「よし、腹ごしらえは済んだ…お前は?」
「うん、何とか回復した」
よいせ、と起き上がろうとするも七〇〇倍の致死量の毒を分解した身体は、本人の至らぬところでまだ不調をきたしていると言わんばかりに少しばかりよろめいた。
「わっ…」
「おっと」
「っ…」
膝から崩れ落ちそうになる身体を猗窩座はガシリと抱き留める。それと同時に、今まで味わったことのない感覚が童磨の全身を駆け巡る。
何だろう、何だろうこれ。
なにかが静かに、湧き上がる。フワフワした、柔らかい、あたたかなものが。
「っぁ……」
「大丈夫じゃないだろうが、この馬鹿者」
「っだ!」
その気持ちが何だろうと考える前に、藍色に染まった爪でかなり強くデコピンを見舞われてその痛みに呻く。
「でも、早くいかないと! 鳴女ちゃんや黒死牟殿や無惨様が…!」
「なら俺が先に行く。お前はもう少ししてから来い」
そう言って走り出そうとする猗窩座を童磨は反射的に腕を伸ばして止める。
「何だ?」
「あ…、いや、やっぱり俺も行くよ」
思わず遠ざかる背中を引き留めてしまう。
今度こそ猗窩座殿が遠くへ行ってしまうかもしれない。そう考えるとざわざわした気持ちが胸に降りてくる。
漠然とした気持ちを振り払うように童磨は猗窩座の隣に並び立った。
「そうか、ならせいぜい俺の足を引っ張るなよ」
「ははっ! それをあなたが言うかい?」
「ほざけ。お前は大人しく俺に庇われていろ」
そんな風に軽口を叩き合いながら上弦の弐と参の鬼は駆け出していく。
遭遇した隊士たちは栗花落隊士と嘴平隊士を屠った上弦の弐と、死んだはずの上弦の参に成すすべもなく狩られていく。
その躯は猗窩座と童磨によって平等に吸収されていき、童磨はようやく本調子に戻り、猗窩座もまた体力を補充することができた。
腹と調子が満たされれば安堵感も戻ってきた童磨は、柱と対峙している上弦の壱と肆の元へ二手に分かれようと言う猗窩座の提案に一二もなく頷いた。
「じゃあ俺は鳴女ちゃんのところに行くよ」
「童磨」
じゃあね、と駆け出そうとする童磨を今度は猗窩座の声が引き留める。
今、ここで言うべきことではないのは分かっている。だが自分は地獄で狛治と別れて例外的に甦ったのだ。これから先、何があってもおかしくはない。
「ダメだぜ、猗窩座殿」
だが口を開きかけた猗窩座を童磨がぴしゃりと遮る。基本的に相手の話を最後まで聞く姿勢を崩さない男のまさかの言葉に、上弦の参は鬱金色の瞳を見開いた。
「ごめん…、でも今は聞きたくないんだ」
すまなそうに垂れ眉を下げてそう言った童磨に、いや、最もだと猗窩座も返す。
今ここで、過去の諸々の清算のための言葉を吐いてもそれは自分だけの問題だ。今は生死をかけた最終決戦中であり、今ここに自分がいること自体、奇跡のような恩恵なのだ。
その恩恵にこれ以上肖あやかり続けたところで悪戯に彼を混乱させるだけだ。勝てるものも勝てない状況になるリスクは十二分に高い。
ならばもう、余計なことを言うまい、考えまい。
全てが終わってから、この思いを口にすればいい。
その全てが終わる前に再び自分は地獄へ舞い戻るかもしれない。
だがそれもまた運命さだめだ。
「後でちゃあんと、たくさん聞いてあげるよ猗窩座殿」
「言ったな?」
「ああ、俺は優しいからな」
そう言いながら笑う童磨に、猗窩座は笑いかける。
そんな猗窩座の言葉と笑みにまたもや温かくやわらかなものが降り積もる感覚を覚えた童磨の前から、彼の姿はたちまち遠のいていく。
話をきちんと聞くという自分の言葉に笑って肯定した上で。
「…猗窩座殿…」
武運長久など祈らない。
だって自分たちはまた会えるのだから。
もしも、無惨様に粛清されることになろうとも、俺が取りなしてあげる。
なぜなら…。
「あなたを助けるのは、一番の友人として当然だろう?」
なあ、猗窩座殿────…。
対の扇をぎゅっと握り締め、上弦の肆の元へと駆け出していく童磨の胸に去来していた焦燥感は、いつの間にか消え失せていた。
BGM:焔之鳥~鳳翼天翔/煌/迦陵頻伽/鸞/熾天の隻翼/愛する者よ死に候え/桜花忍法帖(陰i陽i座)
これもツイッターで呟いていたネタです。
以下そのまま抜粋↓↓
拙宅の基本設定である花闇獄での邂逅録シリーズは基本、hkjとakzが地獄で切り離される→首だけになって堕ちてきたdmと邂逅して色々話し合って親友認定→時間切れ→生まれ変わった先で再会してからの再構築→恋人という流れなんですが、もしも、hkjとakzの分離がもっと早かった場合、z殿はhkjに「行け、今度こそお前の大切な奴を守れ」とか発破をかけられて、zは迷いなく毒で身体がドロドロに溶けてしまったdmさんの元へ向かうというifを思いつき、
睡蓮菩薩を出して、そこから猛攻をかいくぐってきた二人を、さっそうと現れたz殿がいなすからの
dm「どうして…あなたはさっき死んだんじゃ…?」
z「細かいことはどうだっていい。そんなことよりさっさとその目障りな毒を分解しろ」とか言うんだけど、明らかにdmを守りたいという気持ちが言葉の端々から滲み出てて、それを朧気ながら感じ取ったdmが内心ときめきながらも毒を分解する。
で、当然のことながら、死んだはずの上弦の参が?!とか何とか驚くんだけど(そりゃそうだ)、彼らにそんなことを教える筋合いがないzはdmを守るために奮闘する…。そして駆けつける間に、二人とdmのやり取りを実は見ていた解呪済のzが内心怒りを覚えながら破壊殺を繰り出していき、
「女とはいえ容赦はせぬぞ!貴様、よくも知った口ぶりでこいつを貶めてくれたな!!」とか「犬は三日飼えば三年恩を忘れずというが、お前は犬以下か? 嬲り殺しか野垂れ死にするしかなかったお前を救い上げた恩人に唾を吐きかける真似がよくできたな!」と怒りを露にしながらガンガン戦ってほしい。
テンプレでもお約束でも「受けのピンチに攻めがさっそうと駆けつける」っていう世界線、あかどであったっていいじゃないか!!!!
(フォロワーさんから読みたいと言ってくださった)
ありがとうございます!!もうね、解呪された座殿は色々どまさんに対して言いたいことがあるんですけど、まずは生き残らなければ話にならないので、どまさんとは会話はまだできません。その分、解呪されたことでどれだけどまさんの大らかさに救われていたかを心から理解した座殿が、
鬼だから、姉妹や母を殺したからの一点張でどまさんがやって来たことを理解しようとしない二人にかつての自分を重ねてしまい、清算も兼ねた台詞だったりしたら美味しいかななんて思います♪
この後二人とも生き残って壱殿のところに行って勝利からの鬼陣営勝利ENDでもいいですし、
メリバ展開で、二人そろって敗北しちゃっても、座殿はぎゅっとどまさんの首を抱きしめて、「守れなかった……すまない」と言いつつも、どまさん「ううんあかざどのは俺を守ってくれた…、ありがとう」と言いながら、内心で(今はない心臓がとくとく鳴っていてホワホワした気持ちが止まらないや・・・これ、なんていう気持ちなのかなぁ…)と思いながら、意識が遠のく中で、不意に唇に柔らかなものが触れた…みたいな感じで、一緒に地獄へ行く展開も美味しいかなーなんて思ったりしました
結論:あかどは無限のおいしさを秘めているCPです\(^0^)/
※ちなみにこの際の座殿の術式展開の結晶は雪ではなくて氷。
hkjと分離した+dmを守るために甦ったため。
※抜粋ここまで↑
とまあ、こんな感じで妄想を重ねて書き上げました。
BGMはとにかく陰陽座一択で、書いている最中脳内BGMがすごかったですw
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