なあ童磨。
俺としてはもう忘れてほしい、人生の五指に入るほどの黒歴史なんだが。
もう少ししっかりしたプロポーズの言葉があっただろうって思わないでもないんだが。
あの時伝えた気持ちは今でも少しも変わっていない。
一緒の墓に入りたいっていう気持ちは。
こら、笑うな。
仕方がないだろう、あの時はいっぱいいっぱいだったのだから。
”昔”は俺が先に逝ったよな。
そしてその後お前が俺の手の中に落ちてきた。
それから地獄で使役して、お前が先に生まれて。
俺が後から生まれて。
記憶を持ったままお前と出会えて。
関係性を発展出来て。
色んな場所に行って、色んな物を食べて、色んな経験をして。
楽しかった。嬉しかった。
共に生きていけるというのはこう言うことかと、心の底から俺は思った。
そうだな、実を言うと俺もまさかここまで来るなんて…という気持ちでいっぱいだ。
頭の中で予想していた未来よりもはるかに充実しすぎていて、少しだけ混乱しているというのが正しいかな。
と言うかそれをお前が言うのか。
俺が真剣な気持ちでいられたのは、お前がいつも俺を受け止めてくれたからだろう?
お前はこの期に及んでどれだけ俺を甘やかすのだ。
それが幸せだって、だからお前はそういう、とこ、が…!
…照れてなどいない…。
こうでもしなければ、視界が滲んでお前の顔が見れなくなるだろう?
馬鹿、謝らなくていい。
これは俺の心の問題だ。お前の方こそ最期まで笑っていてほしい。
…と言うか童磨。俺の幸せを望んでくれるのは嬉しいが、年を考えろ年を。
こんなジジイに懸想する物好きがいると思うか?
っ、お前は最後の最期までそういうことを言う…っ!!
お前以上に…っ、深く想える相手など…っ!!
…っ、誰が泣かせたと思ってるんだ…!!
お前を、もっと、見ていたいのに…。
…っ、待ってろ、これで我慢してくれ…。
未来永劫愛し続ける相手の最期の頼みを聞き入れられないほど、今の俺は狭量じゃあない…。
ああ…。
おやすみ、童磨。
…っ、お前がそう言うなら仕方がない…っ!
俺は、お前に似て、優しいからな…っ!!
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