パターン②
「…かせ」
「え?」
先ほどと同じ韻を踏むやり取り。あ、またあの戯れをするのかなと少し身構えた童磨の耳に飛び込んできたのは予想外の言葉と行動だった。
「胸を貸せ」
ドサッという音と共に飛び込んでくる重みと感触は胸から伝わってくるもので。
「ちょ、え、何??」
紫色のふかふか洋風座布団にめり込むほどの勢いで持って童磨は猗窩座によって胸の中に飛び込まれていた。
「あか…じゃない、座・閼伽ど…」
「座・閼伽じゃない猗窩座だ」
その名で呼べと言ったのはそちらなのに本名で呼べという彼に童磨は内心少しだけ戸惑ったが、親友がそう呼べと言うならとわかったよと納得した。
「で、これは一体なんのマネなのかな?」
「っ、それはこちらの台詞だ馬鹿童磨!!」
キーンとするほどの声量で喚かれて、あ、これ鼓膜破れたかもと呑気に童磨は自覚する。
「お前こそアレは一体なんのつもりだ!?」
「主語が無いよ猗窩座殿」
「っ〜〜〜!! 玉壺に対して行ったアレだアレ!!」
「アレ…?」
思い返す童磨。そう、自分は玉壺に情報は何のことだと訪ね彼の首を持ち上げた。ただそれだけのはずなのだがその答えだと十中八九この怒れる親友は納得しないであろう。
「ごめんよ、よく分からないや」
わからないものはいくら考えてもわからない。押して駄目なら引いてみろではないが、ここは素直に童磨は猗窩座に尋ねることにする。
だがそうしたところで怒りの度合いの大差はない猗窩座は、童磨の胸……胸ぐらではなくダイレクトに柔らかな両胸を掴み、思いっきり揉みしだきながら唾を飛ばす勢いで叫んだ。
「お前あの男の頭をこの胸の中に埋めようといていただろう!?!彼奴の頭を、こう! こうして!!」
「ひゃぁんっ!?」
思わず色気もへったくれもない素っ頓狂な声が口からついて出てしまう。それもそのはず、何と猗窩座は揉みしだいていた胸の中に自分の頭を突っ込んでいたのだ。
「や、ちょ、そんなことしな」
「嘘つけ! 俺があそこで止めなかったらこんなことされてたくせに!!」
「あっ、やめ、ちょ、頭ぐりぐりやらぁ…っ!」
ぐりぐりと高速で頭を動かしながら、他の男に押し付けて誑かそうとしたけしからん鬼教祖へのお仕置きも兼ね豊満で柔らかな胸を堪能しつつ自分のものだとマーキングしていく猗窩座。その度に未だ柔らかな胸の果実が変に刺激されてしまいだんだんと声が上ずって行ってしまうのを止められない。
「おねが…っ、それ以上はやめてくれ…!」
「はは、お前、そんなしおらしい顔できたんだなぁ」
分かった、止めてやる俺は優しいからなと、いつも自分が言っている台詞を模されながら胸への刺激を止めてもらえたことにとりあえずホッとする童磨だが、次の瞬間一気に胸部の布地が弾けとんだ。
「へ?」
あれ、なんでいきなり服がはじけ飛んでるんだ? 俺、そんなに力込めてないから鬼気ではじけ飛んだのかな?? あ、違うなコレ。猗窩座殿の手が思いっきり胸にかかってそれで…って。
「ねえ! 何なんだよ一体!!」
信者から親友に立ち戻った上弦の参のあまりにもあまりな振る舞いに、流石にこれは度が過ぎていると感じた童磨は洋風座布団に深々と埋められた身体をどうにか起こしながら無体を働く猗窩座にらしくもなく強い口調で訴える。
「おっとおっと、これ以上は騒ぐなよ? 血で汚したくないだろう?」
「っ」
先程の無限城での意趣返しのつもりなのだろうか。それにしたってこんなの、いくらなんだってあんまりじゃなかろうか。だが猗窩座の言うようにここで血鬼術を出せばこの部屋は使い物にならなくなり、他の信者たちの話を聞いてあげられなくなる。それだけは面倒だし避けたいと思った童磨はだらりと力を抜いて腹を括った。
「はぁ…」
これはもうこの親友の好きにさせた方が手っ取り早い。ちょっとどころかかなり混乱しているけども、これもまた親友として親睦を深めるための手段なのだろう。
「…分かったよ、好きにして、いいよ……」
「っ、お前は全くそう言うことをだな……!」
小さくため息を吐き、早く終わらせておくれよと呟いてすっかり大人しくなってしまった童磨の言葉に一言文句を付けはしたが満更でもない猗窩座は待望のその胸に無言のまま吸い付こうとしたその時。
「き、教祖様ああああああ!!」
「「!?!?!?」」
先程のやり取りを聞きこれは一大事だと外で控えていた側近が緊急事態と判断して部屋に突入してくる。
「き、貴様あああああああああ!!!」
どう見てもこれから事に及ばれようとしている麗しい敬愛する教祖の貞操の危機だと判断した側近の男の剃髪された頭が金色の逆立つオーラに包まれると同時、丁度いい位置にあった玉壺作の壺が不埒者と判断された猗窩座の後頭部に振り降ろされ、文字通り火事場の馬鹿力で彼の脳天がかち割られたのは刹那にも満たない瞬間だった。
当然のことながら漸・閼伽は側近たちにより出禁になり(本当は側近を始めとした親衛隊一派が山に埋めようかと画策したがそれは無駄なので童磨が真剣に止めた)、小細工せずに親友として訪れれば文句はないのだなと開き直った猗窩座が琵琶の君を利用し、堂々と童磨の元を訪ねるようになるのはそれから三日後、更に言えば訪れるたび、猗窩座によって揉まれまくった童磨の胸は信者たちから見てごまかしようがないほど淫靡さと柔らかさと色っぽさに溢れ、その結果、口コミで信者が稀に見る勢いで爆増。250名を優に超える320名になったところで始祖に全部バレ、猗窩座は勿論童磨も理不尽な責任を追及され仲良く揃って折檻を喰らうのは更に一か月後のことである。
「というわけで側近の子が猗窩座殿の脳天を叩き割るのに使っちゃったから、新しいのがあったら貰えるかな?」
「…あれは、鬼の脳天を叩き割るためにあるものではない。だがそれもまた良し」
対ぎょこさんのコミュニケーションに嫉妬しちゃった系+俺にも揉ませろというタイプの座殿です\(^0^)/ 流石に親友としてのコミュニケーションが超えているのでどまさん内心少しだけ混乱してますw
ぎょこさんへの対応に焼きもち焼いたら、他でもないぎょこさんの贈り物の壺で成敗された座殿。因果応報とはまさにこのことですな(違)
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