フォーチュンワードハプニング - 1/2

「あれ?」
霜月もそろそろ中頃に差し掛かる休日のおやつ時。
そろそろ小腹が空いたので何かないかなと、がさごそと戸棚を漁っていたはずの童磨がすっとんきょうな声をあげた。
「どうした?」
共にリビングのソファに座り、本を読んでいた童磨の肩を枕代わりにしてスマホを弄っていた猗窩座がその声に顔を上げ、立ち上がり戸棚へと向かう。
「あ、猗窩座殿。あのね、これ…」
戸棚の前の童磨は、北の産地の高級メロンの果汁が使われたポッキーの、皮と果肉のコントラストが目立つ写真が印刷してある大きめな箱を持って戸惑っている様子だった。
「ん? これ…ポッキー?」
「そうなんだけど…、確かに北の大地に行ったとき買ったんだよね…?」
この高級メロン味が売りのポッキーはこちらでは売られていない、北の大地の期間限定のものである。
「いつの頃だった…?」
「覚えてない、けど…ここ…」
結構な頻度で北の大地へと出かけている二人だが、そのたびに童磨が山のように戦利品を買い込むためいつ買ったのかの記憶は曖昧だ。だが、パッケージを裏返して賞味期限の印字を指さすと、そこにはさほど遠くない日付が記されている。
賞味期限が過ぎたからといってすぐにダメになるわけではない。だが、猗窩座も童磨も今の今まで買ったことを忘れていたのだ。また後日食べようとしまい直しても、今度は大掃除の時に出てきて二人でアワアワするのが関の山である。
「んー…、二人で消費するには量がなぁ。賞味期限が近いから狛治殿たちに差し入れるわけにはいかないし…」
むぅ、と唇を尖らせて考える童磨の手の中にある箱を何となしに見つめていた猗窩座は、ふと思い付く。
冒頭でも述べたが、今は霜月も半ばに差し掛かる頃。この時期に打ってつけなイベントが確か最近あったはずだ。
「なぁ」
「ん? どうした? 猗窩座殿」
「やらないか?」
「は?!」
いきなりダイレクトなお誘いをかけられて、思わず童磨は持っていた箱を取り落としそうになる。
「え、えぇ…、いいけど…はっ!? まさか猗窩座殿…、これをいやらしく俺に使うんじゃ…」
「は?…っっておい! ち、 違うからな馬鹿!!  俺が提案したのは、ポッキーゲームだ!!!」
言葉少なだったため童磨がそう誤解したのは百歩譲っておかしくはないとしても、いきなりそんな斜め上の変態的な解釈をされるとは思わなかった猗窩座は顔を真っ赤にして怒鳴るように否定する。
「ポッキーゲーム?」
一応名前は知ってはいたが具体的に何をするのかピンと来ていない童磨に、猗窩座はスマホを操作して、ポッキーゲームの概要ページを見せた。
曰く端と端を咥えてポリポリ食べていって、より多く食べた方の勝ち。途中で折ったら負けというシンプルなルールだ。
「それだけだとつまらんから…そうだな、二本いっぺんに咥えてやるというのはどうだ?」
「いいねそれ!流石猗窩座殿だなぁ♪俺には思い付かない面白いことをいつも提案してくれる!」
ニカーッと嬉しそうな童磨の笑顔・プライスレスと頭の片隅で呟いた猗窩座は、照れ隠しにン゛ンっと咳払いをする。

そうと決まれば二人はリビングのソファに座りながら、早速箱を空けて中身の確認作業に入る。
「あ、これ、一本一本包装されてるんだね」
「だな。まぁ、この箱のデカさと値段をか考えたら当然と言えばそうだが」
内容量は全部で十五本。長さは思いの外あって、食べ応えは十分ありそうだ。
裏のパッケージのデザインも相まってとても美味しそうに見えてしまう。
「なんだか食べるのが勿体無いかも…」
「ああ、もしかしてそれで今の今まで忘れてたのかもな」
「ははっ! そうかもね~」
そんなことを言いながら、二人はそれぞれ一つずつメロンポッキーの包装を開けて中身を取り出す。袋を開ければたちまち漂ってくる芳醇な香りは、まさにメロンそのものだ。
「猗窩座殿、どっちを咥える?」
「二本同時なのだから互い違いにすればいいんじゃないか?」
「あ、そうだね」
持ち手と赤肉メロンを思わせるチョコでコーティングされた部分をお互い咥えられるようにして、先に童磨がポッキーを咥える。

「ん…、これ、意外に太くて硬い…っ、二本はさすがに、苦しい、かも…っ」

こんなのでゲームが出来るのかな?と童磨が思ったのとほぼ同時、ガゴン!!と凄まじい音が目の前で聞こえてきた。
「えっ?! 猗窩座殿どうしたの!?」
音源の正体は、隣に座って向かい合っていたはずの猗窩座が、ガラステーブルに勢い良く額を打ち付けた音だった。よくよく見ると細かいヒビと共にドクドクと赤い液体が流れている。
「ちょっ! ポッキーゲームやってる場合じゃないぜ猗窩座殿!」
何で急にこんなことにと、童磨はあわあわしながら目の前の猗窩座を起こし上げようとするも、大丈夫だ…と、赤くなった額を隠さずに恋人は復活した。
「えぇ~…? ホントに大丈夫かい?」
「心配するな、どこも何ともないだろう?」
「んん~? あれ、赤くはなってるけど血は出てない…?」
見間違いかなと首をかしげてガラステーブルを見るも、赤い液体はおろかヒビ一つ表面には入っていない。
「おかしいなぁ…、確かにさっきは…」
「気にするな、それよりも始めるぞ」
お約束展開という奴だというメタ発言は、咥え込んだポッキーと一緒に飲み込んで。
スマホのアラーム機能を使い、ゲームの開始を告げる鬨の声が鳴り響いたおおよそ二秒後、童磨の目の前には猗窩座の顔が飛び込んで来た。
「んぇっ…!? ん、んん~…っ!」
え?! 何これどういうこと? まさか時が加速したとか吹っ飛ばされたとかそんなんじゃないよね??
何が起きたのか処理しきれていない童磨の戸惑いの声は、二本のポッキーに阻まれていたはずの猗窩座のキスにより封じられる。
「ん、ぁ…っ、は…」
「お前、甘いな…」
「だっ、て…ポッキー咥えてたんだもん」
啄むようなキスをされて言われた感想に、そんなの当たり前だよとソファの上に押し倒されて目元を薄紅に染めた童磨が上がった息で訴える。
「ほら」
「へ?」
「次やるぞ、二本咥えのポッキーゲーム」
すでに猗窩座の唇には甘いメロンの香りと味がする二つのポッキーが咥えられていて。
「ま、ってあかざどの、この体勢、俺には不利じゃ…んむ…」
押し倒されたままでポッキーを強引に咥えさせられた童磨が意義を申し立てるが、当の本人の先の発言によって、諸々のアレやらソレやらが至高の領域に達した猗窩座の耳には入ってこない。
「んぐっ、ぅ…~~~っ♡」
やはり秒速を越えた高速でポッキーを食らい尽くした猗窩座が、今度は白橡の髪を掴んで頭を押さえつけた童磨の唇を再び奪う。
「っ…♡ ふっ…♡」
とっくにポッキーは口腔内には無いはずなのに。猗窩座から深く口付けられる度に、濃厚な甘さは増すばかりで。
そしてそれは故意に押し付けられている股座からも伝わってきて。
「ふぁ…♡ぁっ…♡」
二回目のポッキーゲームですでにトロトロになってしまった童磨の虹色の瞳を満足げに見た猗窩座は、三回目のゲームを開催すべく改めてがしりと恋人の身体にのし掛かり、喉の奥まで味わうかの如くの口付けを交わしていったのだった。

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