと、心の底から俺は思った。

そうだな、実を言うと俺もまさかここまで来るなんて…という気持ちでいっぱいだ。

頭の中で予想していた未来よりもはるかに充実しすぎていて、少しだけ混乱しているというのが正しいかな。

と言うかそれをお前が言うのか。

俺が真剣な気持ちでいられたのは、お前がいつも俺を受け止めてくれたからだろう?
お前はこの期に及んでどれだけ俺を甘やかすのだ。

それが幸せだって、だからお前はそういう、とこ、が…!

…照れてなどいない…。

こうでもしなければ、視界が滲んでお前の顔が見れなくなるだろう?

馬鹿、謝らなくていい。

これは俺の心の問題だ。お前の方こそ最期まで笑っていてほしい。

…と言うか童磨。俺の幸せを望んでくれるのは嬉しいが、年を考えろ年を。

こんなジジイに懸想する物好きがいると思うか?

っ、お前は最後の最期までそういうことを言う…っ!!

お前以上に…っ、深く想える相手など…っ!!

…っ、誰が泣かせたと思ってるんだ…!!

お前を、もっと、見ていたいのに…。

…っ、待ってろ、これで我慢してくれ…。

未来永劫愛し続ける相手の最期の頼みを聞き入れられないほど、今の俺は狭量じゃあない…。

ああ…。

おやすみ、童磨。

…っ、お前がそう言うなら仕方がない…っ!

俺は、お前に似て、優しいからな…っ!!

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