Beauty・・・Bad been Witchiing





Beauty・・・~Bad been Witchiing~



俺の視線の中で、悶えて、刎ね上がり、ひくひくと誘い込まれるその妖艶な身体は、俺だけに用意された食用物の兎の様であり、俺だけを喰らう魔性の者の様であり。
うつ伏せに組み敷かれて、無意識にシーツを口に銜えて、与えていく快楽に漏れる声を噛み殺そうとする双子の弟は、血を分けた肉親のそれから違う情を抱いた今でも、俺の中に燻る暗陰とした仄暗い炎を燃え上がらせていく。
「ぁあっ!」
同じ時に生まれたはずなのにこんなにもそそられる身体の中に俺自身を突き入れる下準備のため、腰をかすかに突き上げさせて形の良い双丘にすぼまった、赤く小さくひくひくと痙攣するその妖蕾に指を突き入れると、その身に宿る熱とは比べ物ににならない熱さと柔らかさと狭さを以って締め付けられていく。
「あぅ、んっ」
中の指を突き動かすたびに、漏れる扇情的な声と吐息と汗ばむ白い身体くねる様。
誰もが羨む、名誉や地位、全てを金そろえた人間が俺の瞳の中だけで猛っていくその様を見て、暗い悦びに身を浸らせる。
「もっとか・・?」
うつ伏せている身体はそのまま、顔だけを横に向けて、朝焼けを凝縮した潤んだ瞳でこちらを見やりながら、圧迫感とそれとは別の感覚に浅い吐息を繰り返しながら、耐えるようにして投げ出された両手でシーツを握り締めるこの弟は、俺だけの中で。
「あぁっ、にいさ・・・っ、あーー・・・」
中に入り込んでこすり付けていた指を返事を待たずに一本一本増やしていくたびに漏れ落ちるのは苦しさに見せかけた嬌声。
三本にまで入れ込んだ指を更に奥までぐりぐりと捻じ込んでやり、腸壁に届くほど強く深く銜え込ませてやると、さすがに快楽に浮かされていた表情にも苦悶の色が混じる。
「ぅぐ・・ぅんん・・っ」
その苦痛に歪む顔と声は、あの日、影である俺の目の前で散らしていったその時を思い起こさせて、いよいよ以って俺の中にある劣情は煽られて行く。
しかしその表情は、かつて俺の中に巣食っていた憎しみ以外の感情を働かせるきっかけともなったそれでもあって、ギリギリのところでその加虐は押さえ込まれる。
「あっ・・はぁ・・ぁあ・・・っ」
与えられていた苦痛を取り除くように指を引き抜くと、一瞬ビクリと身体を震わせて涙目で潤む視線のまま見つめられ、半開きの唇からちろりと見える赤い濡れた舌先にもう俺自身も欲求を抑える事は限界だった。
「ん・・ン・・っ―――――ッ!!」
からからに乾いている口内を潤すため唇を重ね合わせながら、もう既に濡れそぼつソコに自身を宛がって、そのままの四つんばいの体勢のままで押し込んでいく。
吸い上げる舌の柔らかさと甘さと内部の熱さ狭さ全てを吸い上げるようにして、逃れようとする腰を押し掴み上も下も俺で満たしていく。
全て全て。
「ぁあ、ああぁッ・・・も・・・、んっ」
「もう?どうして欲しいんだ?」
唇を離すと、閨の闇の中でもはっきりと煌めく艶やかな銀糸が互いを繋いでそして消えていく。
ふさがれた言葉と一緒に求める快楽を訴えかけようとして、でもその気恥ずかしさに気がついて顔を背けようとしたその顎を引っつかんで逃げられないように続きを促すと、怖ず怖ずと口を開く俺だけの存在。
「くだ・・さ、い・・・。」
あぁ、いくらでもくれてやるよ・・・。
俺の視界の中でしか許されないそんな姿、淫らで綺麗な踊り子のお前のたっての頼みなら。
長い間俺を突き動かしていた憎しみと言う名の情欲は、歪な愛情へと摩り替わり、気高く輝く光をこの手の中に引き摺り下ろした。
「うぁ・・ぁああっあ、んぁっ」
しなやかに反り返る艶やかな線の描く腰を思い切り掴んで、お互いに待ち焦がれた動きを与えていく。
俺の雄はお前の中にズッポリと埋もれていって抜き差しを繰り返しながらお前の内部を満たしていく。
「やぁっ・・っああぁーっ!」
縮小しながらそれでも奥へ奥へと誘い込まれるその中にもっともっと深く繋がるため、弟の胸に手を回して一気に起こし上げると、更に俺を深く銜え込むことになった彼は大きく頭を振って咽び泣いた。
その衝撃で達しそうになる弟の自身の根元をきつくその指で戒めると、その表情はもっと悩ましく彩られて行く。
「やぁ・・も、・・・もぅ、だめぇっ・・!」
達かせて欲しいと頭を振り乱す弟の顎をもう一度捕らえて呼吸を塞ぐように口付ける。
もっと満たさなければ達かせてやらない。
お前のその表情も、虜になる肢体も、汗ばむ白い肌も、その髪も、悲鳴の様に喘ぐその声も、欲情も愛情も何もかも俺の歪んだ視界の中に全て収めるまで。
「んむっ・・ふ・・ぅああっ!」
ギシッギシと二人分の体重を支えて軋む音、三度解放された嬌声に混じって響く湿った淫音、そしてそれに混じり穿つ度に肉打つ音はまるで罪人を罰するために鞭打つ音に良く似ていた。
果たして鞭打たれているのは俺か、彼か?それとも快楽に溺れ果てて近すぎる者同士を欲した二人に平等に与えられる最も重い咎なのか。
「俺から・・逃げるな・・・。」
その重すぎる咎を、一人で受け止めて生きていく事などもう出来ない。
根元を戒めていた手を外し、無意識のうちに伸ばした爪が、もう殆ど意識が霞んでいるシドの首元に回して行く。
「二度と先逝く事は・・・・。」
その白い首筋に五つの朱い小さな球が浮き上がったのと同時、片手で腰を押さえつけて最奥を抉った衝撃にシドは大きく瞳を見開いた。
「っ!っぁあっ、あああぁーっ・・!!」
ビクンビクンと白い身体を痙攣させて、待ちわびた解放の悦びに飲まれていくシドの締め付けていく衝撃に、所有の白濁を吐き出しながら唇だけで耳元で唱える。
「許さないからな・・・。」



すっかり気をやってしまい、失神したように眠り込むシドを更に続きを促すようにかき抱きながら、白い身体全てに自らの者である朱の所印を散らしていく。
影だけの頃に決して見えなかった光であるこの存在をようやく手に入れることの出来た悦びの代償は、決して消える事の無い別離の恐怖。
手に入れた瞬間にすり抜けていってしまう恐怖は、多分ずっとこの瞳の中に影として焼きついてしまっている。
だから・・・。
「俺を二度と離すな・・・。」
お前の抜け殻だけなど、もういらない。
例え迫害されようとも地獄に堕ちようとも、俺はこの記憶を背負う限りお前を欲して已まないだろう。
例えどんなに常軌を逸する道であろうとも、大切な弟をこれ以上汚して傷付ける事になろうとも。
「お前は俺の物だ。」


閉じた瞳の中でさえも、お前に映るのは俺だけで十分だという、願いにも似た想いを抱いてその横にその身を横たえた。






Beauty・・・S















BGM:COCCO『ザンサイアン』より“Beauty C”






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