番外編3:モブ先輩と猗窩座と勘違い女たちの末路
童磨出番なし
※※注意※※
・同性愛に対する差別的発言あり
・童磨と猗窩座に対してモブ女が自重しない悪口を垂れ流してます
・オチがお粗末
↑を踏まえて何でも許せる方のみどうぞ
「うちの会社にゲイがいるとか耐えられないんだけど」
ある勘違い女Aの一言からそれは始まった。
場所は給湯室での無駄話。
仕事もできないくせに陰口だけは一丁前というフル役満のような女たちなのは、出張組の俺でもわかる。
そんな勘違い女Aとつるんでいる、B・Cも尻馬に乗る。
「分かる~! 最近は同性愛をテーマにしたドラマとかはやってるけど現実で見るとうげーってなるよね!」
「そうそう、しかも頼田の相手っていかにも女たらし込んでそうって顔してるよね」
「あー!めっちゃ分かる~」
きゃははははと品のない笑い声が癇に障る。
俺は単にマグを洗いに来ただけなのに何でこんな場面に遭遇するんだ。しかも最近何かと話題の頼田の相手の童磨さんの話だ。
「ていうかさ、頼田って結構カワイイタイプじゃん♪ きっとあの相手に丸め込まれて調教されたっぽくない?」
「あー! ぽいぽいw あいつコミュ障だけど黙ってればそれ系の相手に好かれやすそうww きっと散々あの男にたらしこまれてたっぷり教え込まれたんだよーwww」
「っつかあいつの彼氏って、いかにもサイコっぽいし変な趣味持ってそうだよねぇー」
思わずマグを持つ手に力が籠められる。
一体お前らに何が分かる。いや俺だってそんなに込み入ったことは聞いていないけど。だからと言って先入観で決めつけるのは愚者のすることだ。
こいつらがいつどこで二人を見たのかは知らない。だがあれだけ童磨さんのことを全身全霊で愛していることを隠そうともせず堂々としている頼田と、そんな頼田を心から愛しているし信頼している童磨さんを見たことがある俺としては、こいつらがどれだけ無神経で下衆なことを言っているのかが嫌でも理解してしまう。
「頼田だけじゃなくてその辺の男も女も喰い放題って感じじゃーんwww 頼田、遊ばれてるだけじゃないの~?」
「エェ~? 頼田マジで可哀想~www」
「それでも離れられないのってやっぱり身体の相性がいいからじゃないのー?w どんだけウマいのあの彼氏wwwww」
更に続けられる耳が腐りそうな話に心底反吐が出そうになった。
一体何の権限があってそこまで頼田と童磨さんを貶めることができるんだ。
もう我慢ならねぇと俺は一歩踏み出そうとしたその時。
「ずいぶんな言い草だな」
「!?」
俺がいる箇所から丁度反対側の角から、ずい、といきなり気配を消した頼田が現場である給湯室に足を踏み入れた。え、気配とか全然しなかったんだけど。
「あ、え…?」
「え、えぇ?」
「ちょ、なんで…」
勘違い女三名は当人の登場で先ほどまでの饒舌はどこへやら。真っ青を通り越して真っ白になった顔で、近づいてくる頼田をおろおろと見つめていた。
「俺があんたの告白を袖にしたことがそんなに悔しかったのか」
そうかそうかと頷きながら勘違い女Aに視線を向ける頼田は声音は静かだが確かな怒りを感じていた。
「んなっ…!」
「え!? そうだったの!?」
「うわー…」
一緒になって頼田の陰口をたたいていBやCのあまりの見事な掌の返しっぷりに俺は思わず声を立てずに吹き出した。
「まあ、俺のことなら好きに言えばいいし、そう言われる覚悟はとっくに持ってはいるがな」
ぞわり、となぜか寒気にも似た怖気が走る。そして以前居酒屋で見たように頼田の足元にはうっすらと氷の結晶の陣が浮かび上がったかのように見えた。
「だが俺の伴侶をよく知りもしないで悪し様に罵るのは、例え女であろうとも容赦はしない」
そう言いながら頼田はポケットからスマホを取り出し、再生ボタンを押す。するとそこにはえげつない会話が最初から最後まで録音されていることがバッチリ分かった。
「ちょ、それ、盗聴」
「何がだ? 俺だけじゃなく俺の大切な伴侶をありもしない誹謗中傷で侮辱するのは立派な人権侵害ではないのか?」
口調は穏やかな頼田だが、これ以上いない怒りがはっきりと伝わってくる。きっと幻聴だろうか、世間一般でいう処刑用BGMというBGMが次から次に奏でられているのが分かる。
「あんたらの部署の上司には報告させてもらうからな」
そう言いながら立ち去ろうとする頼田に女Aは金切り声を上げて制服のボタンをむしり取りながら誰か助けて―と叫ぶ。
そんなAの態度にBもCも頼田も、ついでに俺もポカンとしてしまった。
「…え、A? 何してんの??」
BかCのどちらかがドン引いたように訊ねているが、Aはぺたりと腰を降ろしながら助けて―襲われる―だのなんだのと騒いでいる。
浅はかな浅知恵だ。大方頼田に襲われただのなんだのと理由を付けて貶めようとするやり方だろう。馬鹿すぎて乾いた笑いが出てくる。
「あー、その…」
一応申し訳なさそうな顔を繕い、俺も給湯室へと顔を出す。
は、あんた何よ?!関係ないでしょすっこんでなさいよ!!と顔を真っ赤にしながら喚き散らすAに、俺も躊躇いなく引導を渡してやることにした。
「実は俺も最初っから今の今までずっと見ていたよ」
と。
その後のことは言うまでもないだろう。
駆けつけてきた人たちに事の経緯を俺が聞かせ、半信半疑の人間には頼田が録音を聞かせ、勘違い女たちは元々の部署でも鼻つまみ者だったせいか、噂があっという間に広がり、数日持たずに自主退社したという。
そして頼田はと言うとこの一件で新たな伝説を生み出し童磨さんとの仲が社内で公然となり、一部の特殊な人間たちによる発酵したコミュニティが発足されることとなるが、本人はどこ吹く風で今日も童磨さんとラブラブなのであった。
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王道と言えば王道なネタをやってみたかった。
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