おまけ
※どまさんがれんごくさんに対して不安を抱くようになった理由的な話。
「煉獄…杏寿郎……」
ハラハラと舞い散る落ち葉を見ながらそうつぶやいた声を童磨は聞き逃さなかった。その名前は十分に聞き覚えがある。〝昔〟、かつて上弦の参であった彼が無限列車にて交戦した炎柱の名前だ。
彼が執拗に鬼になれ鬼になれと繰り返し勧誘していたのは情報共有で知ってはいた。誘いをかけては断られ、それでも懲りずに鬼に誘う彼に対して何と無駄なことをしているのだろうとかつての自分は思っていたのだが、それ以上に思うことなどなかったし、これから先もないはずだった。
なのに、隣を歩く猗窩座が舞い散る銀杏や欅の葉を見て、彼がことさら執着していたように見える炎柱の名前を呼んだ、それだけで胸がチクリと痛むのが分かる。
なんでこんなに胸が痛むんだろう?
猗窩座殿が誰と友人付き合いをしようとそんなのは勝手なのに────…。
自分だってかつて鬼の頃に拾った養い子達と交流はある。その度に猗窩座殿は苦虫を嚙み潰したような顔をしてもなんだかんだ言って自分を送り出してくれるのに。自分は彼がかつての強敵の名前を呼んだだけでこんなにも心を勝手にざわつかせるなんてと思うと、自分がとてもちっぽけな存在に感じた。
「………会いたいの?」
「あ?」
気が付いた時、自分とは思えないほど低い声で童磨は猗窩座に尋ねていた。その声にじっとこちらを見上げる真っすぐな向日葵色の視線と向き合いたくなくて、そのまま前を見据えたまま童磨はもう一度繰り返す。
「………会いたいのかなって…」
「? 誰にだ?」
キョトンとした声音で訊ねられ、童磨にしては珍しくぎっと睨ねつけるように猗窩座の顔を見やる。だがそこにいたのは何を聞かれているのか分からないという表情を隠さないままの恋人の姿があった。
「誰に俺が会いたいと?」
「え、いや…、その」
何だろう、さっきの炎柱の名前を呼んだのは俺の聞き間違えか? そう錯覚してしまうほど猗窩座は平然とした態度だった。
「なあ童磨…」
「っ…、ごめんよ猗窩座殿、なんでも…」
「なんでもない? 本当にか?」
「っ…」
気のせいだということで折角やり過ごそうとしても、童磨の一挙一動に対して常に心を砕いている猗窩座からすると逆効果だ。す、と離れていこうとする彼の腰を両手でぐっと抱き寄せて、真っすぐに彼の顔を見つめる。
「そんな顔をさせるほど、俺はお前を不安にさせたか…?」
「…そう、じゃないけど……」
不安、になったのだろうか? ただ、彼がかつての炎柱の名前を呼んだだけで落ち着かない気持ちになったのは確かだが、これが不安なのだろうか?
何に対して?
誰に対して??
「童磨…」
お願いだから話してほしいと訴えかける猗窩座に童磨は上手く話せないかもしれないけど聞いてくれたら嬉しいと前置いた上で訥々と話し始めた。
猗窩座がたった今、煉獄杏寿郎の名前を呼んでいたこと。
それに対して、猗窩座が何か心がざわついてしまったこと。
あなたの交友関係が広がるのは良いことだけれど、そう思うと心がざわざわしてしまったこと。
人前で説法をする仕事に付いていた〝昔〟の杵柄ではないが、割と聞き上手で話し上手な彼にしてみればこんな要領を得ない話し方は初めてだとどこか冷静な自分が分析する。そして猗窩座はそんな童磨の言葉を遮ることなく真剣に向き合いながら聞いていた。
「そうか……、すまない。不安にさせたな…」
話し終えた後、猗窩座はふわりと童磨を抱きしめる。
「…俺はただ、この落ち葉を見ていたらあいつの髪を思い出しただけであって、何の他意もなかったんだがな…」
「うん…、それはあなたの態度で今ようやく納得できた…」
とくとくと伝わってくるお互いの温もりと鼓動が心地よい。
「…不謹慎だが…正直俺は嬉しい」
「え?」
ぐり、と猗窩座の柔らかな筏葛の髪が童磨の胸のあたりに押し付けられる。
「お前、俺が煉獄杏寿郎と会うんじゃないかって、妬いてくれたんだろう?」
「妬いて…」
そう、なのだろうかと童磨は逡巡する。もしも猗窩座が煉獄と会うとなったらと考えてみるが、それだけで胸がざらついて仕方がなかった。きっとそれが行き過ぎたのが浮気性の父をめった刺しにして服毒自殺を図った〝昔〟の母の姿なのだろう。決して綺麗なだけではない感情。なのに猗窩座はそれを嬉しいという。
「そうなのかな…?」
「そうだな。お前の反応を見る限り俺はそう判断した」
「だったら…」
なおのことこんな面倒な感情を抱くなんてと童磨は口にしようとするが、猗窩座が少し背伸びをして口づけでやんわりとその言葉を飲み込んんだ。
「はっ…」
ひんやりと冷たい外気の中、猗窩座に触れられた唇がやけに熱く感じる。
「お前が俺を好いていてくれるから、ヤツに会ってほしくないと思ったのだろう?」
「それは……、うん、そう、なのかも…」
猗窩座のように断定的に言い切れないのは、生まれて初めて湧いて出て来た感情に戸惑っているからだ。そしてそれは猗窩座も十分わかっているからその答えに激高することはなく。
「それが俺には嬉しいのだ…。この際だから話すが…、俺ばかりがお前を追い求めているとばかり思っていたから」
「え…?」
狭量であることは重々承知していると前置いた上で猗窩座も密かに童磨が元上陸兄妹と会うことに対して少し面白くない感情を抱いているということを白状する。
「そう、だったんだ…。だけど」
「分かっている。お前と彼奴らには切っても切れない縁がある。それを分かっていても尚、嫉妬はしてしまうのだ」
「…猗窩座殿…」
「本気で会うなと言っているわけではない。だが、好いた相手に対しては往々にしてそうなってしまうものなのだということは心の片隅に置いておいて欲しい」
そう言って照れ隠しのようにポスリと抱きついてくる猗窩座に抱くのは、呆れとかそんな感情などではなく。
(え、なにこれ…)
まぎれもなくドキドキとした新たなときめきと喜びだった。
「おい、どうした? ど…!」
いきなり心臓の音がとくとくと激しく脈打つ恋人を不審に思い顔を挙げた猗窩座の目に飛び込んできたのは。
顔を真っ赤にさせながら嬉しいのかそれとも照れているのかぱっと見では判断できない表情をして口元を抑えている童磨の顔で。
それがあまりにも可愛らしくてたまらなくなった猗窩座が、ハラハラと舞い散る銀杏大木に彼の身体を押し付けて熱烈なキスをするまでそんなに時間はかからなかった。
というわけで猗窩童の日おめでとう!!
その割には書いたのは去年の九月の代物という空気の読まない作品になりました\(^0^)/
というか、前々から思っていたんだけど、私のところの猗窩座のどまに対する態度って対煉獄さんっぽくないかというもう一人の私がギャーギャー喚くものだからそれに対してのアンサーのつもりで書きました。
だいぶ前から言っていますが、座が煉獄さんを始めとする柱を鬼に勧誘したのはどうしたってどまさんを手にれることができないための代用品が欲しかっただけじゃないかというのが私の意見です。この辺りの設定はこれを読んでください
例をあげると、本当に欲しいものがあるのに値段が高くて買えないから安価な物を買っても大切に扱わないってパターンと同じ。
なので拙宅では煉獄さんと座殿が現代で邂逅したとしても、和解はできても知り合い以上にはなりますが友人にはなりません。煉獄さんと座殿のやり取りに関してどまさんが焼きもちを焼くから。かつて起こったことに対しての焼きもちは美味しいと座殿は思いますが、それを何度も味わいたいがために別に仲良くもしたくない人間と付き合って恋人をやきもきさせる趣味は拙宅の彼は持っていません。
つうかたまに暇つぶしであかれん+どまな話とか見るけど、まー、この人たちの書くどまってホント非道い認識だよね。
普通に悪口じゃんってこと平気でバンバン書いている。胡散臭い詐欺師のクソ野郎とかもはやヘイト表現じゃん。
あとどあかとれんあか併用している人間も、とにかくれんごくさん持ち上げてどまを座に下げさせるのが大好きだよね~?
どあかでもそんなにれんごくさん持ち上げるんなら、どまをさっさと開放してやれば?って思うんだけど、頑なにそうしないあたり、ハイスペック棒のどまを手放したくない浅ましさがホント臭ってきてホントクソ。
コメントを残す